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我が親友へ捧げる。ホロライブの愛  作者: リベンジャー
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第十話 フレアの秘密と呪いの弓(後編

「ここにいたんだね。」


「ヒューム。どうしてここが分かったん?」


「おばあちゃんが多分ここだと思うって教えてくれたから。」


そう言って私は自然とフレアの隣に座った。座る瞬間、私は彼女が背負っている呪いに少し気圧されてしまったが、頑張って顔には出さず何事もなかったかのように自然体を貫いた。


ここはエルフの村を囲うドーム型の木々。

梯子があったし登るのは容易かったけど、こうやって村を見下ろすとかなり高さがあってゾッとする。

まぁ、エルフは羽があるから梯子は必要ないだろうけど。


「フレアはどうして皆のところに行かないの?」


意地悪な質問だと言うことは分かっている。だけど、私はフレア自身の口から答えを聞きたかった。

呪いなんて関係ないって思えるフレア自身の気持ちを知りたかったから。


「皆が嫌いやから。」


だけどそれは簡単に、言い慣れているかのように彼女は笑って吐き出した。


「慣れ親しむ必要なんてないし、ましてや子供に何か懐かれたら面倒やしな。」


後悔なんて無いかのようにフレアは淡々とそう言い続けた。

どうしてそんな事を言っているかなんて分かってるはずの私でさえもその冷酷さに少し怒りを覚えてしまった。


「皆で手を繋いで仲良しこよしの鎮魂に意味なんか無い。今日襲われたって言うのにあの警戒の薄さは毎回思うで、哀れやなって。」


「じゃあ、どうしてフレアは皆を助けるの?」


「...。」


怒らないように、怒らないように。

今ここで憤怒の顔を見せてしまえば二度と偽物のフレアと本物のフレアに会えないような気がしたから。


フレアは私の質問に少し間を開けて、考えている顔を誤魔化すように、村の隅で燃えている炎に目を向けていた。


「そら、村が無くなったら、まず住む場所が無くなるし、皆おらんかったら食べ物が無くなるしで悪いこと尽くしやからなぁ。」


フレアはそう言い放つとまるで逃げるかのように立ち上がり、その場を立ち去ろうとする。


「逃げればいいじゃん。」


「ん?」


だけどその我慢は早くも倒壊し私はとうとう意地悪を深堀して、フレアの『嘘』と言う名の溝に入り込む。

その行動が何よりも許せなかったから。


「こんな危険な場所で先頭切って戦わなくても、逃げればいいじゃんって言ってんの。」


「...あのなぁヒューム。私がおらんかったらこんな村の一瞬で―」


「面倒なんでしょ?皆と関わるのが。」


「いや、そうやけど、違くて―」


「意味なんて無いんでしょ!?鎮魂なんて!じゃあいいじゃん。皆が死んだってフレアには関係ないし、今ここで逃げれば楽になるし。」


彼女の違和感に気が付いたフレアであったが、そんな事どうでもよく自分の心の中にある黒いもやが広がって、フレアの心を締め付けた。


「だから言ったやん。住む場所が無くなるのと食べ物が無くなるのはキツイって!」


「じゃあ、エルフを奉っている人間の村に行けばいいじゃん。

住む場所と食べ物くらい用意してくれるよ。神様扱いだから子供達も無駄に懐かないし、一年に何回かのイベントで神様役として出ていればお金もくれるし、面倒ごとも少なくなるしで良いこと尽くしじゃん!」


「やからぁ!!私は村を守らんといけんくて―!」


「だったら何でどうでもいいって嘘つくの!!」


「...!」


眉を八の字に曲げたフレアは彼女の怒りの声に押し黙り、体を硬直させた。


「フレアの言ってることメチャクチャだよ。皆なんてどうでもよくて、鎮魂なんて意味なくて、なのに矛盾だらけの理由で村は守るから出ていかないって。」


「...うるさい。」


フレアの拳が震える。


「毎日巡回は欠かさないし、村の皆の事頭に入ってるし、異常が起きれば誰よりも早く動くくせに。」


「うるさいって!」


フレアの声が震える。


「なんで嫌いと言えるの!?」


「うるさいって言っとんやぁ!!」


心と頭が震えた瞬間フレアはその場を強く蹴って、彼女の懐にまで入り込み首を握りしめて、そのまま地面に叩きつけた。


押さえつけられた喉が地面と一緒に圧迫されて、一言も許さないと目が語っていた。


「ここにきてたった3ヶ月、事情も知らず奴らを見たのも今日が初めてで、知識も浅く、同情だけで何でも正義に繋げたがる人間風情が偉そうに!黙って聞いとったら知った風に説教して!?何様や!」


両腕を足で抑えられた私にフレアは呪いの弓を片手に取って、喉を解放した右手が鋭く鈍く光る矢じりを引き私の眉間を完全に狙っていた。


「何か言ったらどうなんや!少なくもと私はお前に何かを言われる義理なんか無いで!?」


手を滑らせても確実に殺される今この時でも、私は何一つとして怖くなかった。

死への恐怖が無い訳ではないし、人から怒鳴られるのにも慣れている訳でもない。


だけど、こうして私を睨んでいるフレアの顔には無意識か大量の汗が滴り、その息は酷く荒れていた。

何よりも私が気付いていたのは。


「そんなことで神器にはならないんじゃない?」


「!?」


フレアの顔は一気に怒りの顔から驚愕の顔へと変わっていき、足をどけて、後ろに下がっていくにつれて今度は何かに怯えるような顔になっていく。


「何でそれを...?おばあちゃん...?」


「うん。」


私は押さえつけられていた首もとをサスッて起き上がる。


(確かにおばあちゃんは記憶に干渉するとは言っとったけど私達の歴史まで教えるなんて。おばあちゃんは何をこの子に期待して...。)


「だったら知っとるやろ!?私にはもう時間もなければ打つ手もない!出来るのはこの村を1日でも多く守って、子供産んで、黒龍に殺されるだけや!!」


私はフレアの叫びを浴びながらその場を歩く。

一歩ずつフレアに近づく。


「誰かと仲良くなれば殺す時に私は躊躇ってしまう!そうなれば戦う者は居なくなって皆死んでまう!その為やったら、嫌われようが、存在を忘れられようがどうだっていい!!」


確実に近づき、お互いの距離が狭くなっていき、フレアは無意識か私が三歩分近づけば一歩後ろに下がった。


それでも逃げないと言うことは私に逃げようとしている事を悟られたくないのだろう。


「どうせ私はもうすぐ死ぬんや!それやったら皆に嫌われて『守れんかった』と後悔せずに死んだ方がマシやろ!!」


私はフレアの胸ぐらを掴み。


『ゴン!!』


と鈍い音と共にフレアの頭部を私の石頭でどついてやった。


「私にまで嫌われようとせんでいいでしょ!!」


フレアは大きく尻餅を付いて頭の激痛と彼女の怒号にポカンと口を開けて見上げていた。


「後悔したくないから嫌われる?そんなの絶対に無理に決まってる!」


「...。」


「確かに私はたった3ヶ月だけで何も知らないけど、フレアが皆の事をどう思っているかなんて見ていれば分かったよ!!

そんなフレアが皆から嫌われただけで後悔せずに済むなんて絶対にあり得ない!

フレアは死んでもなお、守れなかったことを後悔してあの世でも泣き続ける!」


「だ、誰が泣き―」


「エリの部分。拭いた涙でシワになってる。」


「!」


そう、私はフレアに押し付けられた時、一瞬でその痕がついている事に気が付いた。

だから私は口から聞かされなくても、それだけで心の底から安堵した。

そして確信した。


「おばあちゃんにお願いされたの。フレアを頼むって。私に出来ることなんて少ないし、なんだったら戦力にもならないけど、そこで断れる程私は恩知らずにはなりたくない。

だから怯えないで。恐れないで。これからはおばあちゃんと二人でフレアを支えるから。三人で戦うから。」


私はフレアの金になびく髪をソッと上から撫でていく、肩に何か暖かい物が落ちていけど、もう少しの間このままでいよう。

きっとフレアが出した答えがこれなら見てあげない方が本人の為にもなる。


本当にエルフはプライドが高いし面倒だけど、こうやって素直になりたい時だってあるよね。


「...助けて。」


今にも消えてしまいそうな声に私は『分かった』と同く小さい声で長い耳に囁くと、小さくピクッと跳ねた。


「皆泣くのを我慢してたのにここで一人だけ泣いて。悪いエルフだね。」


面白かったからまた囁くと今度は大きく跳ね上がり、小さい声で『...止めて』と可愛く覇気の無い声で吠えた。


この前の仕返しと心の中でクスクス笑っていると、私は空に広がっている星に気が付いた。


彼女を探す事に夢中で気が付かなかったが、ここは村を覆う木々の上。空一面に広がった星が点々と並び、鎮魂のランタンは自由にフワフワと飛んでいた。

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