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異世界転生しちゃったので忍者になってみた  作者: 羽越世雌
第2章:どんどん「忍術」の定義が歪んでいく
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第33話:爆誕!忍びの里のオーバーツーリズム

1. 聖地巡礼の波


「ツヨシ先生! 大変です! 街道の向こうから、国教会の『聖徒団』が三千人ほど、旗を振ってこちらに向かっています!」


アニスが(案内板の姿から戻って)報告に来たとき、ツヨシは里の入り口で絶望した。

街道の先には、巡礼者の行列だけでなく、「神域・名物ご利益大根」と書かれた勝手な看板を立てている露天商まで現れている。


「なんでこうなった……。アニス、みんなに伝えてくれ。絶対に『変なこと』はするな。普通だ。普通を装うんだ。観光客から金を取るのも、奇跡を見せるのも禁止だぞ!」


だが、教え子たちの解釈は、ツヨシの想像の斜め上を(いつものように)音速で越えていった。


2. 「普通」の極致=究極のエンターテインメント


「(なるほど……。先生は『わざとらしさを消せ』と仰っているのだな。観光客に気づかれないレベルの、自然界に溶け込んだ神気を提供せよ、と!)」


バルカスを筆頭とする教え子たちは、里全体を「アトラクション」として再構成し始めた。


やってきた巡礼者が、里の川で喉を潤そうとする。

「おお……なんという清らかな水だ。一口飲んだだけで、長年の腰痛が消えたぞ!」


当然である。水の中に変化へんげして潜んでいた忍びたちが、巡礼者が水を飲む瞬間に、医療忍術と同等の「治癒魔力」を分子レベルで水に混ぜ込み、喉越しまで調整していたのだ。


一方、悪徳商人が里の貴重な薬草を盗もうと森に踏み込む。

「へっへっへ、この『神の草』を持ち出せば大儲けだぜ……って、あれ?」


商人が手を伸ばした瞬間、草が「ひょいっ」と横に動いた。

「気のせいか……? よいしょ、っと。……ええい、また動いた!」


草に変化していたザックは、ツヨシの「傷つけるな」という教えを忠実に守り、商人と「鬼ごっこ」を繰り広げていた。最終的に商人は、勝手に自動で開閉する(アニスが変化した)不思議な門に誘導され、気づけば里の外に放り出されていた。商人の頭には「不法投棄禁止」という丁寧な書き置き(ザックの葉っぱ)が貼られていた。


3. 忍びの隠れすぎた屋台


ツヨシが里を巡回していると、長蛇の列ができている「空き地」を見つけた。

「え、ここ、何もないよね? なんでみんな並んでるの?」


巡礼者の一人が恍惚とした表情で答える。

「何をおっしゃる! ここは『無の境地の食事処』でしょう! 注文すると、何も持っていないはずの手の中に、突然『最高に美味いおにぎり』が出現するんです!」


「は?」


見れば、空間の一部がわずかに歪んでいる。そこには『透明化(隠れ身の術)』を極めすぎた教え子たちが、全裸(装備の重なりを消すため)に透明な術をかけ、超高速でおにぎりを握り、客の手に「いつの間にか置く」という神業を繰り広げていた。


「(ツヨシ先生……見てください。私たちは『存在を消す』という忍びの極意で、接客ストレス・ゼロの飲食店を実現しました……!)」という教え子たちの誇らしげな思念が、ツヨシの脳内に直接届く。


「違う! それはただのホラーだ! みんな、服を着ろ! そして普通に店を出せ!」


4. 伝説の「里長」


結局、里は「願いが叶う、神々が隠れ住むテーマパーク」として認定されてしまった。

ツヨシが歩けば、巡礼者たちが道を開け、ひれ伏す。


「見てくれ、あの方が……全ての概念を統べる、忍びの王、ツヨシ様だ……」

「なんて『普通』なんだ! あの普通さこそ、真理に到達した者だけが放つ『究極の日常アルティメット・ルーチン』のオーラ……!」


ツヨシは、ただ、安売りしていたサンダルを履いて、夕飯の献立を考えていただけなのだが。


さらに追い打ちをかけるように、商工会の会長がツヨシに歩み寄る。

「ツヨシ殿、この里の『入域料』を金貨で払いたいという者が後を絶ちません。里の金庫が、バルカスの変化した蔵でも入り切らなくなっております!」


「……もう好きにしてくれ。ただし、その金で『忍術禁止区域』っていう公園を作ってくれ。そこだけは、普通の、ただの公園にするんだ……」


ツヨシの最後の希望。

しかし、その公園の砂場には、子供たちを怪我から守るために「クッション性の高い砂」に変化した忍びたちが、24時間体制で待機することになるのを、今のツヨシはまだ知らない。


ツヨシの平穏は、はるか彼方の地平線へと消えていった。

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