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ギルドで王城の入構許可証をもらい、そのままの足で僕は帝剣杯の会場に向かうことにした。
会場は、東広場。中央広場から真東に歩いて10分ほどのところにある。
今日は昨日よりも街の熱気が強かった。東広場に向かう人の流れもある。剣を腰に携えた、いかにも強そうな人たちも何人かいた。
僕は、その流れを追うように、東広場に歩いていった。
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会場付近に来ると、人混みの密度がぐんと上がった。人々の熱量や活気が、肌にぶつかって痛いほどだった。
係員の人が必死に大声を上げて、観客を誘導していた。僕は人混みの揺れになんとか抵抗しながら、観客席に向かった。
みな今日の出場選手や試合運びについて話していた。ぼくにはよく分からなかったのだが、人々が熱をもってこの帝剣杯に臨んでいるのだということは伝わってきた。
なんだかワクワクしてきた。おそらく、とてもレベルの高い大会なのだろう。…昨日会った青年や、今朝会ったおじさんは中々強い人だったんだな。しっかり見て、糧にしよう。
ようやく席に座ることができた。少しスタジアムから距離はあるが、立ち見の人がいることを考えれば、幸運だったということが分かる。
そして、第一戦開始のドラが鳴り響いた。
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スタジアムの上に二人、相対して登壇した。一人は、引き締まった体の青年。手に持った剣は、刀身から煙が出ていた。そしてもう一人は、同じような体型の男。剣は鞘にしまわれている。
男が鞘から剣を引き抜くと、二人が同時に駆け出した。剣同士が激しく撃ち合い、金属音が鳴り響く。
どうやら青年の刀身から出た煙は蒸気のようなものらしく、相手の男は熱さを嫌がるような仕草を見せる。
僕は息を飲んで試合を見守る。と、僕は気付いた。男が持っているなんの変哲もない剣が、徐々に赤変していることに!
…まず、昨日会ったパンクな青年が言っていたことの意味が、分かってしまった。
“そんなもん読んでも無駄やぞ”
確かに、今見ているものは、僕が知っている剣術ではなかった。何やら特殊な術?のようなものが組み込まれている。
男の剣は、さながら鍛治で打たれた鋼のように、赤く光っていた。剣を打ち合うたびに、その赤さを増しているように見える。
青年の剣から発される蒸気も、密度や量が増加しているようだった。僕はもう、この戦いから目が離せなくなっていた。
次の瞬間、赤くなり鈍く光った男の剣が爆ぜた。大きな破砕音を立てて、斬撃と共に強い衝撃波を発した。青年は大きく吹き飛び、その隙をついて男がズバッと横一閃、剣を振り抜いた。
試合は終了。青年は担架で運ばれていく。爆発的な声援が場内を包んだ。
なんだこれ!面白すぎる……どうりで人々が熱狂するわけだ!!
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その後もこのような調子で試合は進んでいった。僕は日記帳を取り出し、逐一選手の特徴をメモしていった。
黒い粒子が剣を包んで、擬似的に大きな剣にしていたり、浮遊する力で軽快にステージを飛び回ったりなど、実に多様だった。
次の試合…あっ、メインギルドであったおじさんだ!
相手は、少し背の小さな(おじさんが大きいだけかもしれないが)男だ。
おじさんはなんと、剣を持っていなかった。えぇ、どういうこと?
すると、どこかしこから、話し声が聞こえてくる。
「ついにあの“豪傑”が来たか…」
「楽しみだけど、相手が可哀想だな」
どうやらおじさんは有名な剣士らしかった。名前はガンナーというらしい。“豪傑”という二つ名持ちだ。
僕は前のめりになって、試合の行く末を見守る。そして、ドラが鳴り響いた。




