祈りの先で - 4
「母上は、それ以降、行方不明だ」
「……気配感知の能力者にも手伝ってもらったけど、ダメでした」
ノクスに続いて、エリシアが言葉を続ける。
「……ただ、母上の行方は、あいつが知っている可能性が高い」
「国王陛下か……」
アルベルトの言葉にノクスが頷く。
「母上が力を使っていた部屋に行けば、なにか分かるかもしれない。もしかしたら、扉もそこに……」
「そこってもしかして……私とイリス様が行った……」
「“お母様の部屋”だな」
「あいつは、あの部屋とイリスだけを使って、扉を開こうとした」
リオが言葉を継ぐ。
「……セラ様の力を補助にして」
セラが息を呑んだ。
隣にいたフィオも明らかに苛立ちを隠せずにいた。
ノクスはイリスを見ながら口を開く。
「世界と世界を結ぶ“扉”は、どこにでも現れるわけじゃない。力を定着させる“場所”が必要なんだ」
「……それが、あの部屋だったのか」
イリスは、静かに息を吸った。
「……だから王は、母上の部屋を封鎖し、時間ごと閉じ込めた」
ノクスの声は、淡々としていた。
「僕と母上が戻る可能性と、扉の存在、両方を封じるために」
「……最悪だな」
「王様にとっては、最善なんだろうね〜」
フィオの言葉にロイが口を挟んだ。
リオが一歩、前に出る。
「これで、陛下の目的は明確ですね。あの方の望む異世界への扉を、完全に開くこと。そのために……イリス様とノクス様の力を使う」
イリスは、拳を握った。
「……私を、“鍵”として」
沈黙。
やがて、ロイが軽く手を叩いた。
全員の視線がロイに集まる。
「はいはい、重いのはここまで〜。つまりさ……王宮に行くって話でしょ?」
ノクスが頷き、イリスは顔を上げた。
「……王宮に、戻る」
イリスの言葉に、誰も反対しなかった。
リオは剣の柄に手を置く。
「突入は、夜」
「正面からは行きません」
フィオが不敵に笑う。
「裏道なら、いくらでもある」
セラは、そっとイリスの袖を掴んだ。
「……一緒に、行きます」
ノクスは、最後に言った。
「これは、あいつ……父上と母上の因果の決着だ。そして……」
イリスを見る。
「僕たちが、“鍵”じゃないって証明する戦いでもある」
こうして、ヴェイルは決断した。
王宮突入、全ての始まりの場所へ行くことを。




