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第63話 変な奴ら

 最近、変な奴らが街をうろちょろしている。


 面のいい女が二人と、バカな男が二人。


 何をしに来たのかと聞けば、街を見に来たと言う。


 何が面白いのかは知らないが、毎日のようにその辺を歩き回っている。


 しかも昨日は、ゴミ山にいた群狸に襲われた。


 数が多いだけなら珍しくもない。


 一匹見かければ、その辺に十匹はいる。


 ただ、昨日のあいつらはおかしかった。


 普段なら人間を見れば逃げるくせに、揃いも揃って向かってきやがった。


 結局、ほとんどカイン達が倒した。


 そして翌日。


「……お前ら、また来たのかよ。」


「うん。」


 ゴミ山の前で、カインがいつものように答えた。


「今日は何すんだ。」


「昨日の群狸、まだ残ってるから。」


「…………。」


 ウェルは積み上がった群狸の死骸を見る。


 昨日のうちに一ヶ所へ集めてはいたが、数が数だ。


「そのままにしとくわけにもいかないでしょ。」


「まあ、そりゃそうだけどよ。」


「使えるところもありそうだし。」


「……お前、こういうとこだけちゃんと狩人なんだな。」


「こういうとこだけ?」


「なんでもねーよ。」


 ウェルはため息をついた。


 群狸は弱い魔物だ。


 この辺りでは珍しくもない。


 肉も食えなくはないし、毛皮も使える。


 ゴミを漁っているせいで好んで食う奴は少ないが、それでも食い物は食い物だ。


 ――特に、この街では。


「じゃ、やるか。」


 セトが腕まくりをする。


「セト、解体できる?」


「できるできる。狩人だぞ俺も。」


「なんか不安なんだよねー。」


「エイルさん、俺のことなんだと思ってるんですか。」


「いっぱい食べる人。」


「間違ってないけど。」


 こいつは、よく食う。


 昨日一緒に飯を食った時も、一人だけ食う量がおかしかった。


 体もでかいし、動くならそれくらい食うのかもしれない。


 性格は単純。


 多分、あんまり難しいことは考えてない。


 ただ、頼めば嫌な顔もせず手伝う。


 悪い奴ではない。


「じゃあ、おねーさんは毛皮やろっかな。」


「私も手伝います。」


「リムちはこっちねー。」


「はい。」


 もう一人。


 エイル。


 いつもふざけている。


 軽い調子で喋って、よく笑っている。


 だが、こいつは見た目よりずっと周りを見ている。


 昨日だって、群狸が増えた時にはすぐ動いた。


 リムとかいう女のことも、よく気にしている。


 四人の中じゃ、一番まともかもしれない。


「ウェルー。」


「ん?」


 声をかけられて振り返る。


 街の子供が何人か、こちらへ走ってきていた。


「なんか手伝う?」


「刃物使うのは駄目だぞ。」


「分かってる。」


「じゃあ、使えそうなもん運んどけ。毛皮はそっち。骨はそっちだ。」


「はーい。」


 子供達が散っていく。


 その中にいた小さな女の子が、リムの隣へ寄っていった。


「お姉ちゃん、それどうするの?」


「これは毛皮を剥ぐんです。」


「使える?」


「はい。傷が少ないものなら。」


「じゃあ、こっち?」


「そうですね。お願いします。」


「うん。」


 女の子が毛皮を抱えて走っていく。


「ティア、転ぶなよ。」


「転ばない!」


「昨日も転んでただろ。」


「昨日だけ!」


「はいはい。」


 ティアはそのまま毛皮を運んでいった。


 この街じゃ、子供だって働く。


 といっても、出来ることなんて大してない。


 ゴミ山から使えるものを探したり、それを仕分けたり、軽いものを運んだり。


 それでも、自分が食う分くらいは自分で稼ごうとする。


 リムが、戻ってきたティアへ別の毛皮を渡す。


「これはこっちで大丈夫です。」


「これ穴空いてるよ?」


「端の方なので、そこだけ切ればまだ使えますよ。」


「へー。」


 ウェルは二人を見る。


 妙に慣れている。


 毛皮のことだけじゃない。


 昨日、露店で古着を見ていた時もそうだった。


 使えるものと使えないものを見る目がある。


 こういう暮らしを、知っている。


 そんな気がした。


「ふぅ……。」


 しばらくして、リムが額の汗を拭った。


「暑いですね。」


「リムち、休んだら?」


「大丈夫です。」


 そう言いながら、リムが被っていたフードを外す。


 銀色の髪が零れた。


「…………。」


 ウェルは手を止めた。


 髪の間から覗いた耳。


 人間のものより、少し尖っている。


「リム姉ちゃん。」


「はい?」


「耳、尖ってる。」


「…………。」


 リムがティアを見る。


 それから、自分の耳に触れた。


「…………あ。」


 固まった。


 さっきまで普通に笑っていた顔が、少しだけ強張る。


「お前。」


「……はい。」


「魔族なのか?」


 リムは少し黙った。


 フードを握る。


 だが、被り直すことはしなかった。


「……半分だけ。」


「半分?」


「父が人間で、母が魔族なんです。」


「ふーん。」


「…………。」


「…………。」


「それだけか?」


「え?」


「いや。なんか続きあんのかと思って。」


「……いえ。」


「じゃあいいだろ。」


 ウェルは作業へ戻った。


「ティア、それそっち持ってけ。」


「はーい。」


 ティアも何事もなかったように毛皮を抱える。


「…………。」


 リムだけが、その場に残っていた。


「リムちー?」


「あ……はい。」


 エイルに呼ばれ、リムが歩き出す。


 その顔は、さっきより少しだけ柔らかくなっていた。


 人間と魔族のハーフ。


 珍しい。


 それくらいだ。


 昨日まで普通に話していた奴が、耳が尖っていたからって別人になるわけでもない。


 それより。


「ウェルさん、これ食べられます?」


「……お前まだそれやってたのかよ。」


「食べられるなら、捨てるのもったいないし。」


「食えるけど、ちゃんと処理しろよ。」


「分かった。」


 カインは馬鹿だ。


 多分、かなりの馬鹿だ。


 困ってる奴を見れば勝手に手伝う。


 自分が騙されても、自分だけならいいとか言う。


 昨日だって、群狸が向かってきたら迷いもせず前に出た。


 それで今日は、倒した群狸がもったいないと言って朝から解体している。


「カイン、それ終わったらこっち手伝って!」


「分かった。」


「カインさん、こっちもお願いします。」


「うん。」


「カイン、俺の方も頼む!」


「自分でやれよ。」


「なんで俺だけ!?」


 エイルが笑う。


 リムも小さく笑った。


 セトが文句を言いながら、また作業を始める。


 変な奴らだ。


 全員、お人好しで。


 全員、どっか馬鹿で。


 それでも。


「…………。」


 ウェルは、四人を見る。


 どうしてこいつらが一緒にいるのか。


 少しだけ、気になった。

幼女きた。

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