第48話:最後の手段:いっそ店を爆破して逃げよう
「……もう、これしかない」
予約1000年待ち。罵倒すれば喜ばれ、生米を出せば「悟り」を開かれる。
ツヨシの精神は限界に達していた。
どんなに「最悪」を尽くしても、この世界の神々はポジティブすぎる。
ならば、その「場」そのものを消滅させるしかない。
ツヨシは深夜、人影(神影)のない屋台の裏で、密かに「魔力過負荷装置」を組み立てていた。
「いいか、これを起動すれば屋台は跡形もなく吹き飛ぶ。店がなきゃ、営業もできねえ。俺は爆発のドサクサに紛れて、この神界の果てまで逃げてやるんだ」
翌朝。
屋台の前には、今日も「罵倒の洗礼」を求めて数万の神々が詰めかけていた。
ツヨシは震える手で、カウンターの下にあるスイッチを握りしめる。
「……あばよ、神界! 俺は自由になるんだ!」
ポチッ。
ドォォォォォォォン!!!
凄まじい爆音と共に、ツヨシの愛用してきた屋台が、まばゆい光に包まれて四散した。
木材の破片、のれん、使い古したお玉、そして「お品書き」の看板。
すべてが粉々になり、空高く舞い上がる。
(やった……! ついに壊したぞ! これで俺はただの無職だ!)
爆風の煙に紛れ、ツヨシは全速力で走り出そうとした。
しかし。
「おお……おおおおおおおおお!!!」
逃げようとしたツヨシの足を止めたのは、悲鳴ではなく、大地を揺るがすほどの「歓喜の咆哮」だった。
「見てくれ! 聖なる『爆ぜ(はぜ)』だ! ツヨシ様が、ついに物質の殻を脱ぎ捨て、概念としての料理へと昇華されたのだ!!」
先頭にいたトールが、空から降ってきた「焦げた割り箸の破片」を必死でキャッチし、涙を流している。
「この破片……! 触れるだけで全魔力が回復する! これこそが真の『聖遺物』だ!!」
「私にも! 私にもツヨシ様の屋台の破片を! その釘一本でいいから恵んでくれえええ!!」
神々はパニックに陥った。
逃げようとするツヨシを無視して、彼らは空から降ってくる「ゴミ(屋台の残骸)」を目がけて飛び上がった。
「そこの『のれんの切れ端』は私のものだ! 宇宙の理が記されている!」
「待て! この『焦げた煮込み鍋の底』こそが、次元の門を開く鍵だぞ!」
神々による、空前絶後の「ゴミ拾い大戦争」が勃発した。
かつて屋台があった場所には、もはや何も残っていない。
それどころか、神々は「屋台があった場所の空気」さえも瓶に詰めようと必死になっている。
「……おい」
ツヨシは呆然と立ち尽くした。
屋台は消えた。しかし、事態はさらに悪化していた。
もはや彼は「店主」ではなく、世界中に「聖遺物」をばらまいた「創造神」のような扱いになっていたのだ。
「ツヨシ様! 次は何を爆破してくださるのですか!? 太陽ですか!? 銀河ですか!?」
バハムートが、頭に「折れた屋台の柱」を刺したまま(聖遺物として同化したらしい)、キラキラした目で詰め寄ってくる。
「…………もう、死なせてくれ」
ツヨシの「脱出計画」は、屋台の消滅によって「伝説」へと格上げされてしまった。
自由を求めた爆破は、神界における「新しい宗教の誕生」という最悪の結末を招いたのである。




