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二人が登壇したとき、場内は静まり返った。行く末を、黙って見届けなければならないと、そんな雰囲気が色濃く漂っていた。
ガンナーさんが深く息を吐く。体の内側から光が灯り、それが紅さを帯びて、溢れ出てくる。
これまでよりも、光が強いように感じる。彼の目すらも、煌々と光っていた。
まるで全身が燃えているような、輝きのみならぬ熱さがあった。
グッと膝を沈め、柄を持った拳を高く振りかぶる。見惚れるほどに洗練されたその構えは、えも言われぬ威圧感を放っていた。
バシュッ!っと音を立てて、光の大剣が出現した。
対するセネルは、ガンナーさんを睨みつけたまま、動かない。何か違和感を感じるが…目を凝らしてもよく分からなかった。
「いくぞォッ!」
ガンナーさんが、叫ぶ。
紅の閃光が帯となって、ステージを縦断する。
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ガンナーさんの強烈な加速による一閃は、その巻き上げられた粉塵により、一瞬靄がかかる。
僕は必死に状況を確認するためにステージに目を凝らす。セネルは……
…倒れて、ない。なぜ?
あんなにも胴体が深々と両断されているのに…
そして、その大傷は、一瞬にして閉じた。僕は見た。銀色の糸のようなものが複数本、肌から生え、ヌルヌルと動いて傷口を縫合したのを。
ガンナーさんは瞬時に距離を取る。
「貴様…」
「いやぁ、流石に痛いものは痛いなあ。」
ガンナーさんの一撃を躱せる者はそう居ないという。予備動作がどれだけ大振りでも、歴戦の実力と、その圧倒的な能力で、確実に敵を屠ってきた。
今回の一撃も、正確無比。確実に命を刈り取る斬撃だった。だが、セネルは倒れなかった。
銀色の糸…あれはなんだ?金属の繊維を自在に操る術…だとすれば、レフルに喰らわせたカウンター攻撃も説明がつく。繊維内に電撃を蓄電し、放出した…?
そして、今回のように斬創を縫合して処置することも出来る…
ガンナーさんが再び、構えに入る。そして、紅く輝き……
「悪いけど、もう見切ったよ。」
光の大剣がセネルに触れる、その直前だった。
セネルの剣が、刃元から無数の銀線を噴き出す。それらは瞬時に伸びきり、ガンナーさんの腹部を貫いた。
ガンナーさんは大量に吐血し、片膝から崩れ落ちる。同時に、光の大剣は形を失い、崩壊してしまった。
場内には、騒然とした空気に染まった。
⬜︎
ガンナーさんが担架に乗せられ、運ばれる。そのまま、授賞式に入り、なんと初参加の無名新人、セネルが優勝を飾った。
僕は、ふと気になったことを隣のおじさんに聞いた。
「ガンナーさんとか、大怪我を負った人って大丈夫なんですか?この大会で人が亡くなることってあるんですか?」
「無いね。あのステージには治癒契約という、いわゆる予約魔法が刻まれてるんだ。あのステージ上で怪我した人は、決められた手順を踏むことで怪我が完治するようになってる。」
「へ、へえ、なるほど。」
いくつか全く知らない情報が流れ込んできたが、気にしない素振りをした。
「しかし驚いたな。あのセネルっていう兄ちゃん、18歳だってよ。」
「じゅ、18!?」
僕と二つ三つしか変わらないじゃないか。えぇ…
僕は帝剣杯観覧を通して、自分がいかに弱いかを実感した。…ただ、今日はこれからビッグイベントがあるじゃないか。
気持ちを切り替えよう。もう直ぐ、約束の時間だ。
日が、少し傾いてきた頃だった。




