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 適当に見繕った麺屋に入る。クル麺というもので、スパイスで香り付けされた油と動物出汁等で構成されたタレを太いちぢれ麺に絡ませて食べる、いわゆる汁なし麺を食べることにした。


 感想など浮かばぬまま、空腹と過剰なる美味によるタイムスリップ現象が発生して、気付けば器が空になっていた。まるでマジックだ。


 満足感に浮かれたまま、ホテルに向かった。



  ⬜︎



 ホテルにチェックインを終え、カバンを投げ、ベッドにダイブした。ギシッと軋む音がした。


 ああ、疲れたな。窓から外を見ると、空が赤く染まっていた。そのまま視線を天井に移す。


 明日は何時に起きよう。帝剣杯は確か10時に始まるはずだ。ギルドは8時に開く。…まあ、早起きにはなるな。


 公衆浴場に行ってもいいけど…なんかそんな気力も起きない。それはまた明日かな。

 ベッドから体を起こし、風呂桶に水を貯める。机に日記帳を置き、今日のことをつらつらと書き記していく。



  ⬜︎



 日記を書き終える頃、風呂桶を見ると十分にお湯が貯まっていたので、風呂に入ることにした。


 服を脱ぎ捨て、お湯に肩まで浸かる。ザバッとお湯が溢れ出て、そのとき自分がとても贅沢なことをしているのだと、ふと思った。


「あ"ぁ"〜〜」


 疲れがお湯に溶け出していく感覚が、心地よい。思わず声が出てしまった。最高!



  ⬜︎



 寝巻きに着替え、フロントにモーニングコールを依頼する。そこから部屋に戻って、歯を磨いた。


 ふと、窓辺に行くと、王城が見えた。ちょうど全体像が見える、素敵な夜景だ。大きな城の外壁に開けられた夥しい数の窓が、星々の光のように煌めいていた。


 僕はしばしその絶景に目を奪われた後、眠気に引きずられるようにベッドに入った。そのまま部屋の灯りを消して、王都での長い1日を終えた。



  ⬜︎



 部屋の扉をノックする音で、僕は目を覚ました。モーニングコールだろう。布団を引き剥がして、起き上がる。覚束ない足取りで、僕はドアを開けた。


「お客様、おはようございます!モーニングコールに参りましたっ!」

「んん…ありがとうございます……」


 それでは!と元気よく返されたが、僕は項垂れるように会釈するのが限界だった。

 

 うぅ、眠い…がしかし、ここは頑張らなければ。特に今日は僕の運命の日だ。

 ドアを閉じて、洗面台に移る。意を決して冷水を顔面にぶちまけ、瞼をこじ開ける。


 昨日市場で買った軽食を食べ、歯を磨き、着替える。ボサボサの髪を直し、カバンに必要なものを詰める。


 現在、朝7時半。ギルドが開くのを待とう。僕はホテルを後にした。



  ⬜︎



 ギルドの建物の前にて、錠が開くのを待った。筋骨隆々のおじさんも、僕の隣でそれを待っていた。少し気まずさを感じていると、おじさんが僕に話しかけてきた。


「兄ちゃんも朝イチか。見ねえ顔だが…どっから?」

「あっ、キード村です。南部の。」

「ほお、なかなか遠くから来たんだな。ギルドに用事なんて、どうしたんだ?」

「えっと…剣聖様に会いに来ました。」


 おじさんは面食らったように目を見開いたあと、ククッと笑った。


「なかなかやるじゃねえか。…会えるといいな。」


 おじさんはその大きな分厚い手で、僕の頭をワシャッと雑に撫でた。その流れで僕は少し質問を続けた。


「すみません、もしかしたら帝剣杯出たりしますか…?」

「ああ、出るよ。えっ、まさか…」

「いやっ、僕は出ませんよ!観覧は行きます。」

「そうかい。じゃあ、応援頼むな。」


 その時、ギルドの扉が開いた。僕とおじさんはそれぞれに別れた。



  ⬜︎



 僕は昨日と同様、受付に行く。名前と用件を伝えると、昨日と同じ人が来てくれた。


「あの…」

「はいっ、昨日確認致しましたところ、剣聖様直々に許可をいただくことができました!日程をお伝えしますね。」


 僕はホッと胸を撫で下ろした。ここで僕の旅が終わらなくてよかった。本当に。


 剣聖は帝剣杯の観覧にいらっしゃるようで、その後の午後4時から1時間、時間を作ってくださるようだった。


 僕はお姉さんに感謝を伝え、ギルドを出た。思わず笑みがこぼれ、ガッツポーズをした。



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