交響 - 3
大掃除の余韻が残るヴェイルの拠点は、見違えるほどピカピカだった。
床はきちんと見え、机の上も綺麗に片付いている。
セラとイリスはテーブルを挟み、ホットミルクを片手に向かい合っていた。
「……静かですね」
セラがぽつりと呟く。
「いつもは誰かしら騒いでるからな」
イリスがそう答えた、その時だった。
拠点の入口の扉が、ギシッと音を立てて開くと、冷たい外気が流れ込んだ。
「……なんだ、これ」
そこには、綺麗になった広間を見渡して、目を丸くしている少女がいた。
黒い服に身を包み、フードを被っていて、顔がよく見えない。
だが……
その姿を見たセラの目が大きく見開かれた。
「……フィオ」
「……久しぶり」
声は、セラの記憶のままだった。
「外の任務、長引いてたんだ」
「フィオ……生きて……た……」
セラは言葉の途中で詰まり、視線を落とす。
泣きそうになるのを、必死で堪えていた。
フィオは小さく息を吐き歩み寄ると、そっとセラの頭に手を置いた。
「簡単に死なないよ」
その仕草は、昔と変わらない。
「おかえり」
イリスが、静かに言った。
フィオはイリスを見ると、少しだけ姿勢を正す。
「……イリスさま……あの」
「……あの時は、申し訳なかったな」
イリスはそう言って、フィオに頭を下げた。
「え!? あの、謝るのは私の方で……」
「フィオの選択が、正しかったのかもしれない」
フィオは言葉に詰まる。
「……いや……でも」
「でもでも! フィオのやり方、ちょっと強引だったかも……?」
セラが割って入る。
その表情に、イリスとフィオは顔を見合わせ、思わず笑ってしまった。
「え!? なんで2人とも笑うんですか〜?」
3人の距離は、自然と近い。
まるで仲の良い三姉妹のようだった。




