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 時は江戸時代、それも戦国の時代が終焉を迎えた直後のこと。


 北堂夏宗、この名前は国土の隅まで知れ渡っていた。それは主に、彼の戦果によるものだった。


 彼の名は実は幾つかある。伝え聞くものには、「戦国最強」、「鬼神」……

 そして実際に彼を戦場にて目撃し、幸運にも生き残ったものは口を揃えてこう形容した。



 「悪夢」と。



  ⬜︎



「敵襲〜〜〜!!!敵襲〜〜〜!!!」


 深夜、けたたましく鳴る鐘の音と敵襲警報により目を覚ました。まったく、煩いな。人の睡眠を邪魔しよって。


「ほっ、北堂様!敵襲で御座います!!」

「煩いのう…貴様らで何とかならぬのか?ワシを起こすまでのことか?」


 すみません、ですが!!と部下は鬼の形相で叫ぶ。ものすごい剣幕だ。まったく…


「分かった分かった。甲冑と刀の用意を頼む。」


 部下に装備の着付けを手伝ってもらう。最後に、兜の緒を締めた。


「行くか。」


 この日の深夜の奇襲は、一斉に四方から押し寄せた敵軍によって包囲されたことから始まった。鬱陶しい弓矢の攻撃、そして幾人かは城壁を乗り越えて侵入を始めているらしい。

 なるほど、ワシを起こすまではあるな。


「敵軍の兵士の数は。大体で良い。」

「少なく見積もって、1万はいるかと。」


 笑いが込み上げてくる。堪えきれない笑いが。


「バカじゃのう。今夜、1万の兵士をドブに捨てることになるぞ。どこの耄碌が仕掛けたか知らんがな。」


 数分後、城壁の裏門から夏宗は単騎で出陣。そして半刻も経たないうちに南方勢力は壊滅した。


 城壁の外は、大規模な植樹計画により、森林となっている。その地形を最大限に活かしつつ、鬼神の如き膂力と速さにより、一夜にして全軍を壊滅に追いやった。

 


  ⬜︎



 骸と血溜まりの林を、一人の兵士が駆けていた。


(おい…こっちは南方三千の兵だぞ…クッ、どうなってる!夏宗将、やはり……っ。)


 木々が、揺れる。


「まだいたのか。」

「…ひっ」


 俺は、悪夢を見ているんだ…きっと…この月夜に……

 

 視界が黒ずんだ紅に染まった。



  ⬜︎



 白城の奇襲、のちにそう呼ばれたこの夜は、北堂軍の制圧をもって終結した。首謀者は隣藩の武将であり、次の日、処刑された。


 この夜、そしてすぐ後に待ち受ける統一合戦が、北堂の名を世に知らしめる契機となった。


 だが、天下統一後の黒々とした権力闘争が発生。名実ともに高く、力のあった彼はそれに巻き込まれていく。その末、裏切りの臣下による毒殺で、その一生を終えた。


 呪いを恐れた各国の権力者は、彼をさらし首にすることは出来なかった。最終的に、彼を慕った部下たちによって、武将夏宗は丁重に葬られた。



  ⬜︎



 ワシは…死んだはずでは…


 どこだろう、とにかく眩しい場所にいる。視界一面、どこまでも白い。


 これが浄土ってやつか…?ワシは特に仏教信者という訳ではないのだが…


 気配…!


「夏宗殿。大変お気の毒ですが、あなたは死んでしまいました。」


 女子(おなご)…神秘的な雰囲気と、全体的に白っぽい装い…何者だ。


「私は死者の転生を担当する女神でございます。」

「ふむ。」

「赤子からやり直すか、もしくはあなた様の全盛期状態で別世界に転生するか、お選びいただけます。」

「まあ、後者だろうが…」


 仏教徒の考えはあながち間違っていなかったのだな。少しは考えを改めるのもありかも知れぬな。


「生きとし生けるもの、みな転生するのか?」

「いいえ、特例を満たした人物だけが転生を許されます。」

「ふむ…」


 女神とやらは他にも軽い説明を加える。別世界のこと、別世界における言語のこと…


「では、心の準備は宜しいですか?」

「ああ、構わん。」


 視界が眩く輝いた。少しだけ、心地よかった。



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