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チートなんてない!(連載)  作者: ayane_project
第二章

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090 モデルテから

クロエです!

今日、アリシア先生の過去に重大なる秘密があることが発覚しました!

これは、ぜひとも追求しなければなりませんね~

クララからの手紙の封を開けてみる。

彼女らしい、流麗な文字に少し堅苦しい文章が並んでいた。


「拝啓、クロエ様。

ここモデルテでは、秋の収穫も終わり、落ち着いた季節が巡ってきています。

あの、夏の喧噪が嘘のように、街行く人々の表情は穏やかなものに変わりました」


クララ!硬いよ、硬すぎるよ!

(クララおねえちゃん、難しい言葉を使いすぎだね!)


「魔法院の授業も落ち着きを取り戻し、日々研鑽の毎日です。

ご承知のように、私たち二年生は、幾多の試練を乗り越え、自らの力の高まりを自覚することが増えたと言われています」


なんだろう?これは、卒業式の送辞ですか?


「しかし、それは本当のことでしょうか?

私たちは社会に出る上で必要となる魔法力や学力を身につけたと言えるでしょうか」


あ、これはクララ生徒会長のお言葉だ!


「クロエ様が大きな病に倒れた日、私は未だ、真の意味での力も、困難に対処するだけの能力も、身につけてはいなかったと、暗澹たる思いに陥ったのでした」


やめて!友達に「様」はやめて!おねがい!

背中をむずむずさせながら手紙を読み進めると、最後にびっくりすることが記載されていたよ。


「追記。

ミレーヌ先生のご指導を受け、この秋には、モデルテ魔法院の全教程を修得する見込みとなりましたため、王都魔法大学への推薦を頂くこととなりましたことをご報告申し上げます」


すごいね。

クララはやっぱりクララだったよ。


でもね、クララ、友達へのお手紙はこんな堅苦しく書いちゃダメなんだよ!

私はクララに、友達へのお手紙の書き方を教えなくてはと、心に決めるのだった。


________________________________________


次はアンヌだね。

アンヌは字があんまりうまくないね。耳学問で、普段からノートをとったことないのが丸わかりだね。


「クロエは自分を大切にしなきゃダメだ!

アタシとクララがどんだけ心配したと思ってるんだ!

孤児院の時から全然変わってないじゃないか!」


アンヌらしいな!

嬉しいよ~

でも書き取りの練習はしようね。


「だから、アタシは衛士にはならないからな!これは決定だよ」


?? 前の文章と繋がってなくない?


「それに、テオと料理屋を始めるから、クロエはテオに料理を教えてやってくれ!」


?? 突然の将来設計だな~

あと、料理屋を始めるのは良いけど、アンヌは料理覚えないのかな?


「いいか!死んだら人間おしまいなんだ!母ちゃんが死んだアタシの言葉に間違いはない。

クロエは死ぬんじゃないぞ!


おい、生きてるんだよな!いつまでも眠ったままは許さないからな」


良くわからないけれど、アンヌらしい温かい文章だね。

でも、アンヌはもっと作文の練習をした方がいいと思うよ……

あと、アンヌも料理覚えなよ……


________________________________________


次はマリィか。


「前略、クロエ様。

1.魔法院の授業は通常授業に戻りました。

 A.防御魔法は課題をクリアできた生徒は、攻撃魔法の基礎へと

   カリキュラムが進んでいます。

 B.専門魔法は運搬、輸送に役立つ魔法だけでなく、伝達系魔法

   へと進んでいます。

 C.バルディーニ先生の代わりはパオロ先生が務めていますが、

   ミレーヌ先生が風コースの補助に入っています。

2.クロエの発想に基づく商売は停滞しましたが、王都支店を通じて

  再開の予定です。

 A.「優雅な家」とヴァロンティンヌ服飾店の契約に関して

   「優雅な家」王都支店とソフィさんの間で契約を継続する予定

   です。クロエの容態が安定したら支店長が挨拶に伺うそうです。

 B.「風のみち」の契約に関して

   こちらについても同様です。

   ソフィさんだけでなく、アリシア先生とも同様の契約に変更する

   予定です。

 C.「ラ・ターブル・ドール」に関して

   食材供給契約に関しては、アンヌとテオが引き継ぐことに

   なりました。

3.神殿関係

 A.さちについて

   神殿関係者であるバルディーニ先生、および、さちの保護に

   関わっていたクロエが不在となったため、孤児院へ戻りました。

これらの情報がクロエの役に立つことを祈っております。 早々」


マリィ……これでは報告書だよ。

お手紙にしては情緒が不足しているよ……


だけど、重要なことが書かれていたな。

確かに、流行病や私の魔臓障害でおろそかになってしまったけど、あの状況では、さちは神殿孤児院に戻った方が安心だろうね。

いくらアンヌやクララがいたとしても、バルやおかあさんや私がいないと、魔法院としても寮に住まわせることに責任が持てないだろう。




最後にエリスの手紙を開いてみた。


「クロエが快癒したことを前提に記す。

この手紙を読んだら、健康状態をすぐに知らせること」


たぶん、エリスなりには、心配してくれているんだと思う。

でも、言葉が足りないよ……


________________________________________


みんなにどうやって手紙の書き方教えようかな?

やはり、お手本となるようなお返事を書いてあげるのがいいかな?


それぞれに書くのは大変だから、代表してクララ宛に書いてみようかな?

エリスが返事を急いでいるようだし……


そんな、手紙の添削対策を練っていると、大人たちが帰ってきた。


ん?おかあさん、表情が硬くない?

もしかしてバルにひどいこと言われたのかな?


「みんなお帰り~

おかあさん、顔色が悪いけど大丈夫?」

「え?

ええ、ちょっとね、色々お手続きしなきゃいけないけど、初めてのことばかりだったからね……」

「そうそう!

慣れればどうってことないんだけどね!」

アリシア先生は手をわちゃわちゃ動かした。


ん~ これはきっとバルに絞られたな!

「おかあさん、私も一緒にやるよ!もう、魔法を使うこと以外は健康だって言われてるんだし、一緒にやれるよ!」

「そ、そうね。お願いできるかしら?」


「さて、手続はソフィさんに順次進めてもらうとしようか。分からぬことがあったら、何でも妾に聞くのじゃ。妾は自分の予備執務室を、ソフィさんとクロエの部屋、アリシア殿の部屋の並びに一室用意した。いつでも訪ねてかまわないのじゃ」

私たちはルチアさんに頭を下げた。


「では、クロエは何を学びたいかのう?

ここ魔法大学では、各地の魔法院への教師を養成するための教育学部、各地の政庁への上級官僚を養成するための行政学部、魔法そのものを研究するための魔法学部があるぞい」

「クロエは、妾の口利きで、どの学部のどのコースを受講してもかまわぬぞ?」

バル 「ルチア、魔法の実践的研究室はだめだ」

「む、言い忘れておったな」


「アリシア殿も好きなコースをとってかまわぬぞ?

もっとも、教育学部のコースは修了しておるのじゃろう?」

「はい。風コースは修了しています」

「では、魔法学部の方は風魔法のどの研究室じゃったのか?」

「探知魔法研究室ですが、今回はクロエちゃんと一緒に魔素学研究室へ所属したいと思います」


________________________________________


とりあえず、教育学部風属性コースの授業があるというので、アリシア先生と行ってみた。


「あまり役に立たないと思うけど……」とは、アリシア先生の言葉。

魔法院を卒業した年齢と言えば、16歳くらいかな。

私より少し年上の男女が8人ほど講義を聴いていた。


アリシア先生は、ルチアさんからの許可証のようなものを講師の先生に見せた。

「こっ、これは聖女様の!

わかりました!」

講師の先生を緊張させちゃったかな?

私とアリシア先生は教室のすみっこに移動した。


「……このように、魔法院一年での属性魔法習得は、ウィンドラインまでをめざします。

三年生で防御魔法を構築するためには、二年生までにウィンドエリアを自在に発現する必要があるためです」


「しかし、一年生の間にウィンドラインを構築できない生徒も一定数出てきます。

ウィンドラインが構築できない原因は何でしょうか?」


そう言って、一人の学生に質問した。


「マナ基礎値が少なく、属性魔法を十分に練習できないからです」

「そうですね。ではそういった生徒には、どのように接すれば良いでしょうか?」

また別の学生を指さした。


「はい。神話、特に風属性の神の神話を熟読させ、その後に瞑想させます」

「そうですね。

ここで強調しておきますが、瞑想はマナ値上昇の大事な行為です。

いくら神話の講読を行っても、それだけではなかなか結果に繋がりません」


こそ 「アリシア先生、先生が生徒にトランスファーをかける方が効果が出ませんかね?」

こそ 「先生もトランスファーができないと思うよ。それに、クロエちゃんは神殿にいたから毎日瞑想をやっていたけど、普通の家庭では意外と瞑想を怠りがちなのよ」


そうか~ それなら孤児院も悪くないのかも。


私はアリシア先生に促されて教室を出た。


________________________________________


お昼になったので、おかあさん達のところに戻る。

「おかあさーん、お昼ごはん食べに食堂に行こう~」

ルチアさん 「妾と一緒に特別室に行けば、うまい料理が食えるぞ?」

「ありがとうございます!でも、今日はごめんなさい。魔法大学の食堂を経験してみたくて」


ルチアさんは目立つので、遠慮するそうだ。

三人で行ってみよう!


「あっらー!めずらしい!アリシアちゃんじゃないかい!」

そう、厨房のおばちゃんは言った。

「ご無沙汰しています」 とアリシア先生はぺこりと挨拶する。

「何年ぶりかね~ またこっちでお勉強するの?」

「ええ、よろしくお願いします」


三人でランチを食べる。

「ほら、パンとスープと煮込み料理で、珍しくないでしょ?」

アリシア先生が言うと、

おかあさん 「でも、よく煮込まれていて、具材は柔らかいし、良い味になってると思うわ」

そこへ、さっきのおばちゃん

「良くわかってるじゃないか、これは特別におまけだよ!」

そう言って、鳥のもも焼きをサービスしてくれた。

「これ、特別室用のお料理でしょ?いいの?」

「今日だけ特別だよ!」

「「「ありがとうございます!」」」


「アリシアちゃんが男に振られてねえ!

ふらっといなくなったから、とっても心配したんだよ!」

「お、おばちゃん! しーっ、しーっ!」

私とおかあさんは、その爆弾発言に先生をガン見する!

「もう、昔の話じゃないか!

吹っ切れたから、こっちに戻ったんだろ? また元気になってくれて嬉しいよ!」

おばちゃんは、言いたいことを言うと、厨房に戻っていった……

……

「先生……今の……」

「あーっ なんにも喋らないからね!

それより、ご馳走がきたから、暖かいうちに食べよう!」

そう言って、もも焼きにむしゃぶりついたよ。

私 「モデルテでも鳥肉は貴重だったから、よく味わわないと!」

おかあさん 「そうね!アリシアちゃんのお話は夜のお楽しみだものね」

先生 「……………………」


________________________________________


ランチのあとは、私の各種手続だ。


王都納税局へ行く。

おかあさんと私のモデルテ市戸籍証を用意して、王都納税局の戸籍課へ行く。

私の戸籍証は、バルから渡された。

はぇ~ 自分の戸籍証を初めて見たよ。

孤児院で目覚めた日(10月15日)の少し前が登録日になっていたよ。


「おかあさん、この国にファミリーネームってないの?」

おかあさんと先生 「?」


私は家族制度とファミリーの意味を説明した。

アリシア先生 「それは税制が理由だね。家族とか結婚は、私人しじん間の慣習や契約であって、お役所には関係ないからじゃないかな?」

あ~ 人頭税中心だからかな。

「でも、生まれた子供の登録は、成人時から課税を漏らさない必要があるので、親子の関係と戸籍の登録が必要なんだよ」


「じゃあ!おかあさんと私にファミリーネームをつけて登録しても良いのかな?」 おかあさんを見る。

「たとえば、どんな名前を考えてるの?」

うーん

おかあさんと私を表す言葉と言えば

「リナちゃんのお墓でおかあさんと初めて会ったときに、お墓にお供えしていた小さな白いお花があったでしょ?」

「スノードロップね」

「だから、ソフィ・スノードロップ、クロエ・スノードロップ、なんて名前で戸籍登録をしたらどうかな?」

おかあさんは、しばらくその言葉を噛み締めていた。

「とっても素敵ね。そうしましょう」

(じゃあ、リナは、リナ・スノードロップだね!)

戸籍課では少し不思議そうな顔をされたけれど、全体が長い名前と思われたのかもしれない。

それとも、「名乗り」としてなら登録できるのかも?


こうして私は、クロエ・スノードロップになった。


「滞在証 母:ソフィ・スノードロップ・モデルテ市戸籍、子:クロエ・スノードロップ・モデルテ市戸籍、王都納税局戸籍課」

私は前世のうじ制度の記憶があるからるんるんだ。

親子っぽいよね!


人頭税は今後もモデルテ市で支払わなければならず、別途滞在税として王都にも納める必要があるそうだ。

アリシア先生も滞在証を再交付してもらい、三人分の滞在税を納めて手続は終わった。


次に、大学の事務局で学生証を作ってもらう。

滞在証を提示したらすぐ作ってくれた。

学生証は1枚の羊皮紙だった。「魔法大学学生証 クロエ・スノードロップ・モデルテ市戸籍 魔法大学学生課」

アリシア先生 「何年も保存しなくちゃならないからね。持ち運びは難しいから、引き出しにしまっておく感じかな?」

「……それだと、大学の敷地に入るときや、食堂とか図書館を使うときに証明できないんじゃ?」

「チェックできないね」

「市民が無許可で使ってしまいませんかね?」

「なかにはそんな人もいるかもしれないけど、調べる体制をとるのも難しいからね~」

ゆるいんだね。




夜、アリシア先生の恋バナを追求したが、全然教えてくれなかったよ。

ガードが堅いな……


でも、私にはガードを崩す手段があるのだ。

つまり、ミレーヌ先生にお手紙を書けば、必要な情報が手に入るはずだもん。

あ、みんなにも手紙の書き方を教えてあげなきゃね!


挿絵(By みてみん)


「アリシア先生、私の名前をフルネームで呼んでください!」

「クロエ・スノードロップさん?」

うふふふ

「おかあさん、スノードロップ家では食事の時に「いただきます」と言う決まりにしようよ」

「もう、はじめていますけどね。スノードロップ家のルールにするのね」

ふふふふ

「浮かれてるな~」

「でも、私もなんだか楽しいわ」

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