表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
75/80

世界のあいだ - 9

そこは、どこまでも続く花畑。

青空に星と月が輝く。

柔らかな風に淡い光。

以前イリスが訪れた、あの世界。


「……また、ここ」


そこには、3人がいた。

イリス、ノクス。

そして、レオナルト。


「異界……いや境界の内部か」


レオナルトは周囲を見渡し、なおも笑みを消さない。


「ここで私は……」


その言葉を遮るように、レオナルト背後から1つの影が、歩み出た。


「エリオネ……」


それは、確かにエリオネだった。

黒い影でも、歪んだ存在でもない。

国から逃げる前に近い、穏やかな姿になっていた。


「……お母様……!」


イリスが、声を上げる。


「エリオネ……」


レオナルトは震える声で、再び名を呼ぶ。


「私は……私は、お前を」


一歩、一歩と彼女へ近づく。

エリオネはその表情を変えることなく、レオナルトを見る。


「……今も、愛している」


流れる、沈黙。

すると、花が、風に揺れる。

エリオネは、ゆっくりと首を振ると、口を開いた。


「……いいえ」


その声は静かで、確かだった。


「あなたは、私を見ていなかった。“扉”しか、見ていなかった」


王の顔から、笑みが消える。


「違う……私は共に……」

「共に堕ちることを、愛とは呼びません」


エリオネは、双子へと視線を向ける。


「……よく、来たわね。2人とも」


イリスの瞳から涙が溢れ、手を伸ばす。


「お母様……一緒に……帰ろう……」


エリオネは、微笑んだ。


「帰れないわ。私はもう、境界そのものだから」

「そんな……母上はもう……」

「ノクス。これからも妹をよろしくね」


そして、レオナルトを見る。


「終わりにしましょう。この歪みを」


エリオネの身体が、光へとほどけていく。


「……ッ! 待て!!」


レオナルトが手を伸ばすが、届かない。


「イリス、ノクス」


エリオネは光のように消えると、2人背後へ移動して現れた。

母として、2人をぎゅっと抱きしめると口を開く。


「あなたたちの力と、私に残された最後の力で、扉を封じて」


鍵が強く輝くと、鍵が回った。

途端に、世界が震えだす。

花畑の空に、黒い裂け目が、浮かび上がった。


「やめろ……!」


レオナルトの叫びが掻き消える。

エリオネは、最後に王を見つめた。


「さようなら……愛していた“つもり”のあなた」


そして、光が閉じた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ