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扉を開く前に - 3
「……時間だ」
ノクスがそう告げると、全員頷いた。
ヴェイルの広間には、ノクスを中心に、イリスとリオ以外のメンバーが集まっていた。
王宮へ踏み込めば、戻れない者が出るかもしれない、戦いが始まろうとしている。
「侵入経路をここからだ」
指先で地図をなぞりながら、ノクスは淡々と続ける。
「正門は論外。地下水路は封鎖されている可能性が高い。残るは……西棟のみ」
そこは、かつて、王妃の私室へと繋がっていた場所。
イリスとセラが、以前足を踏み入れた部屋。
エリオネの気配が、未だに残る場所。
「そこに、“扉”がある可能性が高い」
ノクスの説明に、誰か、息を呑む音を立てた。
「陛下は、イリス様とノクス様の力を使って、異界を開こうとしているんですよね」
「あぁ、母上の力を使ってな」
ロイの言葉に、ノクスが続ける。
「絶対に扉は開かせない。そして、終わらせる」
ノクスは顔を上げ、仲間たちを見渡した。
「これは奪還じゃない。戦争だ」
広間には沈黙が流れた。
「ノクス」
それを破ったのは、双子の兄を呼ぶ声だった。
広間の入口には、イリスとリオが立っていた。
その目には、もう迷いはなかった。
「行ける」
イリスの短い言葉。
だが、誰よりも重い言葉。
その言葉に、ノクスは静かに頷いた。
「では――作戦を開始する」




