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我が親友へ捧げる。ホロライブの愛  作者: リベンジャー
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第十三話 そうであって欲しかった夢

今日は本当に疲れた。

作業に、ではなく、あの子、フレアを皆の前で紹介する事に凄く緊張し心にくるものがあったからだ。


今まで隠してきた事であったし、極力知っている者には協力もしてもらっていた。何よりあの子の願いでもあったから。


それをフレアは今日皆の前で解放した。その行動が多くのエルフ達の支えとなるだろうが、きっと本人はまだ、あまり実感はないはずだ。


ともあれ、皆が批判的ではなかった事は全然予想できていたが、安心する所ではあったし、良いタイミングで興味を持ってくれた子供達がフレアを連れていってくれたのは本当に助かった。


だけど、それをしたところで何か変化があるのかと言われれば無いと答える。

今日フレアが示した覚悟はあくまでこれからの運命を辿る覚悟であるからだ。


今日やっとフレアは初めてスタートラインに立てた。

もし、終わりと言うゴールが短い短距離走であったとしてもワシだけはあの子の隣に寄り添い続けよう。

それがワシの願いなのだから。


▪▪▪▪▪▪▪▪▪▪。


「......はっ。」


ワシは自室の机で寝落ちしていることに気がつき、体をムクッと起こす。

カチカチと動く時計の短い針は夜中の二時をさしていて、寝落ちしてどれほどの時間がたっていたのかをワシに伝えていた。


「いかんいかん。これじゃとフレアに怒られてしまう。」


自分の愚かさに笑いながら頭を抑えた。窓の外から差し込むのは、木々の間から垣間見える月の明かり。


どうやら今日はとても月が綺麗らしい。

こんな月が輝く日がいつまでも続いてくれるのならどれほど幸せなことか。

それが現実だとすれば。

どれほど幸せだっただろうか。


(明日も少し忙しい。早く寝ないと動けんくて敵わんからのぉ。)


名残惜しそうに月から目線を離したビルズが、窓のカーテンで月の光を遮ろうとしたその時。


『ガチャ』


と、自室の扉を開ける音が耳を震わせた。

ノックの無い開閉に胸を少し跳ねさせて振り向いた先にいたのはワシが昔から大切に育ててきた金色の髪と赤色の目を持った愛しい孫だった。


「なんじゃフレアか。驚かせんでおくれ。どうしたんじゃ?こんな夜更けに。」


「...。」


「フレア...?」


何も言わないフレアにワシは首を傾げた。何か言いにくいことでもあるのだろうか。

それとも他に何かあるのか。


「ほれ、ばあちゃんに言ってみな。」


「うふふ。」


「フレア?」


「ふふふ。あはは。」


フレアは何がおかしいのか突然その場で周りそのヒラヒラのスカートを浮かせながら笑い始めた。


「こ、これフレア。何か話したい事があるのじゃ...ない...か...?」


ワシは月光に照らされるフレアの姿に目を疑った。絶句して、唖然だった。


「そんな...嘘じゃ...。フレア。」


「あはは!バァバ!」


「!!」


目の前のフレアはどんどん幼くなっていき、真っ白なワンピースがよく似合う幼児の姿でビルズをそう呼んだ。


「あぁ、フレア、フレアぁ。」


ビルズの目尻には大きな水滴が溜まっていき流れ落ちていく。

月光が白いワンピースを更に光沢のごとく輝かせていた。


「あはは!」


麦わら帽子をわんぱくにギュット深く被ったフレアは子供さながらの陽気さを満面に出して、涙を流しながら手を伸ばすビルズに手を振った。


「フ、フレア!」


「バァバ!」


「こ、これ!待ちなさい!」


「あはは!あはは!」


フレアはビルズが呼ぶ声をどうでもいいと言うようにその甲高い声を上げて外の闇へ飛び出した。

キラキラと光るフレアの服をビルズは慌てて外へ飛び出して追いかけた。


「バァバ!」


追いかけているのを確かめるように振り返ったフレアに止まる気配はない。むしろ、追いかけてきてくれているのを笑って、また走り出す。


「フレアぁ!ふふ。待ちなさい!」


村を包む森の中は暗闇で、お世辞にも明るい世界だとは言えないだろう。

だが、ビルズは一人、この世界で最も光輝く存在を月光を反射する雫を落としながら昔を懐かしむように、いや今を楽しむかの様にその存在を追いかける。


どんなにこの時を待っただろうか。

どんなにこの時を愛おしく思っただろうか。

あの子が呪いなんて関係なく笑って、泣いて、喜んで、憂いて、悲しんで、そして、また笑う。


ただの女の子を誰にも邪魔されず、ただの運命を誰にも期待されない、そんな普通を。


ワシはこうやってずっとあの子と一緒にいられるだけでいい。

それ以上は望まない。だからもうあの子を巻き込まないでくれ。

あの子の進む道をグチャグチャにしないでくれ。


「あはは!バァバこっち!!」


「はぁ、はぁ。はい、はい。おばあちゃんはフレアみたいに元気じゃないんじゃからちょっと待っておくれ。」


楽しかった。

嬉しかった。

もしこれが夢であるのならワシはずっと時間が進まないこの世界の中で生きていきたい。


時間が進まない。

即ちあの子に幸福は無いとも言える。だけど、それよりもあの子の今後の不幸を考えればどうでもよかった。


「バァバ!こっちこっち!」


「ふ、フレア!森の外はダメじゃ!危険が一杯で面白い事などないぞ!?」


「やだぁ!いくんやぁ!」


「ダメじゃ!ダメじゃ!おばあちゃんだけじゃとても―」


(いや、これはきっと夢じゃ。夢の中でもあの子を縛る事なんてしなくてもいいじゃないか。)


「分かった行こう。」


「うん!」


そして、一人の老婆は森の外を少女と一緒に出ていった。

それが悪夢だとも知らずに。

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