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リンケージ学院。僕も、僕ですらも聞いたことがある。国内トップの、戦士学校だ。それは世界規模で見ても然り。入学できただけでも、村の栄誉として語り継がれるぐらいの…
お父さんが昔、聞かせてくれたことがあったな。卒業した者はもれなくその後の一生が確約されてると。
「えっと…入学、でなく首席入学…であってますよね?」
「ああ、もちろん。」
なるほど。なるほどなるほど。流石に厳しい、か?いや?諦めちゃあ、いかんだろう。僕は、剣聖の目を見据えた。
「分かりました。僕が18歳になる二年後、楽しみにしておいてください。約束、忘れないでくださいね。」
もちろんだ。ワクワクして待ってるよ。その言葉で、僕と彼の対話が終わった。僕は第三客間を後にした。扉が閉まる音が、少しうるさかった。
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ホテルに戻り、僕は顔を枕に埋めた。くっそぉ…そりゃそんな簡単には行かないかあ…くっそぉぉ……
おそらく枕は、涙で滲んでいただろう。嗚咽を、枕が受け止めてくれていた。自分が今、どれだけ惨めな顔をしているかなんて、知りたくもなかった。
しばらくして、少し切り替えた。まずはやってみなきゃ分かんないじゃないか!きっとそうだ!それに、めちゃくちゃ腹が減った。
どこか美味しい店に行こう。揚げ物が食べたい。
明日の朝、ホテルのチェックアウトをする。荷造りを少し進めてから、ホテルを出た。
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ご飯屋探しのために、王都を散策する。これが、王都で過ごす最後の夜だ。点々と灯る光が、何かこう僕を慰めているみたいで、少しだけ沁みた。
いい店があった。定食屋だ。ドアを開けると、カランカランと乾いた鈴の音が鳴った。いい匂いが、鼻腔を掠めた。
「いらっしゃいませ〜、おひとり様ですか?」
「はい、一人です。」
「ではカウンター席にご案内しま〜す。」
カウンターに座ると、メニューをパラパラと捲る。これもいいなぁ、あでもこれも美味しそう…
と、不意に隣の人に話しかけられた。
「よう、兄ちゃん。朝ぶりだな。」
「えっ、ガンナーさん?!」
やけに大きい人が隣にいると思ったら、帝剣杯で大活躍を見せたガンナーさんだった。
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「ここのオススメはな、フォブカツ定食だ。若干値は張るが、美味いぞ。」
フォブというのは北部地方原産の哺乳類で、芳醇な肉汁と引き締まった肉が特徴だ。高級品として知られている。それをカツにするなんて、美味しいに違いない。
「じゃあ、せっかくなのでそれにしますね。あっ、帝剣杯見ましたよ!ガンナーさん凄かったです!!」
「いやあ衰えたよ。まぁ、老体をこき使って頑張った方だとは思うがな。で、剣聖様には会えたのか?」
厨房の方では、ジュワーといい音が鳴っていた。僕の頼んだ定食が調理中なのだろう。涎が出てくる。
「はい、会えました!でも…」
僕はポツリポツリと先程の出来事を語った。
「なるほどなぁ、リンケージ首席か…なかなか酷なことを言うな。」
「誰か僕に剣を教えてくれる人がいれば良いんですが…」
「悪ぃけど、俺が教えてやることはできねえ。俺の剣は古いんだ。二年で首席はおろか入学させられるかも怪しい。」
「そうですか…まず自分で頑張ってみますね!」
定食が運ばれてきた。あ、これ絶対うまいやつだ。
…そして案の定、気付いたら器がキレイになっていた。タイムスリップをしてしまった。
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ガンナーさんと別れ、ホテルに戻る。少し風が冷たかった。僕は冷えた空気を大きく吸って、それから夜空を見上げた。




