世界のあいだ - 7
レオナルトは、双子を見下ろす位置に立ったまま、まるで講義でも始めるかのように、静かに口を開いた。
「この国は、行き詰まっている」
その声には、確信があった。
「資源も人口も魔力も……どれも限界だ。いずれは、滅びへ向かう」
「……だから?」
イリスが抑えた声で問い返すと、レオナルトは頷いた。
「だから、“次”へ進む必要があった。この世界の外にある可能性へとな」
ノクスが一歩前に出る。
「異世界への侵入か」
「……随分と、身勝手な救済だな」
「侵入ではない」
レオナルトは首を振った。
「接続だ。世界と世界を繋ぎ、新たな循環を生む」
その視線が、双子を貫く。
「そのために必要だったのが、異界の力を内包した存在……エリオネだ」
イリスの胸が強く締めつけられた。
「お母様を最初から、利用するつもりだったの?」
一瞬だけ、レオナルトの視線が揺れたが、すぐに冷たく戻る。
「利用ではない。彼女自身も、この国を救いたいと願っていた」
「嘘だ」
ノクスの声が、低く響く。
「母上は、そんな方法を選ばない」
レオナルトは微かに目を細めた。
「そうだな。彼女のその意思が邪魔だった。だから、意思が強く残ったあの部屋を使う事にした」
その言葉にイリスの中で何かが切れた。
「セラを利用したのは?」
「あぁ、あのシスターか。あの治癒能力が必要だっただけだ。礼拝堂のシスター全員が付けている装飾。セラの物は特別仕様だ。彼女が祈れば祈るほど、治癒能力と溶け合い、部屋がより強化された。きっと間もなく、あの子の力は底を尽きるだろう」
「……」
「おかげで、エリオネがいない今、扉を開くことができる」
「ふざけるなっ!!!」
ノクスが、剣を抜く。
その剣には、攻撃力の高い魔力が込められていた。
剣から溢れる魔力が、床を震わせる。
ノクスが、一振りすると、風を切り、見えない攻撃が飛ばされた。
「……っ!?」
レオナルトは結界で守られノクスの攻撃は弾かれた。
「怒るな。今から、見せてやろう」
レオナルトはゆっくりと、玉座の背後にある壁へと手を伸ばした。




