088 覚醒
作者です。
本編再開します。
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(………)
(………ゃん)
(………おねえちゃん!起きて!)
ん、ん~、まだ眠いよ……
(なに言ってんの!もう何十日も眠ってるんだよ。いいかげん起きなよ~)
? あれ? 私、どうしたんだっけ?
もしかして、魔法院に遅刻しちゃった?
(おねえちゃんは病欠だから大丈夫だよ~)
あー、そういえば、なんか具合が悪くなったんだっけ?
(そうだよ!あのトランスファーはひどいよ!私は激おこだよ!ぷんぷんだよ!)
? そういえば、あなたは誰なの?
(私はリナだよ!)
リナちゃんなんだー 初めましてだね!
(そうだね!でも私はおねえちゃんのこと、ずっと呼んでたんだよ?)
はっ?え?ほんとにリナちゃんなの?
(そうだよ!)
あ、あれ?今、私どうなってんの?
(おねえちゃんはまだ眠ってるんだよ。いま、心の中でリナとお話ししてるの!)
………
………
………これは、いわゆる「二重人格」かな?
(二重人格ってなに?)
正確には、解離性同一性障害って言ってね、すっごく嫌な体験があったときに、そのときの感情や記憶を切り離して、それを思い出せなくして心が壊れちゃわないように自分を守るんだけど、それが重くなってくると、自分とは別の人格が生まれちゃうんだ。
(リナはリナだよ?おねえちゃんの心が生んだ偽物じゃないよ)
そうかな~?
(おねえちゃん、すっごく嫌な体験なんかしてないじゃん)
そういえば?色々悩んでたけど、自分自身のことに限れば、おかあさんもできたし、友達もたくさん増えて、結構楽しかったかも?
でも、リナちゃんは、死んじゃって魔臓だけになったんでしょ?
(あ、やっぱりリナは死んじゃったんだ!おねえちゃんに聞きたかったことの一番は、リナが死んじゃったのかどうかってことだったんだよね!)
あ~ 私が決めたことじゃないけど、勝手にリナちゃんの魔臓をもらっちゃってごめんね?
(いいよ!おかげでリナも生きてるんでしょ? あれ?生きてるのかな?)
………どうなんだろ?
そうやって、二人で悩んでいたところ、今度は本当に外からの声が聞こえてきた。
「眼球運動が見られる。覚醒の準備をする」
「クロエ!クロエちゃん!目を覚まして!」
(わーい、おかあさんだ!おねえちゃん起きようよ!)
ぱち!
わ、まぶしい!
「クロエ!」 おかあさんだ!(おかあさんおはよ~)
「そのまま動かぬように」 バルだ。
「お前はある晩、原因不明のショック症状を起こし、意識不明に陥った」
「今は生命維持のため、お前の体には各種の医療機器が取り付けられている」
「医療機器が外れぬよう、安静状態を維持せよ」
「………ぁ」 声が出ないぞ………
「喉に負担がかかる。声に出す必要はない」
「まず初めに言っておく。モデルテ市で起きた流行病は無事収束した。治癒院に赴いていた生徒は、全員魔法院に帰還している」
良かった。
「三年前に流行ったという流行病と比べても、被害は格段に少なく済んだ。市政や市民感情への影響は最小限にとどまったと聞いている」
そう……不幸中の幸いといってもいいのかな?
「また、秋の農作物の刈り入れは大豊作であった。さらに土コースの生徒の尽力によって、今後も継続的な豊作が期待されている」
それは……嬉しいけど……そもそも私どれくらい意識がなかったんだろ?
「お前のマナ譲渡の恩恵によって、二年生の魔法師としての能力は例外なく高レベルとなったが、三年生、一年生も一定の効果が発揮された」
みんな頑張ったからね。
「市の広報活動もあり、他市からの移住者も増え人口増加が見込まれるそうだ。これにより早晩増税も撤回される希望も出てきたと言われている」
そう。
「これらの情報は、お前が不用意な行動を起こさないよう、あらかじめ伝達したものだ。
お前が安心して治療に専念できる状況であることを理解したか?
理解したのであれば、まぶたを2回閉じて見せよ」
ぱちぱち
「よかろう。
次にお前の状況だが、引き続き安静に努めつつ話を聞け」
「今は、10月27日だ。そしてここは、王都魔法大学付属の治癒院である」
え? ええ?
(ほら、だから早く起きなって言ったんだよ!)
ふいに別の声が聞こえた。 「そこからは妾の番じゃな」
「む」 と短くバルが反応する。
「まずは検査じゃ」
私の左腕には、点滴のようなものが取り付けられており、右腕には血圧計と採血器のようなものが装着されていた。
体はベッドにベルトで固定されていた。
その声の主は、若い女性だった。
「うん、血圧は正常値じゃ」 採血器は例の針なしの謎器具である。彼女は、そこから伸びた計測器を確認している。
「呼吸素濃度も正常範囲、マナ基礎値はあいかわらず測定上限、魔臓酵素値、周辺臓器酵素値、魔細胞の損傷値、内臓解毒機能値、すべて正常値じゃな」
私からは見えなかったが、尿もカテーテルのようなもので排出されていたらしい。
血液と同様、非接触型の採尿装置から尿検査も行ったようだ。
「尿からも、魔臓や、他の内臓の障害とみられる指標は出ておらん。今のところ完全に正常と言える」
「しかし、魔法の使用は厳禁じゃ。
魔法発動でまたショックが起きんとも限らんからな」
「点滴で栄養は補給されているから、空腹は感じておらんじゃろうが、このあと流動食をはじめるぞ」
「では、妾は、夕方にまた来るからの。
それまでは、このまま安静にしておれ」
そう言うと、おかあさんに
「まだ、会話はやめておくんじゃ。
……そうじゃな、吸い飲みで少量の水は飲んでもかまわん」
何かあれば呼ぶように言うと、その女性はバルを従えて部屋から出て行った。
声を出すなと注意を受けたが、そもそも、私は声が出ないほどびっくりしていた!
(リアル「のじゃ」キャラクターじゃん!)
(そこなの?)
心の中に、ツッコミ担当も生まれちゃったよ!
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「妾の名はルチアじゃ、よろしくの」
こく (よろしく「のじゃ姫」さん)
(おねえちゃん、「のじゃ姫」って何?)
(それを話すと長くなるんだよ~)
ルチアさんは、昼間と同じ一連の検査を終えると、点滴とカテーテルを外した。
「もう問題なかろう」
どちらも非接触型デバイスになっているので、体への負担は感じなかったけど、体は楽になったよ。
「この後流動食をとってもらう。
食後は、患者を刺激しないような会話なら、ソフィさん、アリシアさんと会話して良いぞ。
じゃが、長くても一時間じゃ。
また、会話に疲れたら休むこと。
長いこと食事をとっていなかったため、消化器への負担があるからじゃ」
ルチアさんはそう言うと、次は夜中に回診すると言って部屋を去った。
「クロエちゃん……」
おかあさんは目に涙をためている。
「クロエちゃん」 アリシア先生だ。
「魔法院のみんなから手紙を預かっているわ。先生の許可が出たら読もうね」
(おねえちゃん、リナのことおかあさんに言って!)
気持ちは分かるけど。もう少し待とうか。
私もうまく説明できないし、おかあさんもびっくりしちゃうよ。
(む~ む~)
あ、わたし、リナちゃんに無断でおかあさんて呼んじゃったけど、良かったかな?
(それはいいよ!おかあさんもすごく喜んでたし、リナも一人っ子だったから嬉しいもん)
そうか~ あらためてよろしくね。
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翌日からは通常食にだんだんとなっていった。
また、リハビリも開始された。
そんな中、
「自分にトランスファーをかけてみたじゃとーーーー!」
「はい……」
みんな黙っている。
(あったりまえだよ!リナ、死ぬかと思ったんだから!)
ごめんね、リナちゃん。
(あ~ でも、あれでおねえちゃんとお話ができるようになったのかも?)
結果オーライか~
ゴゴゴゴ
負の感情をまとったマナが湧き上がる!
「お前のマナと魔臓が不適合したために、急性魔臓障害となったはずだ。
にもかかわらず、自ら不適合を助長させる愚を犯すとは……話にならん!」 バルにしては随分感情的だ!
「ひぇー!」
「は~ そりゃ、アナフィキラシーショックを起こしても当然じゃろ? よく生き延びられたものじゃ」
「クロエちゃん……」 おかあさんは何を言って良いかわからない様子だ。
アリシア先生 「クロエちゃん、あの夜は本当に大変だったのよ?」 そう言って、当時のことを話し出した。
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「血圧が異常に低い………そして呼吸素濃度も危険水準にある」
「夕食に何を食べた?」
「いつもと同じよ!
パンに、野菜のスープに、ハム!変なものを食べさせてないわ!」
「寝る前に異常はあったか?」
「何もないわ!」
「私も何も異常はなかったと思います」 とアリシアが付け足す。
「全身を見る。
クロエを下着だけにさせよ」
ソフィとアリシアはクロエを下履きだけにした。
「これは!」
クロエの体全体が光を発する中で、右脇腹の背中側、即ち魔臓手術痕のあたりが特に強く光を発していたのだ。
「………
………
この症状は魔臓を原因とする全身ショック症状と思われる。
………
ただし、今になって魔臓が突然このような状態になったことは謎だ」
ソフィとアリシアは息をのむ。
「ここでは十分な治療は不可能だ。
とりあえず24時間体制で、対症療法で生命を維持するしかない」
「従って、クロエはこれから王都の魔法大学へ搬送する」
バルディーニはパジャマ姿に戻ったクロエを横抱きに抱えた。
「ソフィ殿、アリシア先生、私の体に触れるのだ」
『最高神ユグドラシルよ、御身の力を貸し与え給え!
目的地:王都魔法大学のバルディーニ研究室、テレポート【TELEPORT】』
バルディーニを中心とした魔方陣が消えると、そこは別室であった。
その部屋の壁沿いには、複雑な魔方陣が光る「門」が設置されていた。
バルディーニがその門の魔力を切ると、魔方陣は消え失せた。休止状態になったようだ。
バルディーニは遠話で人を呼び出そうとしている。
「ルチアか?急患だ。かねてより用意しておいた部屋に至急来てくれ!」
アリシアが叫ぶ 「ル、ルチアって!もしかして、聖女様ですか?!」
ソフィ 「えぇ?」
バルディーニは何か答えようとしたが、それより早く、突然、そこに一人の若い女性が現れた!
いつのまにか先ほどの門が再び輝いていた。
バルディーニは既にベッドにクロエを横たえ、引き続きキュアをかけ続けている。
ルチアと呼ばれたその女性は一言、「診察する!」と言い、クロエの体に様々な器具を取り付けた。
バルディーニは黙ってキュアをかけ続けている。発語をとぎらせることができないため喋ることができないのだ。
みるみるうちにクロエには、呼吸器、非接触型点滴、血圧計、魔素計、非接触型採血器等が取り付けられていく。
「チアノーゼあり!呼吸不安定!血圧の大幅な低下が認められる。基礎マナ値は測定上限以上、魔臓酵素値は正常範囲を大幅に突破しておる!」
ルチアは間髪をおかず聞き慣れない魔法を発語した。
『水よ……自律神経刺激魔法、アドレナリン!』 魔法はクロエの左太ももへ吸収されていく………
ルチアはアリシアとソフィの手を借り、クロエの体を左側臥位(体の左側を下に横になる姿勢)に変え、パジャマの裾を上に上げた。
魔臓の移植痕を中心に、その部分は、いまだに明るく点滅していた。
「なっ!!」
さらにルチアは、先ほどと同じ魔法を反対の太ももへと発語した。『アドレナリン!』
発語が終わると、ルチアはクロエを仰臥位の体勢に戻し、予備の毛布で足を上げた状態とした。
次に呼吸器の調節を行った。
「呼吸素吸入を始める」
呼吸素自体も非接触型で呼吸器へと供給されているようだった。
やがて、患部らしき魔臓の点滅は、輝きを保ったまま一定の光に変わっていった。
「なんじゃ………これは?」
魔臓移植あとの光が一定となると、呼吸困難もやがて収まっていった………
容態が安定したのを見て、ルチアは息をついた。
「おい、バル、もうキュアは大丈夫じゃろ。いったん止めよ」
「わかった」
「バル、お主、責任問題じゃぞ。
一体何があったのじゃ?」
それに答えられるものは誰もいなかったのだ。
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いきさつを聞き、私は真っ青になった。
「………なんか………すみません………」
バルは私を睨んでいる。
ルチアさん 「クロエが回復したのじゃ、お主、里に行って説明してこい」
バル 「………………」
「ん?なんぞ不満か?」
バルは黙ったままだ。
あのバルが、反論しない。
「……いや、確かに一度直接報告するか……」
「まったく、二年間も帰らずに、しょうがない奴じゃ」
あ、察しちゃった。バルの黒幕組織がなんだか分からないけど、バルったら報連相を怠ったのね~
なんか、バルらしい気もするよ、唯我独尊だからね。
でも、バルがやり込められるところ、初めて見たかも………
結構眼福だね!
くすっ。
思わず笑っちゃった。
「こりゃ!」
「「クロエちゃん!!」
(おねえちゃん、め!)
怒られちゃったよ。
バルは深いため息をついたのだった。
幸せが逃げるよ、バル。
クララ「クロエちゃん!待っていたんだよ!」
クロエ「クララ、私がいない間、あいさつありがとう!」
「クロエちゃんがいなくなって、私、クロエちゃんに偉大さが分かったの!」
「そうでしょう、そうでしょう」
「私には、クロエちゃんみたいに、ぼけ?とか、つっこみ?が無理だってこと」
「そこかーーーい!」




