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異世界転生しちゃったので忍者になってみた  作者: 羽越世雌
第2章:どんどん「忍術」の定義が歪んでいく
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第41話:逆接待

1. 刺客たちは「お通し」を持参する


「……なあ、アニス。俺、一応『指名手配犯』だよな?」


ツヨシは窓の外を眺め、深くため息をついた。

家の前には、かつて見たこともないような異形の軍勢が整列している。しかし、彼らが手にしているのは鋭い剣でも呪いの杖でもなく、風呂敷に包まれた重箱や、キンキンに冷えたクーラーボックスだった。


「ツヨシ様、そんなに悲しそうな顔をしないで。彼らは皆、自分たちが『メインディッシュ』にならないために、必死で『サイドメニュー』を運んできてくださったのですから」


アニスは手慣れた様子で、玄関前に受付カウンターを設置し、名簿を作成していた。


2.エントリーナンバー1:冥界の暗殺騎士


カチャカチャと不気味な鎧の音を鳴らし、一人の騎士が前に出た。

本来なら魂を刈り取るはずの鎌を背負っているが、その手には「産地直送」と書かれた木箱がある。


「……ツヨシ殿とお見受けする。拙者は冥界の刺客。命を奪いに参った……と言いたいところだが、命より大事な『冥界のブランドウニ』を持参した。これで……これで今日のところは見逃してくれまいか!」


「いや、ウニは嬉しいけどさ、お前プロの刺客だろ? プライドとかないのかよ」

「プライドで腹は膨らまん! 先日、軍神殿が神界の門番を噛みちぎろうとしていたという報告を聞いて、我が一族は震え上がったのだ!」


騎士は涙ながらにウニの箱をアニスに手渡し、全速力で逃げ去っていった。


3.エントリーナンバー2:深海の巨大クラーケン


次に現れたのは、人間の姿に化けた巨大イカの化身だった。

彼は顔色を真っ青(もともと青白いが)に染め、震える声で懇願する。


「お、王よ……。どうか私を『イカ焼き』にしないでください。代わりに、この深海の底で熟成させた『竜宮の古酒』を差し上げます。これ一杯で、どんな硬い肉もトロトロに溶ける名酒です……!」


「お、気が利くな。バハムート、これお前の晩酌に使えよ」

「おお! 師匠、さすがです! これで今日の神獣ステーキがさらに進みますな!」


背後で「神獣ステーキ」という不穏な単語を聞いたイカの化身は、腰を抜かして墨を吐きながら退散した。


4.接待のピーク:魔界の美食四天王


行列が昼過ぎまで続き、ツヨシが飽きてきた頃。

空が割れ、禍々しい魔力と共に「魔界の四天王」を名乗る者たちが降臨した。


「ついに来たか、本物の刺客が……!」

ツヨシが少しだけ身構える。しかし、四天王のリーダーは、恭しく膝をついて銀のトレイを掲げた。


「暴虐の王・ツヨシ殿! 我ら魔界四天王、貴殿の食欲を満足させるべく、魔界最高峰の『暗黒トリュフのピザ』を焼き上げて参りました! 生地には地獄の業火で3日3晩煮込んだソースを使用しております!」


「……四天王。お前ら、魔界を統べる者じゃないのか?」

「左様! しかし、貴殿に喰われて魔界の歴史が終わるよりは、出前館として生き延びる道を選んだ次第!」


もはや、ツヨシの家の前は「異世界グルメフェス」の状態だった。


5.そして、夕食の時間


行列がようやく途切れ、ツヨシの家のリビングは、次元を超えた珍味の山で埋め尽くされていた。


「師匠! 見てください、この『幻のキノコ』! 炒めるだけで勝手に味付けが完成します!」

「ツヨシ様、今夜は『冥界ウニ』と『魔界トリュフ』のパスタにしましょうか。デザートは『天界のメロン』がございますわ」


弟子たちが大はしゃぎで準備を進める中、ツヨシは一人、届いたばかりの「最新の指名手配書」を眺めていた。


『警告:ツヨシ一味に近づく際は、必ず一人三品以上の献上物を持参すること。手ぶらで近づいた場合、調理される危険性あり』


「……これ、もう指名手配じゃなくて、ただの予約困難なレストランの注意書きじゃねえか」


ツヨシがぼやく中、アニスが笑顔でワインを注ぐ。


「いいではありませんか。世界が平和(?)になって。さあ、冷めないうちに召し上がれ。次の刺客は、デザート担当を呼んでおきましたから」


ツヨシの胃袋が、今日もまた世界のパワーバランスを書き換えていくのであった。

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