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我が親友へ捧げる。ホロライブの愛  作者: リベンジャー
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第十一話 示す光

その日、村の皆はどよめいていた。

鎮魂の儀式から一週間後の今。時計は無いが、村を覆う木々の間からこぼれる日の光は丁度私たちの真上に昇っていた。


そんな快晴の中、村人達は村長であるビルズによって、村の中心にある広場に呼び出されていた。


何があるのだろうと話す者達とそんな事どうでもいいと元気よく足り回る子供達。

それもそのはずビルズは今日皆に集まってもらった理由をしっかりと説明していなかった。


それを知っているのは村長であるビルズと私と、そしてあとはもう一人だけだった。


遅れるように広場に姿を現したおばあちゃんはゆっくりと歩きながら皆の前に出た。


「まず始めに今日来てもらった事を感謝する。

今日皆に集まってもらったのは、先週この村が襲われた時に壊されてしまった砦を直してもらいたいからじゃ。」


おばあちゃんの説明になるほどと顔を合わせあう人や中には分かっていたのか既に工具らしき物を持っている人もちらほら見えた。


「奴等がいつ襲ってくるかも分からない以上、放っておくのは悪手だと判断しての今日じゃ。」


あの時聞こえた爆発に近しい音は、狂ったエルフ達による魔法が砦を崩壊させた音だと言う。


「犠牲となった者達の為にも我らは耐えねばならん。絶対に黒龍の思惑通りになってはならん!皆で砦を築き、光がさすその日まで耐えるのじゃ!」


おばあちゃんの声が大きく空に響き、その声に続いて皆の声が空に轟いた。

だが、それで終わりではない。

なんだったら今から始まるイベントこそが今日皆に集まってもらった最もな理由である。

その光をさすかもしれない英雄の。


「そこでじゃ!皆に改めて紹介したい者がいる!」


私の影に隠れる様にフードを被った一人のエルフは自分の出番だと悟ると更に縮こまってしまう。


「...そろそろだよ。」


「わ、分かっとるけどぉ...。大丈夫かなぁ?」


実のところ昨日の夜からフレアはこんな調子である。誰よりも淡々とクールでろうとするエルフも緊張はする。それを己で物語っているようだった。


「さぁおいで。」


おばあちゃんに手で呼ばれたフレアの体が小さく跳ねてフードを抑えながらおばあちゃんの元へ歩いていく。


その姿を見た時から何人かのエルフ達がまさか、とざわめき、それが伝染するように皆もコソコソとし始めた。

変な緊張感が張りつめて、こっちまで少し鼓動が早くなる。


(大丈夫だよ。フレア。)


その言葉が伝わったのかは知らないけど、胸の辺りに手を当てて深呼吸した彼女は深く被っていたフードを捲り上げて金色の髪の毛を風に踊らせた。


「フレアさん...。」


一人の老人がそう言った。


「フレアちゃんだ...。」


一人の男性がそう呟いた。


「「「「フレア?」」」」


そして、子供達が首を45度に傾けた。


知らない訳ではないが、ここにいる大半の者達が顔くらいは見たことがある程度にしか少女を知らなかった。

だが、多くの男達は少女に涙した。

皆のいる前で堂々と姿を出して、更に顔をさらけ出すと言う行動が何を表しているのかを正しく理解していたからだ。


「村長。よろしいのですかな?」


一人の老人が杖を付いておばあちゃんに問うと静かにうなずいて答えた。


「これはフレア自身が考えて出した答え。いや覚悟とも言える。」


その答えに膝を付いた老人は両手を握りしめ神様に祈りを捧げるように涙を落とした。


「フレアさん。いや、フレア様。今まで村を救っていただきありがとうございました。ああ、この一言を皆の前で言うことをどれほど待っていたことか...!」


おばあちゃん曰く、フレアは自分の運命を受け入れる代わりに存在を否定して欲しかったようだ。

フレアの母親だけでなく、今までの白縫の後継者は王族制度が無くなったその後も『様』付けが当たり前であり、神様の様に扱うのは伝統的なことであったが、それをフレアは拒んだ。


本人曰くそうすれば使命を全うしなければいけないと自分自身で追い詰めながらも周りが否定してくれているように感じる事が出来たからと言った。


それこそがフレアが出来る唯一のワガママと悪あがきだった。

それを承知したのは狂ってしまった同胞を一緒に戦う男達と重要な役割を担っているエルフの老人達。


だから誰もフレアの事を様とは言わず、深くも関わらず、その態度を世間体に浸透させて、見事に『ステルス』を作り上げ、ただ一人の少女となった。


それを解き放つと言うことはフレアは、己の運命を受け入れるのではなく戦い続ける事をその身で皆に伝えていた。

それがどれほどの覚悟なのかを共有出来る者は残念ながらいない。


この苦しみと悲しみを理解出来るのはその運命に支配された者達にのみ。即ち『白縫』の系譜にしか与えられない神の理不尽なのだ。

だが、どの時代だってその理不尽を、不条理を理解しようと勤しむ者達こそが彼ら彼女らを支えてきた。


老人から始まり、若くなっていく世代のエルフ達、そして村長であるビルズでさえも覚悟を、運命と戦う事を決めた一人の少女に頭を垂れた。

そして、フレアもまたその光景から伝わる恐怖に拳を震わせ、見つめる。


これが正しいのだと、これが決められた運命の道筋なのだと。そう叩きつけられる恐怖もまた彼女にしか分からない痛み。


だからこそ私はあえて皆の真似をしてフレアを追い詰める。

生きていればいずれ一人で戦わなくてはならない時はくる。

もし、フレアにとって今がその時であるのなら私こそ深く関与してはいけない気がした。なぜなら私はあくまでただの居候であり人間なのだから。


そう思うと一週間前の口論が恥ずかしくて胸にくるものもあるけど。


「皆!しっ、知ってるとは思うけど私の名前はフレア。これからは積極的に皆と触れあいたいって思ってます。突然ではあるけれどお、お願いします!」


いつもの変わった口調が消えて、頭を下げるフレアに周りが取った態度は沈黙だった。皆のほとんどが今の状況を未だに上手く理解できていなかった。


誰も総じて悪気は無いがこの静かな世界はフレアの胸をギュッと締め付けていた。

その空気に目を強く瞑り握りこぶしで耐えているフレアを救ったのは。


「フレアお姉ちゃんよろしくね!」

「皆で遊ぼう!」

「えへへ。」


花畑の様な無邪気な笑顔を咲かせる子供達だった。

空気を読まない子供達はフレアの腕を引っ張って自分達の遊び相手だとはしゃぎだす。


親達はオロオロとしていたがおばあちゃんは安心そうに笑っていた。


「さぁ!皆で砦を作り直す!男達は木材を運び女達は皆の食事を作るのじゃ!」


聞いたことの無いおばあちゃんの怒号に似た命令は全員の背筋をピシリと強制的に正す。


「お、おばあちゃん私も...!」


「そうじゃな。フレアはその子達の遊び相手になってあげなさい。」


「え...。」


皆が行動に移しているその中でエルフの王女はただ困惑顔のまま子供達に連れ去られるのだった。

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