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王の子は世界と世界のあいだで鍵となる  作者: 眠瑠
エピソード10:交響
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交響 - 5

リオはまだ、イリスに呼び出されて叱られた余韻の中で、部屋のベッドの上に座っていた。

剣を膝に置き、深く息を吐く。


「……はぁ」


すると、静かな気配が近づいてくるのが分かった。

顔を上げると、そこに立っていたのは……


「アルベルト……」


昼間の光に照らされ、あの頃と変わらぬ落ち着いた佇まい。

リオは立ち上がり、自然と剣を手に取る。

しかし、それは戦闘のためではなく、礼を示すためだった。

やっとできた2人きりの時間。


「久しぶりだな、リオ」

「……師匠」


アルベルトの目が、静かにリオを見据える。


「元気そうで何よりだ。お前は叱られ慣れてると思ったが、よっぽど姫様の説教が効くんだな」

「……はい」


アルベルトは微かに笑った。


「そうか……成長しているようだな。お前の剣の握り方も、あの頃よりずっとしっかりしている」


リオは少しだけ目を細め、懐かしい感覚が胸を満たす。


「……アルベルト、どうして……」


リオはまだ、怒りと戸惑いが混ざったまま言葉を絞り出す。

アルベルトは少し視線を落とし、深く息をついた。


「消えた理由だろう?……話そう」


その声には、いつも通りの穏やかさの奥に、覚悟が滲んでいた。


「5年前のことだ。お前がまだ幼かった頃……任務で外にいた俺は、まだ10歳そこらのクロと出会った」


アルベルトの言葉に、リオは息を飲んだ。


「手伝って欲しいと言われたんだ」

「手伝う……?」

「そう。彼は、自分の力だけでは解決できない問題を抱えてた。そして、俺を頼ってきたんだ」


アルベルトの瞳が、遠くの記憶を見つめる。


「その目には、底知れぬ強い意志があったよ」

「その年齢で?……っ……」


ふと、リオはイリスの顔を思い浮かべた。

彼女の目にも、底知れぬ強い意志があった。

リオの表情でアルベルトはなにかを察したのか、小さく笑う。


「あの子たちは特別だな……」

「……だから姿を消したんですか?」

「そうだ」


アルベルトはゆっくりと目を閉じ、思い出していた。

泣きもせずただ、真っ直ぐ真剣な目でアルベルトを見つめるクロ。


『お願いします。貴方しか助けられないんです』


そう言った。


「……俺がいたら、手伝えたんじゃないですか?」


アルベルトは静かに首を振る。


「いや、あの時のお前には、まだ早かった。俺が行くしかなかった」

「……でもっ!」


アルベルトは深く息をつき、リオの肩に手を置いた。


「お前には残って剣を握ることを学ばせた」


リオは胸の奥で、理解と悔しさが入り混じる。


「……クロが、アルベルトに頼んだ……」

「そうだ。そして俺は、それを断ることはできなかった」


沈黙が流れる。


「分かりました」


リオは、言葉にならない感情を胸に抱きながらも、ただ頷いたのだった。

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