080 魔法が制限される毎日
クロエです!
放課後に自由な時間があっても、コンビニとかないし、スタバでカフェラテとかも飲めないし!
みなさんは、放課後どうしてました?
というわけで、急性魔臓障害患者のクロエです………
朝の日課が終わって、1限の防御魔法の時間が始まると、バルは、ルーカス、アーサー、マリィの防御魔法をチェックして改善点を指摘すると、私の魔臓検査をするようになった。
肝臓障害だとしたら、前世なら、まず血液検査をするところだけど、この世界ではそんなものはない。
と、思ってたら、バルが採血キットを持ってきて採血したよ!
ちょっと!オーバーテクノロジーだろ!
しかも、採血キットがおかしいの!血管に針を刺さず、皮膚に当てるだけで皮下にある静脈から血液が採取できるんだよ!
みんな、そんなものかと不思議に思ってないけど、こんなのおかしいじゃん!
はぁ~ こういうところに基礎研究の積上げがない弊害を感じるよ………
「血液検査では、やはり魔臓破壊の影響値が上昇している」
………ASTとかALTみたいなもの(肝機能の指標)かな?
「ローブを脱ぎ、ブラウスの裾を持ち上げろ」
………アーサーはチラチラ見てるし、ルーカスは目を背けてるんですけど。
「早くしろ」
………もう、分かってるもん。昨日は見直したけど、やっぱりこいつはデリカシーはないし、基本傍若無人だ!
私がブラウスの裾を持ち上げると、魔臓のあるらしい位置に向かって、
『水よ…………エコー!』
あ~これも一年半ぶりだね。
しかし、今になって初めて理解できる。バルの魔法は異常だよね。エコーなんて魔法、音波とか波動の概念がなければ、発語できるわけないもの。
バルは、以前のエコーと異なり、私に息を吸わせたり、息を止めさせたりしながら、少しずつ角度を変えて発語した。
「やはり、魔臓の炎症が認められる」
「ふむ。
お前の場合症例というべきものが存在しない。今日のところはキュアも止めておこう。睡眠は十分とっているか?」
「はい」
「………そうか、2~3日経過観察とし、炎症に改善が見られなければ、少しずつキュアをかけることにする」
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1限の防御魔法の理論研究を終えると、2限にはアリシア先生が来てくれるので、先生と一緒に一年生のトランスファー巡りをすることになった。
「アリシア先生もすっかり魔法院の先生ですね」
「パオロ先生が風コースの教師報酬をくれるのよ。一応隊長に聞いたのよ?そしたら、いいからもらっとけ、ですって」
「わあ、じゃあ衛士隊のお給料と魔法院のお給料で、すっかりお金持ちですね!」
「いや、クロエちゃんのいる間だけだからね!」
「じゃあ、私が魔法大学に行く時、先生も一緒に行きましょうよ」
「それだと、無報酬になっちゃうんだよ~」
「あ、そうか」
「お金をもらって研究できれば、言うことなしなんだけどね~」
バルとの約束で、エリアトランスファーではなく、初期の去年のやり方でのトランスファーに制限されているので、一年生一人一人にトランスファーをかける。一年生は30人なので、何のかんので2限は大体潰れる。
一年の風コースは、ルナ一人だ。
ところが、そこに一人の男子生徒がいた。
うわっ ベルナールだ。
アリシア先生はベルナールの留め金の色を見て、
「あなたは二年生ね。この時間は派遣で魔法院にはいないはずよ。ここで何しているの?」
そうか、アリシア先生は今の体制になる前は放課後からの護衛だったし、そもそも水コースに私は行く機会もないから、ベルナールの「やらかし」は知ってても、顔は知らないんだ。
「僕はベルナールと言います。派遣の前提となる水魔法が未取得のため魔法院に残っています………」
と、悔しそうに答えた。
「そう………それがなぜ一年生の教室にいるのかしら?」
「あの!」 とルナが口を挟む。
先生が顔を向けると。
「クロエ先輩のトランスファーを受けられるのは、一年生だけになるって聞きました!」
「でも、ベルナールさんが困ってるから、ここで一緒に受けられないかなと思って!」
「あ~ ルナちゃん、ごめんね?詳しい事情は説明できないけれど、それはダメなのよ」
「私たち!」
ルナは顔を真っ赤にして言いよどむ。
ん?
「わ、私たち、こっ、婚約を前提にお付き合いしてるんですっ!」
え?
えぇーーーー?
先生 「そ、それは良かったね………?」
だからなに?という顔だ。
ベルナールが後を引き取る。
「クロエさんは水コースに来ないから知らないだろうけれど、僕は一人だけ専門魔法の発語訓練が遅れているんだ………」
(知ってます。結構有名です)
「去年のいきさつがあるから、僕がクロエさんにお願いすることは受け入れがたいかもしれないけれど」
(もちろんです)
「ルナと付き合うことになったので、彼女のためにも心を入れ替えて魔法習得を頑張らなければいけないんだ」
(はあ?)
「君たちキラキラ会の婚約の話は有名でね、婚約の際の誓いの言葉に祝福をもらえると、ありがたいと思ったんだ」
なーるほど!
ルナがキラキラした目で話す。
「皆さんの婚約式の話!一年生でも有名です!私たちも婚約の際にはあんなに素敵な式ができたらいいなって、思いました!」
「「どうか私たちにも祝福をお願いします」」
そういうことなら、一肌脱ぎましょう!
私は先生を見る。
お願い!目で許可を訴えかけた。
「しょうがないな~ でも、あなたたち、誰にも言っちゃダメよ?破ったら、魔王みたいな人がやってくるからね」
ルナとベルナールは、自分たちも、まだ婚約に向けて準備を進めている段階なので、公になると破談となる可能性があるらしく、自分たちもそうだが、私たちにも絶対人に漏らさないで欲しいと、逆に釘を刺されてしまった。
ベルナール
「アリシア先生、ミレーヌ先生にも黙っていてくださいね」
「分かったわ~」
じゃあ、ひさびさに祝福の発語、やってみようか!
「ほんとは、式では、もっと色々あるんだけどね、誓いと祝福だけを取り出すとこんな感じ」
「ベルナールよ あなたはここにいるルナを
病める時も 健やかなる時も
富める時も 貧しき時も
妻として愛し 敬い 慈しむ事を誓いますか?」
ベルナール 「はい」
「ルナよ あなたはここにいるベルナールを
病める時も 健やかなる時も
富める時も 貧しき時も
夫として愛し 敬い 慈しむ事を誓いますか?」
ルナ 「はい」
私は二人の手を取って………
『ここに、二人の婚約は――なされた。
これを祝い、二人にマナを授ける、トランスファー』
二人には、私から白い光が流れ出た。
ルナ 「わぁぁぁ~」
ベルナールはじっと噛み締めているようだ。
「本番ではトランスファーではなく、ブレッシングって言う発語をしたんだけどね」
ベルナール
「それをやってみてくれませんか?」
「いや、これは本番用だから!練習でやると、ありがたみがなくなっちゃうよ」
それでも、ぜひにと言われた。
顔を赤くしているルナを見て、ちょっと情にほだされてしまったよ。
『二人の婚約に幸いあれ!ブレッシング【BLESSING】!』
先ほどより強い光があふれ、二人を包んでいく。
ベルナール
「おぉ!体にマナが満ちてくるぞ!」
ちょっと!マナのことばかり喜んでないで、ルナと一緒に祝福を受けたことを喜びなよ!
一方でルナは、婚約の祝福に感極まっている。
ぽつりと、
「叔母さんも喜んでくれるかな………」
と、つぶやいた。
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それ以来、放課後の時間が余るようになってしまった。
みんなは夕食遅い時間まで帰ってこないし、思いついてうちに行ってみる。
おかあさんは外出してた。
お仕事に行ってるなら、ヴァロンティンヌの可能性が一番高いかな?
「アリシア先生、連れ回してごめんなさい」
「いいよ~ ここのところ市庁の各現場と魔法院の往復ばっかりだったし。服屋さんに行くのはいい気晴らしだよね~」
ヴァロンティンヌには、ひと組のカップルがいた。
ルーカスのお兄さんであるテオドールさんと見知らぬ女性だ。
「これは、クロエさんにアリシア先生」
テオドールさんは女性を紹介した。
「今度結婚するカミーユを紹介するよ」
カミーユさんは、この春魔法院を卒業して、市の商業部に就職したそうだ。
「商業部の組合課で働いています」
ほほー 経済産業省中小企業庁みたいなものかな?
二人は結婚式のドレスの件で来たらしい。
ヴァロンティンヌさんとおかあさんと一緒に、ウェディングドレスを検討していたようだ。
「一生に一回のドレスなのよ!どれにしようか迷っちゃうわ」
お店にはマリィの着たドレスが飾られている。エリス、アンヌの着たドレス、それに月1点の約束で追加したドレスは、デザインブックの形でお客様に見てもらえるようになった。
「やっぱり新作にした方がいいわよね~」
「カミーユならどれを着ても美しいよ」 と、テオドールさん。
ルーカスといい、テオドールさんといい、イケメン家系め!
ドレスが決まり、仮縫いなどスケジュールを詰めると雑談となった。デザインブックやらスケジュール表などを片付けると、店員さんお茶を入れてくれた。
「クロエちゃん、体大丈夫なの?」 おかあさんが心配してくれる。
「どこもなんともないよ!他のみんなが遅くまで頑張ってるのに、私だけふらふらしてて申し訳ない感じ」
「あなたは、いつも頑張り過ぎちゃうから………アリシア先生、どうなんでしょう?」
「はい、バルディーニ先生が最新の検査機器と検査魔法で毎朝診察していますし、魔法の制限は私が見ていますので。
今のところ体調は回復しているように思います」
「眠かったり、だるかったりも、寝不足かなって程度だったし、今はどこもなんともないんだよね~ ほんとに魔法使っちゃダメかな?」
「ダメです!」「ダメに決まってるじゃない」 おかあさんとアリシア先生は即座に反応した。
「クロエちゃんのそういうところ、本当に危ないわ………」 おかあさんごめんね。リナちゃんの魔臓のことだから、ここは私が悪かったね。
話を変えて、ヴァロンティンヌさんに
「ドレスの保存魔法はいかがでしょうか?」
「ええ!バッチリよ!なんだかね、ドレスがほのかに輝いてるの!ゆーぶいけあ?魔法?って素晴らしいのね!」
「ほんとに綺麗なドレス………」 カミーユさんはうっとり見とれてる。
私はヴァロンティンヌさんに、
「ドクターストップがかかってしまって、保存魔法の追加発語ができない状態なんです。輝きが薄れてきたら教えてください。医師(っぽい奴)に魔法を使って良いかどうか確認しますので」
カミーユさんにお仕事のこと聞いてみた。
「組合課はね、文字通り各種商業組合と市庁との間の折衝や連絡を行うところなのね。でも、そうした仕事って、要職同士の打ち合わせになるでしょう?新人なんて使い走りなのよ」
会議の時間の連絡や、取り次ぎ、お茶くみなんかが仕事の大半なんだそうだ。なんか前世を彷彿とさせるよね!
「でも、おかげでカミーユと仕事中によく会えるんだよ」 と、テオドールさん。
「ん、もう!テディ(テオドールの愛称)ったら、ほんとは必要があまりない用事で来るんだから!」
「いいじゃないか、カミラ(カミーユの愛称)に会いたいんだよ。カミラだって嬉しいでしょう?」
ほほう!イチャイチャが止まりませんな!
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おかあさんとアリシア先生と3人で帰る。
せっかくおかあさんと会えたので、うちに帰って3人で夕ご飯を食べる。
「私、魔法の訓練ができないから、しばらく放課後はおかあさんと一緒にお仕事してもいい?」
「それは願ってもないことだけれど、アリシア先生の負担も考えないとダメよ」
「あ、ソフィさんそこは全然問題ありません。クロエちゃんの護衛任務がなかったら、衛士の詰め所で毎日訓練ですから!こちらの方が私も嬉しいです」
私はおかあさんからうちのスペアキーをもらった。
ほんとに我が家っぽくなってきたな!
アリシア先生と寮への帰り道。
「『風のみち』の男達は口達者だよね」 と、アリシア先生。
「イケメン兄弟ですよね!」
「私は、ああいう口のうまそうな男はダメだなー。テオ君みたいな子がいいよ」
「テオは水コースの女子に愛されてますよね!アンヌも気をつけないと」
「いや、アンヌちゃんとテオ君のカップルは大丈夫でしょ!
………それよりさあ………ベルナールだよ」
「ああ………」
「あの二人、大丈夫なのかな………」
クロエ 「アリシア先生!私コーヒーが飲みたいです!」
アリシア 「コーヒーって何?」
「コーヒーの豆を焙煎して、それを粉々に砕いて、お湯をかけて、抽出した飲み物です!」
「大変そうね………………それって甘いの?」
「………苦いです」
「えーじゃあいらない」
(説明が下手だったかも)




