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世界のあいだ - 4
長い回廊だった。
王宮の最奥へ続く道は、異様なほどに静まり返っている。
護衛の足音も声も、もう聞こえない。
背後では、どこかで剣がぶつかる音がした気がしたが、それもいつの間にか遠ざかっていた。
「……ここまで来たか」
隣を歩くノクスが、低く呟く。
その声は落ち着いているのに、どこか張り詰めたものを含んでいた。
「みんな……ちゃんと、離れてくれてる」
それは確認というより、自分自身に言い聞かせるような言葉だった。
「アルベルトたちは、カシウスを引き受けた。セラたちは、お母様たちの部屋を抑えてる」
ノクスは前を見据えたまま、淡々と告げる。
「ここから先は……俺たちだけだ」
重厚な扉が、目の前に現れた。
王宮の中心、玉座の間。
イリスが父の背中を、ただ見つめていた場所。
ノクスの拳が、わずかに強く握られる。
「……イリス。終わらせよう、ここで」
イリスが頷くと、2人は並んで扉に手をかける。
ひやりとした感触が掌に伝わった。
ぐっと、扉を押し、重い音を立てて開く。




