出口 - 7
通路は、湿った冷気が漂っていた。
そして、どこか懐かしい匂い。
胸の奥がじんわりと温かくなる。
(お母様)
声は聞こえず、姿も見えない。
けれど、確かに“そこにいた”。
この道を通った人の想いが、石に、空気に、残っているのをイリスは感じた。
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通路を抜けると、荒れた草木が広がる王宮の裏へと出た。
人の気配はなく、長い間、誰も立ち入っていない場所。
もちろん、イリス自身も来たことはなかった。
「遅かったな」
「……誰だ」
そこには2人を待っていた、黒衣と仮面を纏った人物。
そこに立っていたのは、ヴェイルのトップ……クロ。
イリスは反射的に身構えるが、リオは剣に手をかけない。
「……彼がヴェイルのトップ、クロです」
リオが、小さく囁く。
クロは、仮面の奥で僅かに笑った気配を見せた。
「……リオ……手を組んだのか」
イリスの問にリオは、ほんの少しだけ視線を逸らす。
「敵じゃないと、判断しただけです」
リオはロイがやってきたあの日、ヴェイルの本当の計画を知った。
そして、ヴェイルと手を組むことを選び、イリスを助けることを決めていた。
「計画通りだ……さあ、行こうか」
そう言って、クロは仮面に手をかけ、ゆっくりと、それを外した。
その瞬間、イリスの呼吸が止まる。
同じ瞳。
同じ色。
同じ、奥に沈んだ光。
まるで、鏡を見ているかのようだった。
「……っ」
言葉にならない。
顔立ちも、雰囲気も違う。
それなのにイリスの中で“同じ血”だと、本能が告げていた。
クロは、イリスをまっすぐ見つめる。
その声と顔は、イリスに懐かしさすら感じさせていた。




