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亡き者と通じる加護の巫女  作者: あお
番外編 Sideエグモント

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43 リーズへの想い

 リーズが17歳になった。

 もう、子供だなんていえない年齢だ。学校も卒業し、現在は巫女としての活動が主たる仕事となっている。僕もそれに協力し、スパイのような役割を果たすことで、リーズとワンセットで国にとって必要な人材だと思われている。僕の存在価値が客観的にも認められて正直嬉しい。


 社交の場があると、リーズはジェラルドのパートナーとしてついていくことも多かったが、あくまでただのパートナーのようで、リーズ本人は不本意極まりないといつも喚いていた。こういった感覚でいてくれる限り、ジェラルドとどうこうなるなんて考えにくい。


 僕は、ずっとリーズとジェラルドが一緒になれればと思っていたけれど、リーズのことを大切に扱ってくれない様子をずっと見てきたせいでそういう感覚がすっかりなくなってしまった。それよりも、僕にはリーズが必要だし、リーズも僕が必要だろう。お互いが必要としている者同士、一緒にいるのが一番ではないだろうか。






 そんな折。リーズが母から呼び出された。いつものお茶会かと思ったら訳が違った。母が、僕への思いを断ち切るというようなことをリーズに伝えた。そして、僕へ次の生へ向かっていけと。リーズを解放してやってくれと言ってきた。

 今の僕は、リーズを縛っているように思われていたのだろうか。確かにリーズは、巫女としての実績は着実にステップアップしていっているけれども、僕という存在がいるばかりに婚約すら未だに誰とも結んでいない。けれどもこれは僕だけではなく、ジェラルドのせいでもあるのではないか?ジェラルドがリーズを囲っていることなど周囲からみたらあからさまだろう?

 僕の気持ちについては、いつか母には納得してもらわなければならないし、僕も少しやるべきことを試してみるべきだと思ったので、ひとまずはリーズに母の言うことを肯定してもらうように伝えた。母にはリーズとより深く繋がるという結果を出してからまた正式に伝えれば良い。しかし、それを母に伝えることは頑なにリーズに拒否された。リーズは、母からの申し出を素直に受け止められなかったようで、結局考えさせてくれといってその場を後にした。そんなリーズの言動が、余計に僕の気持ちを高めてくれた。






 その夜。

 ずっと考えていたこと。ひとつの賭けに出ることにした。このまま本当に次の生に向かっていくよりも、リーズを抱けるか試してみたい。僕は、リーズのことが好きだし、リーズに対してそういった感情も湧いている。リーズには触れることが出来るし、もしかしたら気持ちが昂ぶれば出来るかもしれない。そうすることでリーズの巫女の力が定着すれば、万事解決なのではないだろうか。


 リーズを言葉巧みに誘導した気はしている。けれども、リーズとのキスに僕はどんどんのめり込みそうになる。リーズの蕩けるような表情が気持ちを逸らせる。リーズの肌に触れていけば、もしかすれば・・・


彼女のこういう姿を見るのは僕だけであって欲しい。そう思いながら抱き寄せていくが、僕の体は反応しなかった。

 やはり駄目なのだろうか。


 不安が襲ったが、1度や2度の失敗で諦められない。僕はそれ以降、出来る限りリーズと夜を共にした。そしてその度にリーズが疲れて寝てしまうまで頑張ったのだが、どうにも最後まで出来る気配はなかった。






 300年前に締結した戦争の、戦没者追悼式がバシュラール領にある戦地でもあった平原で行われることになった。大規模に行われることとなったのはリーズの存在も大きかった。現の死者とつながることが出来るリーズに、戦争時から残る現の死者とのやり取りを通して当時の敵国である隣国と周辺諸国との友好関係を世界にアピールする目的でもあった。

 それもあり、リーズは事前調査も兼ねてバシュラール領に戻り、先に多くの戦没者である現の死者たちと向き合っていた。先にこうして向き合い、その調査内容を報告しておくことで、外国の要人たちもリーズの力が本物だと認識してくれることだろう。実際にリーズは多くの現の死者をリスト化し、先に解決できるものは解決していた。けれども隣国の元兵士達の一部では現在の隣国の状況を憂う者もおり、そのものたちにどう説得すべきかをリーズは悩んでいた。隣国への介入は簡単に決められるものではない。経済的支援にしても人的・物的支援にしてもだ。


 どうすべきだろうと僕は僕でリーズの部屋で考えていたら、リーズが唇を噛み締めながら部屋に戻ってきた。


「え、、え、、、エグモント様・・・」

『どうしたんだい?リーズ?』


 僕はそっと近寄り、リーズの頭を撫でようと手を伸ばしたら、リーズの身体を手がすり抜けた。


『あれ?』

「ブレスレットが、、、ブレスレットを、ベアトリスに渡すことになってしまいました・・・」


 小さな声で、リーズが呟く。ブレスレットをベアトリスに渡す。つまり、僕と触れ合うことが出来なくなるということだった。

 それは・・・僕とリーズが結ばれる可能性を完全に排除されたということと同義だった。リーズの話によると、ジェラルドの提案で、外交のためにベアトリスの力を強める必要があり、ブレスレットを渡す流れになったとのこと。確かにリーズは、ブレスレットがなくとも現の死者を見ることも出来れば話すことも出来る。ただその輪郭はおぼろげになり、触れることが出来なくなると以前からリーズは言っていた。ブレスレットを外した今、やはりそういうふうにしか僕を認識できなくなってしまったそうだった。


 ジェラルドの提案は確かに間違いではないかもしれない。経済支援や人的・物的支援などはそれを議会に通すのに時間が掛かるが、情報ならば。しかも、これまで門外不出だった巫女の力によるものだ。今回のコンセプトである未来に向けた外交手段としてはうってつけだったかもしれない。

 しかし、それによってリーズと僕との交流手段が絶たれた。いや、話したりは出来るのだから、ジェラルドが思っている交流という意味では以前と何ら変わらないだろう。僕たちの秘密の交流が出来なくなるだけ。ジェラルドからしたら大した悪気ではないのかもしれない。けれど、僕やリーズにとっては大問題だった。






 なんとかブレスレットを取り返せるように外交手段を考えていたけれども、いい案が思いつかなかった。なにより当日まで日がなさすぎる。僕はラオネルの石碑に何かヒントがないかと思い、足繁く石碑の辺りに行ってみていた。

 じっと石碑の文を眺めているけれども、いい案がなかなか思いつかない。良い外交手段はなにかないだろうか・・・と考えていた時、強い風が吹いた。静かな森がガサガサっと音がして、周囲の草花が頭を揺らす。

 石碑の回りは、10~30センチメートルほどの草花が生い茂っているのだが、その草花がフワッと揺れた。その隙間から見えたのは、見覚えのある石。5色の石が並んで埋め込まれていた。

 どうしてこの石碑のこんな目立たないところにこの石が埋め込まれているのか。そしてこれはなんだったか・・・記憶を辿ってみると、その石があのブレスレットの内側に埋め込まれている石だと気付くのにさほど時間はかからなかった。

 もしかすると、あのブレスレットの力はこの石のおかげではないだろうか。シャルル・マイヤールの謎のおまじないなどではなく、石の力だったのだと考えれば納得ができる。

 僕はこの石を調べることにした。この時、現の死者としてすぐに思うところに移動できる能力があってよかったと改めて実感した。王都の宝石屋をしらみ潰しに探す事が出来たからだ。短時間で国中の宝石屋を回ることが出来た。

 ・・・出来たのだが、見つからなかった。近隣の国にまで探しに行ったが分からなかった。それらしき石は5つのうち3つほどは確認できたが、残りの2つはどうにも見つからない。これはどうしたら良いというのだろう。


 散々悩んだが、まずはこの石が本当に巫女の力を増幅するものなのかを確認しなければならない。ひとまずリーズに石碑に触れてもらいながら、僕への認識が変わるのかを確認してもらおう。


 そうして、戦没者追悼式が始まる。



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