表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
20/26

家宅捜査

 調査部が探し当てた水使い、皆盛玲人の家はごみごみとした、計画されて整備されたのではなく自然と出来上がった雑多な町の中にあった。


 皆盛の家は築50年以上たっていそうな2階建てのアパートで、2階に続く階段は錆びに覆われているうえに手すりの根元が幾つか腐食して無くなっている、という具合にかなり痛みが激しい物件だった。


 全く目が届かない所に待機するのも危険という事で、悠馬はかろうじてアパートが見える所に駐車した車内から神島達の様子を窺っている。

 皆盛の家は2階にあるらしく、神島と浮島が慎重に階段を上って行く。

 ジョシュアは建物の裏に回りこんで両側から挟み撃ちにする作戦だ。


 2階に到着した二人は姿勢を低くして移動し奥から二番目のドアの前で止まる。

 浮島がギフトを使って感覚を強化し、中の様子を窺い始める。

 傍から見れば通報されかねないぐらい怪しい行動だったが、元々あまり住んでいる人がいないのか、昼過ぎという時間のせいなのかどちらにせよ幸いな事に、神島達の行動が人目に触れる事はなかった。


 しばらくして神島が浮島と位置を入れ替わり、神島がドアノブの辺りに手をかざすと一瞬、手元が光ったように見えた。

 その後、浮島が慎重にドアを開け、2人の姿は建物の中に吸い込まれるかの様に見えなくなった。


 2人が突入してもう10分くらい経った気がして時計を見るが、まだ2分しか経っていない。

 ただ待つという事がこれほどまでの苦痛を伴うという事を悠馬は生まれて初めて思い知った。


 そしてやはり思ってしまう。

 自分に力が発現してさえいれば、と。


 力を持つことが時に不幸につながる事は理解できている。

 だが、力が無いために大切に思う人の助けになれない事もまた不幸ではないのか?

 どちらが正しいのか、そもそも正しい答えなどあるのか、たかだか16年しか生きていない悠馬には解らない。

 はっきり分かっている事は、ただ待つことしか出来ない自分が歯痒く、そして情けないという事だけだった。

 そんな出口のない葛藤を繰り返す悠馬の意識を、突然鳴り響いた携帯電話の着信音が引き戻す。


 慌ててズボンのポケットから取り出して、画面を確認する。

 液晶画面は発信者が神島彩音であることを告げていた。

 すこし緊張しながら悠馬は通話ボタンを押した。


「どうしたんだ?」

『どうやら皆盛はもう此処にはいないみたいなの。ちょっとこれから詳しく調べるから、片瀬君もこっちに来てくれる?』


「解った」


 何事も無かった事にほっとしつつ、電話を切ると直ぐに車から降りてアパートへ向かい階段を駆け上り、ドアの前に到着する。

 ドアの新聞受けは大量の新聞や郵便物で溢れかえっていて、鍵の部分を見ると溶けていた。

 どうやら先ほどの光は神島がギフトを使って鍵を壊すときに出ていたものの様だ。


 中に入ると直ぐ横手がキッチンになった6畳部屋だった。

 ダンボールや新聞紙が壁際に詰まれていたり、天井付近に這わした棒に沢山の服がつるして合ったりとあまり整理のされていない、有体に言うと汚い部屋だった。


 奥に襖で仕切られた部屋がある様で、神島たちはそこにいた。

 奥の部屋は4畳半で先ほどの部屋とは違い、綺麗に整理整頓されている。


「出かけてるのかな?」


 勝手に人の家に上がりこんでいる後ろめたさと、こうしている間に皆盛が帰ってくるかもという不安でちょっとびくびくしている悠馬。


「いや、どーやらしばらく此処には帰ってきてへんみたいやな」


 そう言ったとたん、浮島の携帯が鳴り出した。


「お、調査部からやな。ちょい電話してくるわー」


 そう言い残して部屋から出て行った。


「手がかりを残しているとは思えないけど、もうちょっと調べてみましょ。ジョシュはあっちの部屋をお願い」

「解った」


 奥のベランダから侵入してきたジョシュアが6畳間へと入って行った。

 するとすぐに何かが壁にぶつかる音がしたのでそちらに目をやると、ジョシュアが壁にもたれかかってなにやら苦しそうにしている。


「どうしたんだ!? 攻撃をうけたのか?」


 ジョシュアが弱弱しく振り返る。


「いや、俺は汚いものを見ると眩暈がして力が入らなくなるんだ」

「……そうか。まあ頑張れ」


 声にならない悲鳴を上げるジョシュアを見捨てて、とりあえず4畳半の壁一杯に設置された本棚を見てみた。

 仕事が水道関係ということもあってか、水に関する本が多い。

 資格に関する本や、流体力学とかいう難しそうな本が並んでいる。


 試しに一冊取り出して中を見てみたが、日本語で書かれているのに内容は外国語並みに理解できなかった。

 本を元の位置に戻し、他の本も一応何冊か手にとってペラペラと中身を確認しているとページとページの間に紙が挟まっている本が一冊あった。

 しおりかな? と思いながら引き出してみるとそれはしおりではなく、乱暴に引きちぎられたメモ用紙で英語のスペルが殴り書きされていた。

 ほとんど読めない単語だらけだったが、その文の頭は今世紀世界で最も有名になった4文字から始まっていた。


(http……これってインターネットのアドレスだよな)


 この事を報告しようとした瞬間に浮島が戻ってきて直ぐに報告を始めたので、タイミングを失った悠馬は思わずそのメモをポケットの中に仕舞いこんだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ