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王の子は世界と世界のあいだで鍵となる  作者: 眠瑠
エピソード10:交響
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交響 - 3

大掃除の余韻が残るヴェイルの拠点は、見違えるほどピカピカだった。

床はきちんと見え、机の上も綺麗に片付いている。


セラとイリスはテーブルを挟み、ホットミルクを片手に向かい合っていた。


「……静かですね」


セラがぽつりと呟く。


「いつもは誰かしら騒いでるからな」


イリスがそう答えた、その時だった。

拠点の入口の扉が、ギシッと音を立てて開くと、冷たい外気が流れ込んだ。


「……なんだ、これ」


そこには、綺麗になった広間を見渡して、目を丸くしている少女がいた。

黒い服に身を包み、フードを被っていて、顔がよく見えない。

だが……

その姿を見たセラの目が大きく見開かれた。


「……フィオ」

「……久しぶり」


声は、セラの記憶のままだった。


「外の任務、長引いてたんだ」

「フィオ……生きて……た……」


セラは言葉の途中で詰まり、視線を落とす。

泣きそうになるのを、必死で堪えていた。

フィオは小さく息を吐き歩み寄ると、そっとセラの頭に手を置いた。


「簡単に死なないよ」


その仕草は、昔と変わらない。


「おかえり」


イリスが、静かに言った。

フィオはイリスを見ると、少しだけ姿勢を正す。


「……イリスさま……あの」

「……あの時は、申し訳なかったな」


イリスはそう言って、フィオに頭を下げた。


「え!? あの、謝るのは私の方で……」

「フィオの選択が、正しかったのかもしれない」


フィオは言葉に詰まる。


「……いや……でも」

「でもでも! フィオのやり方、ちょっと強引だったかも……?」


セラが割って入る。

その表情に、イリスとフィオは顔を見合わせ、思わず笑ってしまった。


「え!? なんで2人とも笑うんですか〜?」


3人の距離は、自然と近い。

まるで仲の良い三姉妹のようだった。

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