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異世界転生しちゃったので忍者になってみた  作者: 羽越世雌
第2章:どんどん「忍術」の定義が歪んでいく
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第47話:究極の拒否:そうだ、接客を最悪にしよう

「……味じゃねえ。根本的に間違ってたのは、俺の『優しさ』だったんだ」


前回の「毒料理サウナ事件」で、神界最大のジャンキー製造主シェフとなってしまったツヨシは、鏡に映る自分の疲れ切った顔を見つめていた。

どんなにマズいものを出しても、神々の超越的な解釈によって「ご褒美」に変換されてしまう。ならば、提供する側の「サービス」を徹底的に汚してやればいい。


「いいか、今日から俺は『地獄の独裁店主』だ。客をゴミのように扱い、二度と来たくないと思わせてやる……!」


ツヨシは屋台の前に立ち、腕を組んで仁王立ちになった。

そこへ、いつものように腹を空かせた上級神たちがやってくる。


「ツヨシよ! 今日もあの『脳が焼き切れるスープ』を頼むぞ!」

やってきたのは、雷を操る武闘派の神・トール。


「……あ? うるせえな、聞こえねえよ。勝手に座んな。あと、注文は俺が決める。お前にはこれだ」


ツヨシは、昨日洗わずに放置していた汚れた皿に、ただの「生米」をドサッとぶちまけた。


「水もねえ。火も使わねえ。そのまま食え。嫌なら帰れ、この雷親父が」


(よし、完璧だ……! 完全にアウトだろ、これは!)

ツヨシは内心でガッツポーズをした。客を罵倒し、調理すら放棄した生米。これは飲食業における「死」である。


しかし、トールは一瞬固まった後、目を見開いて震え出した。


「……こ、これは……ッ!!」


「(お、キレたか!?)」


「何という……何という『厳格な修行アセティシズム』なのだ! ツヨシよ、貴様は我ら神々が、最近あまりにも安楽な生活に溺れていることを見抜いていたのか!?」


「はあ!?」


トールは震える手で生米を掴み、ガリガリと噛み砕き始めた。

「美味い……! 噛めば噛むほど、己の傲慢さが砕かれていくようだ! そしてこの罵倒……『雷親父』! 我が本質を見抜き、あえて等身大の自分に立ち返らせてくれる慈悲の言葉! 魂が……魂が浄化されるぞ!!」


「違う! 悪口だよ!!」


隣に座った女神が、おずおずと「あの、私はパスタを……」と口を開きかける。

「黙ってろブス! お前に食わせるタンメンはねえ! 帰れ!」


ツヨシは渾身の暴言を投げつけた。

すると女神は、顔を真っ赤にして身悶えし始めた。


「……『ブス』……!? 私を、美の化身である私を……あえて否定することで、外見という殻を破壊し、内なる真実の美に目を向けろというのね!? なんて高度な精神分析……! ああっ、もっと! もっと私を否定して、ツヨシ様!!」


「様を付けるな! 変態かよ!!」


そこにバハムートが割って入ろうとするが、ツヨシはすかさず「お前は皿洗いでもしてろ、トカゲ野郎!」と蹴りを入れる。

「ひええええ! 師匠の愛の鞭だ! ありがとうございます! 背骨が整いました!」


周囲で見ていた神々が、一斉に列をなし始めた。

「私にも……私にも罵倒を!」「調理放棄しただけの石ころを食べさせてくれ!」「無視して! お願いだから完全に無視して素通りして!!」


『緊急速報! 聖域(屋台)の参拝予約が、現在1000年先まで埋まりました! 待ちきれない神々のために、ツヨシ氏による「罵倒付き生ゴミ配給会」の開催が検討されています!』


神界ニュースの声が空に響き渡る。


「…………嘘だろ」


ツヨシは膝から崩れ落ちた。

最悪の接客は「究極のデトックス・カウンセリング」として定義され、ツヨシは神界において「魂を磨く至高の指導者」として崇め奉られることになったのだ。


「水……水をくれ……俺に、冷たい現実を突きつける水を……」


「水などありません! 師匠が『出すな』と仰ったからです! 素晴らしい教えです!」

バハムートが満面の笑みで、空のコップを差し出した。


ツヨシの絶望は、1000年先まで予約が埋まるという形で、永遠に確定してしまったのである。

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