094 文化停滞仮説の照合
作者です!
主題歌のメイキングビデオ(ぽいもの)を作りました。
https://youtu.be/drzAQspqpyM
見てくれると嬉しいです。
気の張り詰める会議はお開きになった。
晩ごはんは、近くの食事処で友人たちと再会を祝うことになった。
大学組:おかあさん、アリシア先生、私。
モデルテから来てくれた友人:クララ、エリス、ルーカス。
王都「風のみち」関係者:ジャコモさん、アンジェリーヌさん。
「クロエちゃんの快癒に!」 アンジェリーヌさんの音頭で食事は始まった。
私からは、今どういう治療を受けているかという話が中心だ。
最高神がらみの話はこんな場でできないし、リナちゃんがらみの話もできるわけがない。
「……そんなわけで、毎朝、指チョン・トランスファーを発語して、あとは精密検査をするだけなんだよ」
クララ 「もう、絶対むりしないでね……」
ルーカス 「そうだね、モデルテ市の緊急事態は避けられたし、魔法院の底上げもマリィとミレーヌ先生に任せておけば大丈夫だよ」
エリス 「……クロエはきっとまたやらかす。クララの監視が重要」
「ははは……そんなわけないよ……
それでね、いまは魔素学研究室で勉強させてもらってるんだ」
みんな、そんな疑わしそうな目を向けないで~
モデルテの様子も色々教えてもらった。
マリィが中心となって、一年生にトランスファーを実施しているそうだ。
ルーカス 「ほら、もともとトランスファーは風魔法でしょ? マリィもアーサーも僕も発語できるようになったんだよ。
それにクロードもね」
「クロエさんほどのマナ量はないけど、4人で分担してやっているんだ。
自分たちの魔法実習用にもマナは必要だけど、少しずつでもトランスファーをかければ、長い目で見れば、大きな差が出ると思うよ」
なるほどね~
「一年生の風コースにルナちゃんっていう女の子がいるでしょ?」
ルーカス 「うん。一年風コースは一人しかいないからね、教室に行くと、いつも一人で神話を読んでいるよ」
あれ?
「いつも一人なの?」
ベルナールはどうしたんだろ?
エリス 「あの子は寮で見かけるときも、いつも一人」
ベルナールとのことは口止めされてるからな……
「同じ風コースだし、マリィに気にかけるように頼んでくれる?」
次は商売のこと。
文化停滞仮説のことがあるし、ここはもっと力を入れないといけないよ!
エリス 「卵を産む飛べない鳥の情報? それはまだ聞いていない」
とりあえず、レストラン関係はアンヌとテオの担当になったらしい。
これもエリスに頼んでおこう。
「アンヌとテオは仲良くやっている。
休日はいつも狩りに行っていて、「ラ・ターブル・ドール」に卸すときに自分たち用に食材を少しとりわけして、お料理の工夫をしている」
ルーカス 「そうそう。僕たちもお相伴にあずかっているよ。
テオの料理の腕前は大したものだね」
「アンヌはお料理しないの? アンヌのお手紙でも、テオにお任せみたいなことが書いてあったけど」
エリス 「……アンヌも火加減の腕前は大したもの。あとは……自分は味見役だと言っている」
アンヌってば……
ジャコモさん 「王都の北の農家では、コルク樫を加工して瓶の蓋にしているそうだ」
私はワインの瓶、コルク、それから封印するためのワイヤーの準備をお願いした。
アリシア先生 「スパークリングワインの魔法を教える生徒も準備してくださいね」
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毎朝のトランスファー発語と精密検査は、指チョントランスファーから握手トランスファー(?)に進化している。自然と、検査後の問診が、私たちのミーティングのような場となってきた。
「……では、クロエの仮説を検証するとしようかの。
この場にいるものは、契約魔法により秘密保持を強制されることになる……クララ、お主は初めてとなるが、良いか?」
「はい!」
私は話し始めた。
「これも前世での話となるんですが……」
ある文明と別の文明が出会った際に、互いに影響を及ぼし合うことになる。
それは良いこともあれば悪いこともあるのだろう。
例えば四大発明の歴史と影響は、良い影響の代表例と言えるかもしれない。
一方で、新大陸の先住文明の崩壊など、悪い影響も多い。
「悪い影響は、侵略という形を取るとは限らないという研究があったはずです。つまり、文化的影響―科学技術、服飾や食料など商品経済、娯楽や文化的な慣習、といったあらゆる侵食によって固有の文明的アイデンティティが失われてしまうということですね」
「結果として一方の文明に属していた人々は、経済的にも、技術的にも、文化的にも独立性を失い従属的な立場となってしまうというような研究でした」
アリシア先生 「異なった文明という考え方自体が理解の外にあるわね」
「で、ここからがわかってもらえるか、心配なんですけど」
「今のお話は、同じ惑星上での―惑星というのは同じ陸地の上でのといっても良いかもしれませんが―文明どうしのお話でした。
でも、ここからは、ある生活をしていた文明に、全然別のところから文明がやってきた場合です」
アリシア先生 「同じ陸地じゃないって、王国以外からってこと?」
「いいえ、宇宙、う~ん…… 空の彼方? からです」
クララ 「お空から人が来るの?」
「そうだね」
「この場合、二つのグループの間の格差というものは、比べられないくらい離れていると考えられます」
「その結果……」
その結果、想定される事態は色々あるのではと思う。
1.圧倒的な力で管理された人間は、安全な生活を享受できたけれど、その一方で、王国に閉じ込められ、芸術や科学の創造性も衰えていったのではないか?
2.魔法が与えられたことで、人々は意味の分からない手順を儀式化し、その手順自体を神のように崇拝してしまった。理解することをやめた結果、魔法を改善する能力もなくなったのではないか?
3.過去に人間を危害から守る必要があって、人間から新しいことへの選択や挑戦する機会が失われ無力化されてしまったのではないか?
「努力する必要性がなくなって、新たに発見すべきものが残っていないのなら、人々は独力で未来を切り開く必要がない、と思ってしまったのではないかな?」
おかあさん 「そんな……」
クララ 「努力が無駄なの?」
『最高神ユグドラシルへ!仮説の照合をお願いします』
リィン、リィーン、リィーーン……
『文化停滞仮説として、クロエが提示した内容は、一般論として概ね正しい……
なお、歴史的な事実は検証されておらず、照合の対象外である』
「……実際何があったかは教えてくれないんだね」
ルチアさん 「ユグドラシルも、クロエにはずいぶん饒舌じゃな……」
「クロエちゃんから見て、私たちはそんなに停滞して見えるの?」
アリシア先生は、少しだけ傷ついたような顔をした。
研究者として、見過ごせない言葉だったのかもしれない。
「個々人は、そう感じないんですけど……」
「それに幸福度で言ったらどっちが良いかはわからないんです」
「前世の歴史は、魔法もなく、経済のパイを人々が血みどろに奪い合うものでした。
挑戦しなければ奪われる。
王侯や貴族は豊かな生活を享受し、多くの人々は非常に厳しい生活を強いられる……ここでの農奴などよりも、もっと悲惨な生活だったと思います」
クララ 「じゃあ、今の方が良いじゃない!」
「そうだね。
でも本来、そんな暮らしは誰かに守られているからこそ成り立つんだよ……」
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なんとなく、尻切れトンボのような終わり方になってしまったな。
私は、みんなに言う。
「だからといって、私がやりたいことは、結局魔素の研究に変わりはないんです」
そこが鍵のような気もするし。
「で、そもそもの最初に戻るんですけど。
この話は、魔素測定器の開発から始まりました。
だから、まずはバルディーニ先生に確認したいことがあります」
バルに聞く。
「空気中の魔素測定は難しいということでしたが、血中の魔素測定が可能なら、そこから推測すると、液体の測定はできると考えて良いでしょうか?」
「液体を密閉した容器に入れれば可能だ。
だが、比較対象となる液体がなければ、マナ変化の測定は困難だ。
魔力の差異から、推定値として算出しているに過ぎないからだ」
「では、例えば王都の給水塔から取水した水を基準として、周辺市の水と比較することは可能ですか?」
バルは水中の魔素量を測る測定器を作ってくれると約束してくれた。
自分で作らなきゃいけないと思ってたんだけどな。
「ただし、その測定には私も同行する」
げっ、まあ、新開発の測定器が現地で動かなくなったら、技術者も必要か……
「どちらにせよ今はダメだ」
「開発に時間がかかるからでしょうか?」
「いや、お前の魔臓障害の治療が終わっていないからだ」
あ~ そうか~
世界の謎を測る前に、まずは自分の体か~
クロエ「エリス~ ルーカスと一緒に旅行だね~ むふふだね~」
エリス「クロエ、親父っぽい」
クララ「クロエちゃん、はしたないよ!」
クロエ「だって!親の目もなく恋人と何週間も旅行なんでしょ~ いいな~ ほれほれ」
エリス「ふん!」
クロエ「ぐぎゃー!脇腹つねらないでー!」




