祈りの先で - 3
エリオネは、その後すぐに礼拝堂を後にした。
どこに身を潜めているのかは分からない。
けれど時折、まるで確かめるように、彼女はノクスを連れて礼拝堂を訪れた。
「この子にはね、双子の妹がいるのよ」
そう言って、エリオネはノクスを優しく抱き上げる。
「先日、王が発表されていました。イリス様のことですね。でも、ノクス様のことは何も……」
「ええ。もう死んだと思っているのか、それとも、最初から存在を隠したいのか……」
哺乳瓶でミルクを与えながら、エリオネは静かに続けた。
「イリスを置いてきてしまったこと……それが、私の後悔よ」
エリシアは、何も言えずに黙り込む。
「でもね……きっと、この子が大きくなったら……」
エリオネは、ノクスの額にそっと口づけた。
「イリスを迎えに行ってくれるはずよ。だって、お兄ちゃんだもの」
「……エリオネ……」
沈黙を破るように、エリオネはふっと話題を変えた。
「あのね、この間、面白いお店を見つけたの」
「……え?」
エリオネは腰元に手を伸ばし、2つの仮面を取り出して、エリシアに差し出した。
「……不思議な感じがするお面ですね」
「でしょう?この子たちを守るためのお面なの。私の願いも、ちゃんと込めたわ」
ミルクを飲み終えたノクスの髪を、エリシアがそっと撫でる。
その手を見つめながら、エリオネは静かに言った。
「エリシア……もし、私がいなくなったら……この子のこと……お願いね」
それが、エリシアがエリオネを見た最後だった。
翌朝。
エリシアの部屋の外には、ゆりかごに入れられたノクスがひとり、静かに眠っていた。
仮面はひとつだけ。
ノクスの傍らに、まるで託されるように置かれていた。




