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チートなんてない!(連載)  作者: ayane_project
第一章

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83/91

083 ショック

クロエです!

読者の皆さん、しばらくの間お別れしなくてはならなくなりました!

必ず復活するから待っててね!

(………)

(……ゃん)

(……おねえちゃん!)


ばっ、

私は思わず起き上がった。

今、確かに声が聞こえた!


おねえちゃんって、私が呼ばれたんだよね?

今まで、私に前世のエピソード記憶って一つもなかったけど、私に妹っていたのかな?


うーん、全く思い出せない。

私の記憶は空白のままだ。


そして、起きている間はあの声は聞こえない………


のど飴作りが中止となったため、アンヌとクララは寮に戻った。

いま、うちで寝ているのは、おかあさんとアリシア先生だけだ。


今何時頃だろう?

真夜中のような気がする。


おかあさんとアリシア先生の寝息が聞こえるな。




なんだか眠れないな………


バルの言葉によれば、私のマナは特別なんだそうだ。

きっと、私の出生に関わることなんだろう。


それにしても、なんでこんなに秘密主義なのかな?

知っていることがあれば、別に何でも話せばいいだろうに。

この世界に何の利害関係もなかった私に、なんで隠す必要があるのか意味が分からないよ。


でも、バルの背後には少なくとも教会がいるのは間違いないと思う。

つまり、大きな権力がいるということだ。

だとすれば、私の出生を私に教えないことは、教会とか、その大きな権力者にとってメリットがあることなんだと思う。


別に、私はおかあさんとか、周りの友達が幸せなら、他に望みなんてないのに………




そんなことを考えているうちに、ふと思いついたことがあった。

私のマナに、リナちゃんの魔臓が過敏に反応して魔臓障害になってしまうって、アレルギー反応に似てないかな?


マナが基準値以下なら何も反応しないけど、それが積もり積もって一定値を超えてしまうとアレルギーを起こす………

そして、それ以降はちょっとしたマナでも魔臓が過敏に反応してしまう………

なんだか、ほんとにアレルギーみたいな感じだ。


だとすれば、通常の治療としては、ステロイドの投与ということになる。ステロイドの効能としては、炎症の抑制や、免疫反応の調整だったはず。

そのように考えたら、いかにも急性魔臓障害に効きそうだ。

だけど、当然ステロイド剤などというものがこの世界にあるはずもない。もしかしたら、キュアでさえも害になり得るのかも?

バルが安静にしとけとか、体調を整えよとかいうのも、アレルギー反応を抑えるという観点からだとすれば、自然な対処法だと思える。


だけど………

私のマナに対してリナちゃんの魔臓がアレルギーを起こしているのだとすれば、ずっとこのままマナの制限を続けることになってしまう。

それはいやだ!

だって、私からマナをとったら何にも残らないんだよ?

もう、マナ電池ですらなくなっちゃうんだよ?




そう考えると、残る選択肢は一つだけになる。

つまり、アレルゲン免疫療法(減感作療法)だ。

私のマナを、魔臓に直接トランスファーし、魔臓にマナを慣らすのだ。

体外にマナを譲渡する過程で魔臓を通過させるのではなく、マナの譲渡先に自分の魔臓を指定するのだ。


それしかない。




まわりの気配を伺う。

おかあさんもアリシア先生もぐっすり寝ている。


じゃあ、試しにやってみよう。

どうか、いい結果になりますように!

私は左脇を下にして海老のように丸くなった。そして、両手で右脇腹を包むように手を回した。


『リナちゃんの魔臓よ、どうか私のマナを受け入れて、トランスファー』

と、おそるおそる発語してみる。

右脇腹がピカッと光った気がしたけど、それ以外は何も感じない。


うーん、心配することもなかったかな?

じゃあ、本番だよ。

『リナちゃんの魔臓よ、どうか私のマナを受け入れて下さい、そして私が自由にマナを扱えますように、トランスファー・スーパー・ハイ!』


私の手から目映い光があふれ、その光は外部に放出されるのではなく、脇腹に吸い込まれようとした!




最初は右脇腹が熱いだけだった。


あれ?

そう思った瞬間だった。

胸の奥まで熱が駆け上がる。


「ああああああ!!!」


息が……



息が吸えない!


喉が締め付けられるようだ!

口が空気を求めてパクパク動く。


苦しい!


苦しい!


なにこれ!


心臓がどくどく脈打つように暴れてる!


右脇腹だけじゃない!

体中が熱い!


「――――っ!」

思わず声にならない悲鳴が漏れた。


次の瞬間、今度は体中が冷たくなる。

視界がぐるっと回る。


どさっ

ベッドから転がり落ちた!

(―――助けて!)




________________________________________


十数分ほど後、

深夜、ソフィのアパルトマンのドアをたたく人物がいた。

バルディーニだ。

ドンドンドン!

ドンドンドン!

アリシアが慌てた様子でドアを開けた!

「先ほど、クロエの魔力監視に異常な反応があった!

何があった?」

「解りません!でも、クロエちゃんが!」


バルディーニはアリシアの横を抜けると寝室とおぼしき部屋に駆けつけた。

「どうした?」

「わからないの!クロエちゃん!クロエちゃん!」 ソフィがクロエの体をゆする!

「診察する。

アリシア先生はソフィ殿を頼む」


クロエの全身は白く輝いていた。

「クロエちゃんが急に大きな悲鳴を上げたの!」 ソフィが泣きながら叫ぶ。

しかし、今やクロエは叫ぶこともできないようだ。

高い吸気音とゼーゼーと排気音を繰り返している。

みるみるうちに唇も紫色に変わってきた。


「いかん!

『水よ!キュア!』 バルディーニが緊急発語する。

気道の収縮が少し緩和されたようだが、いまだに呼吸に異音が残る。


「アリシア先生、私の鞄から魔素関係の測定器を出してくれ!」

「はい!」

しかしアリシアには器具の準備方法は解らない。

「今、キュアを止めるわけにはいかん!

器具を側に並べてくれ!」


バルディーニは、クロエの胸をはだけた。

そして、口腔内、喉、胸にと順にキュアを発語しては様子を見ている。


少し呼吸が落ち着いたところで、魔素測定器をクロエの左腕に装着した。

「血圧が異常に低い………そして呼吸素濃度も危険水準にある」


「夕食に何を食べた?」

「いつもと同じよ!

パンに、野菜のスープに、ハム!変なものを食べさせてないわ!」

「寝る前に異常はあったか?」

「何もないわ!」

「私も何も異常はなかったと思います」 とアリシアが付け足す。


「全身を見る。

クロエを下着だけにさせよ」

ソフィとアリシアはクロエを下履きだけにした。

「これは!」

クロエの体全体が光を発する中で、右脇腹の背中側、即ち魔臓手術痕のあたりが特に強く光を発していたのだ。


「………

………

この症状は魔臓を原因とする全身ショック症状と思われる。

………

ただし、今になって魔臓が突然このような状態になったことは謎だ」


ソフィとアリシアは息をのむ。


「ここでは十分な治療は不可能だ。

とりあえず24時間体制で、対症療法で生命を維持するしかない」


「従って、クロエはこれから王都の魔法大学へ搬送する」


「そんな!」 ソフィが叫ぶ

「王都まで馬車で10日はかかります。むしろ危険ではないでしょうか?」 アリシアが質問する。


「大丈夫だ。

ただし、ソフィ殿にはクロエに同行をお願いしたい。

女性の身の回りの世話は、どうしても同性の助力が必要だ」

「もちろんです!」

「また、可能であれば、アリシア先生の同行もお願いしたい。

魔法大学の事情が分かるため、現地での手配が円滑に済むからだ」

「分かりました。隊長に許可を取る時間はありますか?」


バルディーニはクロエの魔素測定器を確認し、一連のキュアを再度かけた。

「ソフィ殿には、クロエと自身の身の回り品を準備してほしい。

速やかに………そうだな、30分で用意できるか?」

「分かりました!」

ソフィはすぐに支度を始めた。

「アリシア先生の身の回り品は現地で調達をお願いしたい。その費用は教会が全額負担する」


バルディーニは遠話の魔法を発語した。

『風よ…………ヴィクトールよ、交信せよ、コレスポンド【CORRESPOND】』

「…………

…………

ヴィクトールよ、こちらはバルディーニだ

…………

そうだ、魔法で遠方から話している

…………

手短に言う。現在クロエが危篤状態にあり、モデルテでは対処が困難であるため、これから王都の魔法大学へ搬送する

…………

いや、わからない。それよりもだ。用件はクロエの世話のためアリシアを借りたいのだ

…………

…………

感謝する。詳細は別途連絡する」


やがて、ソフィが準備が完了したと告げた。

バルディーニはパジャマ姿に戻ったクロエを横抱きに抱えた。

「ソフィ殿、アリシア先生、私の体に触れるのだ」

『最高神ユグドラシルよ、御身の力を貸し与え給え!

目的地:王都魔法大学のバルディーニ研究室、テレポート【TELEPORT】』




バルディーニを中心に4人のまわりには魔方陣が現れた。

魔方陣は複雑な円環を描きながら周囲を巡っている。

やがて、バルディーニのマナの流れから座標を特定したかのように魔方陣が輝き始めると、4人の姿を覆いだした!


魔方陣が消えた後には誰もいなくなっていた。


こうして、孤児院で目覚めてから二年間にわたってモデルテ市で積み重ねてきたクロエの日常は、突如として終わりを告げたのだった。


ここまでご一緒していただいた読者様に感謝を!

クロエの物語は始まったばかりです。これからも末永くお付き合いいただければ幸いです。

今回、生成画像が作れませんでした。子供の病気のシーンがコンテンツポリシー違反となってしまうようです。ですが、基本的に読者様のイメージを膨らませやすいよう、一話一画像をアップしていきたいです。

また、恐れ多いことですが、ブックマーク登録や評価ボタン(高評価低評価にかかわらず)をお願いします。投稿して良くわかったのですが、読者様からの反応が作者のモチベーションに直結しておりますので、ご協力をよろしくお願いします。

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