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王の子は世界と世界のあいだで鍵となる  作者: 眠瑠
エピソード10:交響
50/80

交響 - 4

昼下がりのヴェイル拠点。

掃除された広間は、日差しが差し込み、以前なら物陰になっていた場所まで光が届いていた。

リオは壁際で腕を組み、周囲を見渡す。


「……落ち着かない」

「わかる〜」


振り向くと、机に腰掛けたロイがパンをかじりながらこちらを見ていた。


「綺麗すぎて逆に不安になるな〜。でも、汚くするとあの姫様に怒られそ〜」

「失礼だな」

「いや? 事実?」

「……ところで、なぜ君は毎日毎日、自分の前に現れるんですか? 隙あらば俺を殺そうとしてるとか?」


ロイはニコッと笑い、テーブルの上にあったジャムをパンに塗る。


「よく分かりましたね〜。でもリオさん、警戒心が強すぎて、隙がないんですよ〜」


その瞬間――

ロイがジャム用のバターナイフをリオに向けて投げた。

リオは顔を少し傾けて避け、バターナイフは壁に突き刺さった。

飛んだジャムが、リオの頬に付く。


「ダメですよ、そんな使い方したら」

「……ふんっ」


リオはジャムを指で取ってペロリと舐める。


「アルベルトに、兄弟子を敬えと教わらなかったんですか?」

「俺は、お前を兄弟子なんて思ってない!」

「そうですか」


その時だった。ロイの背後に誰かが立つ。

リオの視線が反射的に向く。


「……アルベルト」

「久しぶりだな」


昼の光の中に立つその姿は、紛れもなく“現実”だった。

ロイの顔が強ばる。


「師匠……」

「元気そうだな、ロイ」

「なんでですか!? なんでこの人なんですか!?」

「……何がだ」

「リオさんですよ! 俺、めちゃくちゃ頑張りましたよね!? それなのにこの人、気づいたら“一番弟子”みたいな顔してるし!!」


ロイは地団駄を踏む。


「なんでそんな信頼されてんの!? 才能!? 性格!? それとも無口枠!?」

「ロイ」

「はい!」


アルベルトは淡々と言った。


「嫉妬する暇があるなら、剣を振れ」

「……っ」


ロイは唇を噛む。


「……だから嫌いなんですよ、そういうところ」

「なら、辞めるか?」

「辞めません!!!」


即答のロイはリオを睨む。


「覚えとけよ、副隊長」

リオは少し間を置き、言った。


「受けて立つ」

「ちっ、余裕ぶりやがって……!」


ロイはそのまま、立ち去った。



――数時間後。


壁に刺さったままのバターナイフを見つけたイリス。

読む力を使い、リオとロイを呼び出し、叱責が炸裂するのだった。

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