世界のあいだ - 10
王は、扉から弾き返された。
空間に叩きつけられ、数歩よろよろと歩くと、そのまま膝から崩れ落ちる。
玉座の間には、黒い裂け目がゆらゆらと揺れていた。
「……あ……」
喉から漏れたのは、王としての威厳を失った、かすれた声だった。
「そんな……はずは……」
床に手をつき、必死に立ち上がろうとする。
だが、力は戻らない。
扉も光も、もうない。
「私は……見た……勝利を……」
その言葉を、遮るように。
「終わりだ、陛下」
剣を構えたリオが、玉座の間へ踏み込んできた。
その背後には、アルベルト、ロイ。
「……カシウスは?」
王がかろうじて発した問いに、アルベルトが淡々と答えた。
「あなたの護衛隊も、もういない」
王は笑おうとして、失敗した。
「……そうか」
ロイが、王の前に立つ。
「あなたへの裁きは、国が下す」
王は、抵抗しなかった。
ただ、床を見つめたまま、呟く。
「……エリオネ……」
すると、突如、空間が揺らぎイリスとノクスの身体が、床に現れた。
それと同時に、黒い裂け目は泡のように消えた。
「イリス様!」
リオが、真っ先に駆け寄る。
2人は、眠っているだけだった。
呼吸も、確かにある。
「ロイ、手を貸してください」
「え?どこに連れていくんですか?」
リオは、眠っているイリスを抱きかかえると、玉座の間を出る。
「王妃様の部屋です」
ロイもノクスを抱えて、リオの後を追う。
3人は玉座の間を後にした。
「……まだだ……」
その後ろ姿を、レオナルトは睨みつけると、手を伸ばす。
まるで、双子をその手で掴むように。
その手からは、見えない結界が、2人を包んでいた。




