第39話:神々の大食漢
1. 伝説の家計簿・赤字限界突破
ツヨシの家の食卓には、かつてない絶望が漂っていた。
原因は、玄関先に並んだ「弟子」という名の居候たちである。
「師匠! おかわりを所望する! 龍の代謝を維持するには、一食で牛三頭分は必要なのだ!」
「ツヨシ殿、我が聖剣を振るうエネルギーが足りませぬ。あと白米を十升ほど……」
巨大な龍バハムート(人間サイズに縮小中)と、筋肉隆々の軍神が、空っぽの茶碗を差し出してくる。
「……アニス。今月の食費、あといくら残ってる?」
ツヨシが震える声で尋ねると、アニスはにっこりと、しかし血の気の引いた笑顔で家計簿を見せた。
「ツヨシ様、残り『十二円』ですわ。昨日の夕食でバハムートさんが隠し持っていた黄金のリンゴを勝手にデザートにした罰金を含めても、これっぽっちです」
「十二円……!! うまい棒一本も買えないじゃないか!!」
2.神々の「もぐもぐタイム」の恐怖
神々というものは、存在しているだけでエネルギーを消費する。
ましてやツヨシの「教育的指導(労働)」を受けた後は、彼らの空腹感はブラックホール並みになるのだ。
「いいかお前ら、我が家はもう破産だ! 明日からのおかずは『梅干し(の種)』だけだと思え!」
「そんな殺生な! 師匠、せめてプロテイン、プロテインを……!」
軍神が涙ながらに訴えるが、ツヨシの財布はすでにペシャンコである。
さらに悪いことに、仙人が勝手に庭の池の水をすべて「神酒」に変えてしまい、ツヨシが楽しみにしていた食用鯉が酔っ払って全滅するという追い打ちまでかかっていた。
3.究極の食材調達(サバイバル編)
「こうなったら……自給自足だ。アニス、あの『禁忌の森』へ行くぞ」
「あら、あそこは足を踏み入れるだけで魂が吸い出されるという死の森ですわね。いい狩場になりそうですわ」
ツヨシは弟子たちを庭に集合させた。
「お前ら、食いたければ動け! 今から『禁忌の森』に住む、伝説の魔獣『ギガント・ボア(時価一千万)』を狩りに行く! 失敗したらお前らを非常食にするからな!」
「ひ、非常食!? 龍肉は硬いですよ師匠!!」
4.神々の本気、空腹の咆哮
禁忌の森。そこには普通の冒険者なら一瞬で蒸発するような凶悪な魔獣が跋扈している。
だが、現在の弟子たちは「極限状態の腹ペコ」である。
「あ、あそこに……大きな豚がいるのだ……」
バハムートの目が怪しく光る。
突如、森の奥から山のような巨体のギガント・ボアが突進してきた。その突進力は城壁をも粉砕する。
しかし、ツヨシは動かない。
「軍神! お前は左足を持て! 龍! お前は右足だ! 仙人! 逃がさないように結界を張れ!」
「承知ッ!!」
軍神が神速のステップで懐に飛び込み、魔獣の足を素手で掴んでジャイアントスイング。
「ぬおおお! 焼肉! 焼肉のために俺は振るう!!」
空飛ぶ魔獣に対し、バハムートが口から「調理用ブレス(中火)」を吐き出す。
「焼き加減はレアが好みなのだぁーー!!」
ツヨシは仕上げに、飛んできた魔獣の首筋に「チョップ」を一閃。
ドォォォン!! という衝撃波と共に、魔獣は完璧に気絶し、同時に摩擦熱で表面がこんがりと黄金色に焼き上がった。
5.食費ゼロ円生活の始まり
その日の晩。
ツヨシの家では、魔獣の丸焼きパーティーが開催されていた。
「うむ……美味い。だが、これだけの量があれば一週間は持つか?」
「いえ、ツヨシ様。彼らのペースですと、あと三十分で骨になりますわね」
アニスの予言通り、神々はまるで掃除機のように肉を吸い込んでいく。
「師匠! 次の獲物はどこですか! 海の主ですか!?」
「次は……神界の宝物庫にある『黄金の穀物』を奪いに行くのが一番効率的かと」
弟子たちがどんどん「食料調達のプロ」へと変貌していく。
ツヨシは、空になったビール瓶を見つめながらため息をついた。
「平穏な暮らしがしたいだけなのに……なんで俺が、神々を引き連れて密猟まがいのことをしなきゃならないんだ……」
結局、食費を浮かすために弟子たちを働かせた結果、ツヨシの庭は「収穫した魔獣の骨」で山ができ、里の人々からは「魔獣の卸売業者」として崇められるようになるのだった。




