世界のあいだ - 2
石造りの回廊は、音を吸い込むように静かだった。
松明の火が揺れるたび、影が壁に歪む。
「……この先」
セラが、足を止めた。
視線の先にあるのは分かれ道。
右は、エリオネの部屋へと続く道。
左は、玉座の間へと続く道。
玉座の間へ続く道に、父の気配をイリスは感じていた。
フィオが、無意識に外套の端を握る。
全員の肌を撫でる“気配”そのものが変わっていた。
「嫌な感じがするわね」
エリシアは軽く肩をすくめながらも、表情は冗談めいていない。
イリスとノクスは、互いに視線を交わした。
「……分かれましょう」
そう言ったのは、セラだった。
「イリスさまたちは、玉座の間へ行ってください。私たちは、先に王妃様の部屋へ行きます」
「でも、お前たちだけでは危険だ」
「私がいる」
即座に答えたのは、フィオだった。
「セラは、なにがなんでも守ってみせる」
セラは、イリスを見る。
「……大丈夫」
その一言には、覚悟が滲んでいた。
「私たちは、必ず戻ります。だから、イリスさまは……先へ行って。必ず、また会えます」
一瞬、誰も動かなかった。
だが次の瞬間、イリスは静かに微笑む。
「分かった。約束だ」
セラとイリスは、小指と小指を絡め、約束を交わした。
セラ、フィオ、エリシアは、エリオネの部屋が眠る道へと進む。
「……気をつけて」
イリスは、3人の背中を見つめ、呟く。
残された回廊に、再び静寂が戻った。
「行こう、ノクス」
「ああ」
2人は、玉座の間へと続く道を、再び歩き出した。




