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世界のあいだ - 5
玉座の間は、薄暗かった。
天井の高い空間。
左右に並ぶ柱。
そして奥に置かれた玉座に、王がいた。
「……来たか」
聞きなれた、低く、響く声。
「イリス。ノクス」
2人の名を、当然のように呼ぶ。
「ここまで辿り着いたのは、見事だ」
称賛の言葉に、温度はない。
イリスは、一歩前に出た。
「お母様はどこ?答えなさい」
王は、わずかに口角を上げた。
「安心しろ。まだ、生きている」
その言葉に、イリスの胸の奥がざわつく。
「扉の向こうを開く“鍵”としてな」
ノクスの気配が、一気に鋭くなる。
「……母上を、道具扱いするな」
「道具?」
王は、静かに首を振った。
「違う、希望だ。この国を、次の世界へ導くための」
王は、ゆっくりと立ち上がった。
「その為にも、お前たちの力が必要なのだ」
すると、玉座の間の空気が、ゆっくりと歪んでいった。




