093 私が誰であるか
クロエです!
情報開示請求ってあるじゃないですか。政府など公共機関に情報公開法によって請求するやつ。
そう考えると最高神って政府機関みたいなものかもしれませんね!
『文化停滞仮説に関する第一次情報開示を却下する』
…………
…………
頭に直接響いた声に驚いた。
耳を通さないせいか、その声は男性とも女性とも判断がつかないものだ。
威圧するような響きではないけれど、同時に、自然と人を跪かせるような荘厳さが感じられる。
だけどね、私も、腹に据えかねているんだよ!
いままでどこにぶつけて良いかわからなかった気持ちが、対象を得てはっきりしたんだ。
文化停滞仮説ね!
ご丁寧な説明を受けなくたって、こっちだって、謎の前世知識があるんだから!
簡単に言えば、文明や文化の発展に大きな乖離があるグループ同士が接触したとき、発展の低いグループが重大な影響を受けてしまうってことでしょう?
どのような影響を受けるのか、「停滞」の度合いがどの程度のものなのか、具体的な内容はわからないけど。
ここはもう一押ししてみないと…………
みんなが押し黙るなか、
「…………話は変わりますが、モデルテ市と王都では、少し言葉が違うようですね」
ルチアさんは、少しほっとした様子で話に乗ってきた。
「そうじゃな。王都と周辺の都市では、少し違うところもあるな。
といっても、会話に困らぬ程度であるし、あまり気にする様子はないぞ」
「私の前世でも、言葉というものは、地域や集団によって少しずつ変化が見られ、人と同じく兄弟同士のようになると考えられてきました。
そうした言葉の仲間を「語族」と言ったりしてました」
「なるほどの。言葉の種族で「語族」とはよく言ったものじゃ」
「はい。兄弟がいれば当然親がいるもので。
親に当たる言葉を「祖語」って言っていたと思います。
親の言葉、つまり言葉のご先祖様ですね」
「たしかに、面白い表現じゃな」
「ディミディウムという国名や、神殿で使われる古い言葉には、その祖語の名残があるように思います」
「…………」 ルチアさんは、話の行き着く先がわかってしまったようだ。
「ルチアさんの本当のお名前は、ルキアさんというのではないですか?」
横で黙っていたバルを正面から見据えて言う。
「そして、バルディーニ先生のお名前は、本当はバルディヌスなのでは?」
アリシア先生は眉をひそめて、「クロエちゃん、つまり何が言いたいの?」
「はい。
王国の起源を考えると、王国祖語を話していた集団がいたということ。
そして、ルチアさんやバルディーニ先生は、今でもその古い集団に属しているという指摘なんです。
その集団は、バルディーニ先生を見てもわかるとおり、マナ測定器や私たちの知らない魔法も駆使していて…………」
「そこまでだ!」
バルが鋭く言う。
私も、負けずに声を強めた。
「いつまでも、私に隠さないで!」
「必要なら、契約魔法でも何でもかければ良いじゃない!」
…………
…………
再びその場が静まりかえった。
「したくてもできないんじゃよ」
ルチアさんは言った。
「クロエよ、妾達も、情報開示の制限を受けているのじゃ。
お主に答えてやりたいのも山々じゃが、最高神自らの制限を受けているのじゃ」
「だから、契約魔法を私にかけてもかまわないって言っています」
バルは言う。
「お前のマナの特殊性のため、契約魔法は無効化される。
その点も情報開示ができぬ理由だ」
…………
…………
私は思わず叫んだ!
『最高神ユグドラシルへ!
第一次情報制限の解除条件自体の開示を請求いたします!
対象:クロエ・クララ・アリシア・ソフィ・ルチア・バルディーニ!』
「むっ」「なんじゃと!」
「「クロエちゃん!」」「クロエ!」
リィン、リィーン、リィーーン……
先ほどとは異なる鐘が現れ、厳かに鳴り響いた。
脳内には重々しい声が響く。
『第一次情報制限の解除条件を開示する…………
クロエに対する解除条件…………
1.照合可能な仮説をクロエ自身が打ち立てていること
2.被保護種族への悪影響が認められないこと
対象:クロエのみ』
……照合可能な仮説。
つまり、私が自分で考え、自分で確かめろということだ。
……
……
……
アリシア先生、「あれ?声が聞こえない」
おかあさん 「どうしたのかしら?」
クララ 「……」
その声は、私とルチアさん、バルにのみ届いたようだ。
「ふぅ~~~
無茶はやめるのじゃ……」
(第2項があるため、最高神はおかあさん達には言えないんだね、なら!)
(最高神ユグドラシルへ!
解除条件を満たしているかどうか、私から最高神へ確認する権利を求めます!)
と、心で聞いてみた。
『クロエが解除条件を確認することは、「是」である』
声は、脳内でそのように告げられた。
そして鐘は消えたのだった。
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バル、
「我々は、今までお前のやりたいこと、やろうとしていること、やらなければならないと考えたことを制止したことはない」
ルチアさん、
「そうじゃな。お主の安全や健康に関すること以外では、基本的に支援を続けてきたと思うぞ」
私は頷いた。
バル、「今の問ではっきりした」
「お前は、お前の信ずるところに従い、この世界の謎に立ち向かわなければならないのだ」
そうだね。
私は、私が誰であるか、私の力で明らかにしなければいけないんだね。
アリシア「最近、驚くことばっかりなんだけど!」
クララ「本当に…………最高神の御業を直接目にすることがあるなんて…………」
ソフィ「…………命が縮んだわ…………」
クロエ「綺麗なホログラムだったね~」
アリシア・クララ・ソフィ「……………………」




