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異世界転生しちゃったので忍者になってみた  作者: 羽越世雌
第2章:どんどん「忍術」の定義が歪んでいく
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第46話:脱出計画:マズいメシの逆襲

「……もう、まともな神経では戦えない。俺は、料理人を辞めるぞ……ジョジョーッ!!」


ツヨシは屋台の裏で、暗黒物質ダークマターのようなオーラを放つ鍋をかき混ぜていた。

前回の「素うどん」と「お湯」が『究極の禅』として評価され、神界に「ツヨシ殿堂」という名のブラック企業ビルが建とうとしている。このままでは一生、神々のために茹ですぎたうどんを作り続けるマシーンになってしまう。


「いいか、今度のメニューは『料理』じゃない。これは『宣戦布告』だ」


ツヨシが用意したのは、もはや食材ですらない。

ベースは、魔界の奥底で採取された「致死量ギリギリの激辛カプサイシン・クリスタル」。

そこに、嗅いだだけで意識が飛ぶ「腐敗したドラゴンの脇の下ハーブ」を隠し味に入れ、仕上げに「電気を帯びたパラライズ・シチュー」をぶち込んだ。

見た目はドロドロの紫色で、時折「ピチャッ……」と鍋から自律的に逃げ出そうとする意志さえ持っている。


「名付けて、『終末のデトックス・ボム』。これを食って、二度と俺に注文する気を失せさせてやる!」


ツヨシは意気揚々と、審判席に座る三柱の創造神の前にその「毒物」を差し出した。

いつもの試食役・バハムートは、料理が運ばれてきた瞬間に「あ、これ死ぬやつだ」と察知し、音速で背後の柱に隠れた。


「ホッホッ……ツヨシ、今度はまた刺激的な色合いじゃな」

過去を視る老婆が、不敵な笑みを浮かべてスプーンを伸ばす。


(食え! 食って悶絶しろ! そして俺を追放してくれ!!)


一口。老婆の顔が、一瞬で真っ白になった。

直後、彼女の体から「ドォォォォン!!」という衝撃波が放たれ、周囲の雲が吹き飛ぶ。


「…………き、……きたああああああああ!!!」


老婆が叫んだ。怒りではない。それは、サウナで限界まで我慢した後に水風呂に飛び込んだ時のような、狂おしいほどの「整い」の叫びだった。


「なっ、なんだって!?」

ツヨシの目が見開かれる。


「この強烈な毒素……! 普段、清浄な神力マナばかりを摂取している私たちの細胞に、この『暴力的な刺激』が突き刺さる……! 神の体が、強制的に再構築されていくわ!」


現在を司る美女も、一口食べるなり頬を赤らめ、荒い息を吐き始めた。

「……んんっ……! この痺れ……全身の神経が焼き切れるような感覚……。でも、その後にくる圧倒的な開放感! これはまさに、精神のサウナ! 魂の外気浴よ! ツヨシ、あなた……私たちを『キメ』に来たのね!?」


「キメてない! 殺そうとしたんだ!」


未来を視る幼女が、震える手で二杯目をお代わりする。

「……すごい。脳からドパミンが溢れて、全宇宙の真理が一瞬で見えた気がする。ツヨシ、これ……週に一回は摂取しないと、私たち神格を維持できなくなるかも……」


「中毒者じゃねえか!!」


隠れていたバハムートが、恐る恐るおこぼれを舐めると、その瞬間「ギャオオオオン!」と叫びながら脱皮し始めた。

「……師匠! 俺、進化しました! 過去の自分がゴミのように感じられます! もっと……もっとこの地獄のスープを!」


『判定! 勝者、ツヨシ! この料理を「神界指定重要ドラッグ(合法)」とし、明日からツヨシ殿堂を「神界最大の極楽サウナランド」へと改装することを許可する!』


「ランドにしなくていい!!」


ツヨシの必死の抵抗も虚しく、屋台の看板は勝手に「地獄サウナ・ツヨシ」へと書き換えられてしまった。

客の神々は、ツヨシの「毒料理」を食べては絶頂し、そのまま水風呂代わりの宇宙空間へ飛び出していく。


「……おかしいだろ。なんでマズいものを作れば作るほど、リピーターが増えるんだよ……」


ツヨシは、空になった毒鍋を見つめながら、涙を流した。

地球の有給休暇への道。それは今、神々の「整い」を支えるインフラの一部として、完全に封鎖されたのである。

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