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 ナツムネさんに師事し、修行を始めてから5日が経過した。1日も休まずに日の出から日没まで剣を振り続ける。筋肉痛で眠りが浅くなってきた気もするが、強くなるためなら…


「おい、坊主!起きろ!!」

「んん…」

「起きろ!!ナス太郎!!」


 とまあこんな具合で叩き起こされ、朝が始まる。朝ごはんは米と生卵だ。無心で流し込む。これで昼まで頑張るのだ。


 素早く着替えて、冷水で顔を洗う。それから、歯を磨いて、軽く準備運動。木刀を手に持ち、庭に出る。

 この一連も少しだけ慣れてきた。木刀は先日ナツムネさんに作ってもらった、少し重い特注品だ。


「はい、じゃあ今日も。」

「正面、横薙ぎ、袈裟、逆袈裟、守護…ですね。」

「それぞれ200回、昼までに回せ。」

「はい!」


 まず、刀を頭上に。下半身と体幹、伸筋を意識しつつ、それ以外を脱力して、振り下ろす。次に、刀を横に。足の入れ替えと同時に体軸を旋回させながら刀を振り抜く。そのまま刀の切先を持ち上げる。振るよりは「引き切る」を意識し、体軸を変えないまま肩肘を引くことで斜め下に刀を振り下ろす。膝を沈め、切先を上に向ける。足の入れ替えと体軸の連動を強く意識しながら、斜め上に刀を振り抜く。最後に、一歩後ろに足を引き、前傾のまま刀を自分の体の前へ。


 意識することが多い…一つでもミスれば棒叩きだ。まだ全然慣れないし、出来ない。でも、道は明確に見える。ひたすら歩いていけばいい。


「足!遅れてる!刀上がりきってねえぞ!」

「ふっ…はい!」


 ひたすらその苦痛の円転の中で、昼が来ることを切に願った。



  ⬜︎



 日が昇り、暑くなってきた。汗が頰を滴り、地面に落ちる。手汗もひどい。僕はすでに上着を脱ぎ捨てていた。


「腰が抜けてる!拍子が崩れてるぞ!!」

「はい!ふっ…」


 あっ…木刀がすっぽ抜けた。カランカランと乾いた音を立てて地面に転がる。手がビリビリ痺れて、うまく力が入らなくなっていることに今になって気付いた。


「バカモノ!さっさと拾え!!」

「…すみませんっ」


 拾おうと小走りで移動しようとすると、カクンッと膝が折れてしまった。全く力が入らない。立てない。


「はぁ…一回休憩だな。休んどけ。頃合いを見て再開する。」

「……っ」


 なんでこんなに自分は弱いんだ、という悔しさももちろん強かったが、それ以上に焦りが大きかった。

 こんなに体が言うことを聞かないことは初めての経験だからだ。震えが酷く、痛みもある。そして思うように力が入らない。このままじゃ…



  ⬜︎



 僕が縁側に座って水を飲んでいると、20分ほどしてナツムネさんが僕を呼びに来た。


「テル、行けるな。」

「行けます!」

「よし、再開だ。」


 僕は腰を上げた。体の操作は比較的元に戻っていた。軽く屈伸をする。まだ少しだけ震えは残るが、充分動ける。


 力を抜き、純粋に軸だけを意識する。まだそれを完全な形で行うのは難しいが、筋肉に頼る動きは本質的ではないと教えてもらった。いずれは出来るようになりたい。


 五つの基礎動作。正面、横薙ぎ、袈裟、逆袈裟、守護を、日が沈むまで。自発的に意識できるところはとことん研ぎ澄ましながら、ナツムネさんに修正してもらう。


「速いのと雑なのは全く違うからな。とにかく質を高めろ。速さは後々ついてくる。」


 質を意識した。体軸の純粋な抽出を。


 すると何故だろう。午前中の五つの基礎動作各200回にかかった時間は4時間と少し。

 だが、午前より格段に疲れているはずの午後稽古での同様ドリルにかかった時間は、4時間をゆうに切っていた。


 日没と同時に、僕は膝から崩れ落ちた。各200回のドリルが巻きで終わってしまったために、追加で各100回を課されてしまったのだ。


 今、ようやく完了した。空が真紅に染まっていた。



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