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僕は、時間通り王城の正門前についた。門番に入構許可証を提示する。
「王城に入りたいのですが…」
「入構許可証は…はい、承りました。少々お待ちください。ただいま役員が参りますので。」
そうして少し間が空き、役員の方が出迎えてくれた。王城内を案内してもらえるようだ。
改めて、とてつもない大きさの建物だ。基本的には白く塗られたレンガの壁に、円錐状の屋根や装飾が青く統一されている。そして所々に金色の意匠が施された、絢爛でありながらも品のある出立だと感じた。
4人がかりで、扉を開ける。重厚な音を立てて開いたその扉は、1メートルほどの厚さがあった。いちいち規模がとんでもねえ。
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王城構内を歩いていく。第三客間というところに通されるらしい。城の内観は、尖頭アーチ状の高い天井と、両脇にはステンドグラス、7メートルほどの間隔で設えられたいくつかのシャンデリアランプなど、もはや背筋の冷えるような華やかさだった。
さながら見学ツアーのように、所々見どころのようなものを紹介してもらいつつ、気付けば第三客間の扉の前にいた。
「お客様、こちらに剣聖レグルス様がいらっしゃられます。私はこれで失礼いたします。」
「あっ、はい。ありがとうございます。」
この扉の向こうに、剣聖が…
僕は慎重に、扉をノックした。それから、ゆっくりと扉を開けた。ヤバい、緊張する…
「久しいね、少年。」
目が、合ってしまった。
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「まあ、そこ座りなよ。肩の力抜いてさ。」
「は、はい…あっ、テル=アルヴァといいます!」
剣聖こと、レグルス=ケイン=サイガは、今僕の目の前に座っている。本を読んで待っていたようだ。
「帝剣杯は見に行った?」
「はい!とっても楽しかったです!僕、メモとかたくさんして…」
「おお、見せてよ。」
改めて見ると、レグルスさんは結構若かった。オーラはあるが、とても接しやすい。少し緊張がほぐれてきた。
先ほどの帝剣杯について、軽く話す。
「朝、ガンナーさんに偶然会って。応援してたんですけどね…」
「セネル君、めちゃくちゃ強かったよね。あれは今後が楽しみだなぁ。ガンナーさんも、もちろん強いんだけど…」
あ、それで。そうレグルスさんは切り出す。
「こないだはそそくさと帰っちゃって悪かったね。転送契約の関係でさ…」
「あっ、予約魔法…?」
「そうそう!よく知ってるね。決められた時間に術式を入力しないと、魔法が無効化しちゃうからさ…」
そして、レグルスさんはその透き通った碧眼を、僕に向けた。
「今日の要件は?」
僕の胸が、ドクンと脈打つ。言えるのか…いや、言うんだ、テル…!
「弟子入り、させてください!僕も強くなりたくて…!」
僕は深々と頭を下げ、固く目を閉じた。怖い怖い怖い…
「んー、いいよ。」
「え?」
え?聞き間違いですか?
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剣聖は落ち着いて、と続けた。
「まず、承諾した理由だけど。あの大厄災の渦中で、君だけが状況を見ていたよね。そして、いち早く僕に会いにきてくれた。」
僕は何も言えなかった。半分パニックのようになっていたからだ。剣聖レグルスは、さらに続ける。
「そして今日もはるばる、遠くから来てくれたよね。断るわけにはいかないよ。君のような人はかつていなかった。」
なかば過呼吸のようになっていた僕に、でもね、と続ける。
「そりゃ、条件はあるよ?」
「条、件……」
「いいかい?僕だってあいにく、それなりに忙しいんだ。君には僕の弟子として相応しい人間になってもらわなきゃ困る。」
つまり、ある程度の実力をつけてきてってことだよ、と補足を加えた。
「リンケージ学院…この国のトップの学校に、首席入学すること。それが、僕が君に課す条件だ。」




