第二話 記憶に残ったみたいです
苦手な美容室に行ってから数日。
迎えた委員会の日。
髪型も変わった。
眉毛も整えた。
鏡の前で最終チェックなんかしちゃったり。
以前の俺なら、確実にこんなことはしていない。
恋ってすごいな。
自分でも驚くようなことばかりしている。
だから、今日の委員会は、
恥ずかしさと楽しみでソワソワしていた。
「…………」
結果から言うと。
春華ちゃんは一度も話しかけてくれなかった。
花壇の手入れをしていても
道具を運んでいても
隣にいても、何もない。
いつもなら向こうから話しかけてくれるのに
今日は軽い挨拶だけだった。
(あー……)
なんか
地味にへこむ。
いや、分かってたんだ。
春華ちゃんは
誰にでも優しい。
たまたま委員会で一緒だから
話しかけてくれていただけ。
俺のイメチェンなんて気付くわけない。
そもそも、
学校一の美少女が陰キャの髪型なんて
気にするはずもない。
少しくらい反応してもらえるかもって
期待していた自分が凄く恥ずかしくなった。
委員会後、教室へ戻り
帰りの準備をしていると、
ガラッ
突然、教室の扉が開いた。
「えっと…晃大さんいますか!?」
俺の名前が呼ばれた瞬間、
教室中の視線が入口へ集まった。
当然、俺も見る。
そして固まる。
いや、固まるだろ。
だってそこにいたのは春華ちゃんだ。
教室を見渡し、俺と目が合うと
「いたっ!晃大さん!」
「ちょっと来てください!早く早く!」
なんだかとても嬉しそうに手招き。
そんな可愛い笑顔が今、
俺に向けられている事に
クラスメイト達は唖然としている。
ものすごく…逃げたい。
だけど、せっかくのチャンスを
逃すわけにはいかない。
慌てて教室を出て、春華ちゃんの後を追うと
連れて来られたのは花壇だった。
『どうしたの?』
すると春華ちゃんは満面の笑みを浮かべた。
「見てください!」
そう言って指差した先には、
白い花。
そして、その隣にも白い花。
『……あ、これって…』
「そう!あの時のです!」
あの日…俺が植え間違えた花だ。
「咲いたんです!」
『本当だ……』
思わず近付く。
種類は違う。
でも、確かに同じ白色だった。
「ほら!やっぱり 同じ色でしたね!」
春華ちゃんは得意げに笑った。
『すごいね……』
「ですよね!?」
『でも、、目立ってるね』
「…それはそうなんですけど!笑」
規則正しく並んだ花壇の中で、
入れ替わった二輪だけが
堂々と自己主張している。
「絶対バレますね、これ(笑)」
『うん(笑)』
同じ色だったことは嬉しいのに、
隠しきれない違和感がおかしくて、
俺たちは顔を見合わせて笑った。
『わざわざこれを見せるために呼びに来てくれたの?』
「はい!」
即答だった。
「だって約束したじゃないですか!」
約束…。
そんな大げさなものじゃなかったはずなのに
ちゃんと覚えていてくれたんだ。
なんだか胸が温かくなる。
「それと……」
「ん?」
「イメチェン、したんですね……」
『…!』
「……似合ってます」
『あ……』
動揺を隠しきれない俺から少し視線を逸らした。
そして、
「めっちゃかっこいいです……」
と、小さな声で呟く。
耳まで真っ赤になっているのは、
たぶん気のせいじゃない。
『あ、ありがとう……』
それだけ返すのが精一杯だった。
心臓がうるさい。
春華ちゃんも照れているのか、
どこか嬉しそうに笑っていて…
その笑顔を見た瞬間、
少しでも記憶に残れたらいいなと思っていた願いは、
思っていた以上の形で叶っていたことに気付いた。
第二話を読んでいただき、ありがとうございました!
イメチェンしたのに全く反応してもらえず落ち込む晃大でしたが、実は春華はちゃんと見ていました。
むしろ見過ぎていたかもしれません(笑)
花の色を気にしていた二人ですが、本当に気になっていたのは花ではなく、お互いのことだったのかもしれませんね。
次回は、花壇の前で少しずつ距離が縮まっていく二人のお話です。
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それでは、また次回!




