74/80
世界のあいだ - 8
レオナルトは、黒い裂け目の縁へと一歩踏み出した。
風も音もなく、ただ闇がそこに広がっていた。
レオナルトの瞳が見開き、声が震えた。
「……ああ。見える……無限だ……」
扉の向こうに広がっていたのは、ひとつの世界ではない。
幾重にも重なった未来……。
滅びなかった国。
衰えない力。
王が、王であり続けられる時間。
「勝てる……」
確信に満ちた笑みが、浮かぶ。
「私は正しかった。この選択こそが、救済だ」
振り返り、双子を見る。
「お前たちも見るがいい。恐れる必要はない」
その瞬間。
カチ、と微かな音が、響いた。
イリスの胸元で、エリオネの部屋で見つけた鍵が、淡く光を放つ。
「……っ」
イリスは、思わず鍵を握りしめた。
それに呼応するように、ノクスの魔力が、脈打つ。
二人の足元に、同じ紋様が重なるように浮かび上がった。
「……来たか」
ノクスが、低く呟く。
鍵が熱を持つと、2人の魔力が絡み合い、1つのなにかになろうとしていた。
「これは……双子の共鳴……」
王の表情が、初めて歪んだ。
鍵が黒い扉へと向けて光を放つと、空間が反転した。




