記憶 - 3
王宮の回廊。
レオナルトは夜更けまで書類を整理していた。
ふと視線を上げるとエリオネの部屋辺りから、月明かりに揺れる影が目に入る。
「……なんだ?」
違和感に導かれるように、レオナルトは部屋へ向かった。
部屋の扉を開くと、室内は静まり返っていた。
双子はベビーベッドの中で、寝息を立てていた。
小さな双子の寝顔……本当に愛おしい。
視線を双子から離し、ベランダへ目を向けると、そこにはエリオネが立っていた。
彼女の手元から、淡い光がこぼれている。
次の瞬間……空間が、裂けた。
エリオネの目の前に現れたのは、白く輝く巨大な扉。
両開きの扉の中央には、2つのドアノブと、2つの鍵穴。
鍵穴から溢れた光は、細い線となり、双子へと伸びていた。
光は優しく、確かに、双子を包み込んでいた。
「……これは……」
レオナルトは、息を呑んだ。
その声に、エリオネがはっと振り返る。
「……っ!? レオナルト様……!」
彼女の動揺と同時に、扉は空に溶けるように消え去った。
まるで、最初から存在しなかったかのようだった。
「今のは……なんだ?」
低く、抑えた声。
エリオネは開きかけた口を閉じた。
「……」
「聞こえなかったのか。答えろ」
強まった声に、エリオネは一瞬だけ目を伏せ、静かに首を振った。
「申し訳ございません……言えません」
「……そうか」
レオナルトの視線が、冷たくなる。
それ以上何も言わず、部屋を後にした。
エリオネ。
彼女は自分にも明かせない力を持っている。
そして、双子。
生まれたばかりの小さな手には、確かに“何か”が宿っていた。
「……調べる必要があるな」
その呟きは、すでに計画の始まりだった。




