交響 - 6
暗い通路の先。
冷気と石の匂いの中。
クロの部屋に、2人はいた。
クロの仮面の奥の視線が、イリスをじっと捉える。
「……ここが、あなたの居場所ですか?」
イリスは尋ねた。
「そうだな」
クロの声は静かだが、どこか含みがある。
イリスは眉をひそめる。
「この部屋に来る前に……お母様の匂いがした」
クロは仮面を軽く触れ、ゆっくりと頷く。
「感じたのか。そうか、やはり、お前は母親を……」
言葉を途切れさせ、視線は遠くを見つめる。
イリスは少し動揺した。
「私……お母様のこと、知りたいんです」
「……知ることは、時に苦痛を伴う」
クロの声には、わずかな迷いが混じった。
「それでも、探すと決めたんだ。お母様の手がかりを……父のことも……」
イリスの瞳は、迷いなく揺るがない。
クロは少しの沈黙の後、ゆっくり口を開いた
「……ここはかつて、お前の母親、エリオネと子供が身を隠していた場所だ」
「……子供って、私の双子の兄弟のことか?」
「……あぁ……そうだな」
しばらく黙ったクロは、覚悟を決めたように告げた。
「皆を集めよう。全てを話そうか」
━━━━
ヴェイル拠点・大広間の中央にクロは立っていた。
イリス、リオ、ロイ、セラ、フィオ、アルベルト、全員の視線が彼に向けられる。
「……全員揃ったな」
クロの声は穏やかだが、鋭さを帯びていた。
そっと、仮面を取ると、奥からはあの日見た、イリスに瓜二つの顔が現れた。
「……え……イリスさまに……そっくり」
セラが思わず呟く。
「話すべきことは多い。だが、まずお前に確認したい」
クロは一歩前に出て、イリスの目を見る。
「……お前の母の計画、王の計画、お前は本当に覚悟があるのか?」
イリスは拳を握り、目をそらさずに答える。
「……覚悟? 私に選択肢があるなら、母の意志を継ぐ」
クロはゆっくり頷き、少し微笑む。
「僕の本当の名前は、ノクス。そしてイリス……君の双子の兄だ」




