祈りの先で - 2
「……っ」
エリオネが目を覚ますと、そこは見知らぬ天井だった。
柔らかな布の感触。身体は重いが、確かに生きている。
「……ここは……」
「お目覚めになりましたか?」
すぐそばから、穏やかな声がした。
視線を向けると、修道服姿の女性が、そっと微笑んでいる。
「……!? ノクスは!?」
エリオネは反射的に身体を起こし、叫ぶように子の名を呼んだ。
「だ、大丈夫です。赤ちゃんなら……こちらに」
エリシアが腕を少し持ち上げる。
そこには、小さな胸を上下させながら、すやすやと眠るノクスの姿があった。
「……よかった……」
エリオネは力が抜け、その場に崩れるように息を吐いた。
「……本当に、間一髪でしたよ。この子も、あなたも。私の力が間に合わなければ……」
「……治癒系の……能力者……ですか?」
「はい。微力ですけど」
エリシアは控えめに頷く。
「私は、この礼拝堂でシスターをしている、エリシアと申します」
「……ありがとうございます……」
ほっとしたのも束の間、エリシアは少し言いづらそうに、言葉を続けた。
「……それで、王妃様」
その一言に、エリオネの身体がびくりと強張る。
血の気が引き、震える手で、エリシアの袖を掴んだ。
「……どうか……どうか、見逃してください……!このままだと……この子が……」
必死に懇願するエリオネの頬に、エリシアはそっと手を伸ばした。
「大丈夫です。誰にも言っていませんから」
「……ほ……本当に……?」
「ええ。実は私……王妃様のファンだったんですよ」
「……え?」
「名前も、少し似ていましたし」
あまりにも予想外の言葉に、エリオネは目を丸くする。
「……あれ……私、おかしなことを言いましたか?」
「……ふふっ……いいえ」
エリオネは、こらえきれず、涙を浮かべながら笑った。
「……思いもよらない言葉だったので」
こうして、エリオネの逃亡の夜、2人は出会ったのだ。




