067 東村へ
クロエ「幌馬車に揺られての旅だよ!次はカントリーな歌を作ろうかな」
婚約式の歌はこちら。みんなのドレスやケーキカットも描いてます!
https://youtu.be/V3SjtHurQoY
朝6時の鐘が鳴る。
マナ供給参加者は、市中央広場に面した魔法院の正門前に集合した。
今回旅を共にするのは、引率者のフィルミン農業長、キラキラ会からクララ、クロード、マリィ、テオ、アンヌと私、アリシア先生、土コースから、ジャンヌ、ロラ、リザとエミール、総勢12名。
みんなで幌馬車2台に乗り込む。
1台目はフィルミンさんが御者で、御者席にはマリィも座る。フロート担当だ。あとは、東村の案内でロラ、クロード(マリィがいるから)ジャンヌとエミール(新カップル)
2台目はアリシア先生が御者で、御者席に私、アンヌとテオ、クララ、リザと、6人ずつに分かれた。
馬車を引く馬は2頭ずつ。
さあ、出発だ。
アリシア先生は二日酔いだ…………
「スパークリングワインはやばいね……うっぷ!
ミレーヌと魔法院寮で宴会なんて、現役時代もやらなかったからさ! っっぷ!」
二人とも、とっても盛り上がってたもんね。
「先生大丈夫?
トランスファーかければ少し楽になると思いますけど?」
「お願い……」
『アリシア先生の二日酔いを治して、トランスファー』
馬を操っている先生の邪魔にならないよう、先生の首に手を伸ばして、肝臓や胃腸を癒やす思いを込めてマナを渡す。
役に立つか分からないけど、心の中でさらに詠唱する。
(ウコンっぽい力で、アセトアルデヒドを分解。体の免疫力を向上せよ、トランスファー)
先生の体がぽわっと光る。
「はぁ~ 気持ちいい~」
…………
…………
「ありがとう、クロエちゃん!
復活!というか、なんだか元気百倍だよ」
よかった~
「インジェクト・カーボニック・アシッド・ガス【INJECT CARBONIC ACID GAS】は、当面私専用の魔法だろうね~
クロエちゃんから特訓を受けないと、使えないだろうから」
「あと、飲んべえじゃないと想像力が働かないかも」 くすっ
「そうかもね~ 飲みやすさが増して限界を超えちゃったよ」
「ミレーヌ先生は平気そうでしたけど」
「まあ、食いしん坊だし。
水魔法士だから、自分でキュアかけられるし。
でも、クロエちゃんのトランスファーの方が効果は上だけどね」
…………
…………
ぽく、ぽく
馬車は、ひとがゆっくりジョギングするくらいのスピードで、市門を出た。
…………
「クロエちゃんのトランスファーは、マナを受け取る人の状態を変化させるんだね~」
「そんな感じです」
「だからまわりの人の魔法力も伸びたんだね~」
「たぶん」
「それはバフ魔法ってことだよね~」
あ、
なるほど!
「言われてみれば、そうですね」
「普通のバフ魔法と違って、影響を永続的に与えられるところが特徴だね~」
「そういえば……
あ、でもスリープは一時的なバフですよ?」
「術者の意志で、そこもコントロールできちゃうんだね」
…………
…………
「クロエちゃんを利用したくなる人がますます増えちゃうね…………
私の責任も重大だね!」
ちょっと気が重くなった。
アリシア先生は手綱を片手で持って、私の頭をポンポンする。
「やりがいがあるってこと!
魔法研究者としても面白いしね!」
市門を出たところで小休止。
左手に給水塔が見える。
給水塔につながる水路で、馬に水をやる。
私はフィルミンさんに了解を取って、そっと馬に近寄る。
「お馬さんたち、私のマナもらってくれるかな~
元気になあれ、トランスファー」
ぶるる!
気に入ってくれたみたい。
「この後もお願いね」
ぶる!
アリシア先生がフロートをローでかける。
石畳と違い、ぬかるみや轍にはまることが多い土の街道では、フロートをかける魔法師がいるのといないのとでは、通行に大きな差が出るそうだ。
「いかに低い出力で長くかけるかがコツよ~
浮かすんじゃなくて、荷重を減らすようにコントロールするのがうまいやり方ね」
先生勉強になります。
東門を出た先は、なだらかに平野が続いている。
その平野の起伏に沿って、家畜の放牧地や、林が広がっている。
村に近づくにつれ、パッチワーク状の畑が見えてきた。麦を播く前の土がむき出しとなっている春耕地の畑や、冬耕地の畑には冬野菜やたぶん大麦かライ麦が育っている。それに休耕地らしき場所。
東西に走る街道を中心に、北は見渡す限り畑だ。
南はしばらくすると森となっている。
馬車は、早足で2時間くらい進んで東村についた。
広場に馬車を止める。
村長自らお出迎えだ。
「おお、フィルミン殿、今回はかたじけない。
歓迎しますぞ!」
私たちはすぐファーティライズの発語を始めることになった。
「時間がもったいないからな」 とフィルミンさん。
農村の周囲には、種まき前の土地が広がっている。
私たちがファーティライズを唱えた端から種まきをする予定だそうだ。
ロラ、クララ、ジャンヌ、エミール、クロード、リザの並びで一列になってみた。
ロラとジャンヌをクララの力で、エミールとリザをクロードの力で補う配置だ。
私、フィルミンさん、村長さんは6人の後ろに立つ。
マリィとアンヌとテオは全員分のお昼ごはんを持っている。
『土よ、主神デーメーテール様に信仰を捧げる、マナを集めこの土地に注ぎ給え、ファーティライズ【FERTILIZE】・(ハイ)』
クララとクロードは、やや遠方をめがけてハイを、他の4人は手前に通常発語をしたところ、40m四方(=16アール (a): 1アール = 100㎡(10m × 10m))の畑にマナがしみこんだ。
種まき待ちの村人から、
「おお!」
「こりゃすごい!」
拍手が湧き上がる。
私たちは、奥に進む。
「すごいが……何回できるのやら…………」 と村長は心配している。
4回発語すると、覚えたての土コース組(ロラ、ジャンヌ、エミール、リザ)がへばってきた。
「じゃあ、いくよ~
『頑張った土コースの4人にマナを譲渡、トランスファー』」
すると、白い光が四つに分かれて、みんなに届く。
クララとクロードには届かないように調整した。
ふとクララを見るとジト目になってる…………
なんだろ?
クララにアイコンタクトを送ったら、首を振ってため息をつかれた…………
ほんとに何だろ?
私たちは、40m歩いてはファーティライズ発語、ファーティライズ4回でトランスファー発語、トランスファー5回目の時にクララとクロードを含めて全体トランスファーをする体制が整ってきた。(1回16アール×4×5=320アール)
それを3回やって960アール、つまり10ヘクタール弱になった。
1時間くらいたっていた。
私たちは持参した黒パンと、クララとテオが出してくれたお水で簡単な昼食を取った。
種まきは村人総出でやっている。
それで、私たちのマナ供給した畑は既に種まきの作業が追いついている。
昼食を終えるとすぐ作業を再開した。午後はこの作業を6セットこなすことができた。
67ヘクタールである。
「いや~ すごい!
こんなにマナを供給できるなんて」 と村長さん。
フィルミンさんも 「予想以上の結果だ!秋の収穫が楽しみだな」
食堂となる場所もないので、広場で食事をしている。
オートミールとスープが主だが、村の好意で豚を調理して出してくれた。
明日朝から一日やれば、今日の2倍はいくだろうから、200ヘクタールくらいにはなるのかな?
クロード 「これで農地のどれほどにマナ供給できたのでしょうか?」
村長 「そうですな、春耕地としてはすべてマナ供給できると思います。
みなさんのマナ供給はとんでもないですからな。村のものでは種まき時期に間に合わなくなりますので、今回は本当に助かりました」
「種まき時期に合わせて、早い時期からマナを供給すればいいのでは?」
クロードは商人の子供だから色々と知りたいのだろう。
「うーん、どうでしょうか。今までの経験で言えば、マナの供給と種まきの時期が離れてしまうと、作物のマナ吸収があまり良くないのですよ」
「なるほど」
私も前から疑問に思ってたことを聞いてみた。
「小麦って、秋に播いて翌年の初夏に収穫はしないのですか?」
気候的にはこっちの方が普通のような気がするけど……
「秋にですか?いや、それでは芽が出ないのでは?」
うーん、マナの影響か?それとも品種が違うのか?
専門家がそう言うならそうなのかも……
私たちの学年では、都市出身が14名(私もカウントして)。
農村出身者が24名である。
もっとも、流行病の影響は感染が拡大しやすい都市生活者の方が影響が大きかっただろうから、普通ならもう少し都市出身者が多いだろう。
仮に都市人口と農村人口を1:1と考えれば、以前都市圏人口を5000人と考えたから、農村人口が2500人となる。
周囲に5村があるので、1村あたり500人。
5人家族だと100家族。
いや、農奴を考えていなかったな……農奴を20%としたら自由農400人 ・80家族か…………
1家族あたり2.5ヘクタールもあるぞ?
しかもこれ、春耕地だけだから、実際はこの3倍?
私の計算がおかしいのか?(推論に推論を重ねているだけだし)
あるいは農業生産力が低いのか…………
三圃制って農業生産力を爆発的に底上げしたんじゃなかったっけ…………
この村出身のロラに聞いてみた。
「ねえ、この村って何人くらい人がいるの?」
「え? そうだね~
ひと家族6人と農奴二人として8人とするでしょ?」
ふむふむ
「家が、そうだな~ 50戸とするでしょ?」
ふむふむ
「400人くらいはいるかもね!」
そんなに予想と違わないか。
ロラは私たちを家族に紹介してくれた。
クロードが代表して挨拶する。
「ロラが一年でファーティライズを発語するとは」
「ほんとにねえ。村の自慢ですよ」
マリィ 「ロラさんは総合成績21位、土魔法で5位なんですよ。
マナ値も例年の平均に対して倍もあるんです」
ご両親とも嬉しそうだ
「これであとは婿を連れてきてくれたら文句なしだが」
ロラ 「農家出身の土魔法師で、次男以下って条件が厳しすぎるよ…………
私たちの学年人数がほんとに少ないんだ」
ロラが妹さんを紹介してくれた。
「ノアっていいます」 ぺこり
ロラ 「クロエちゃんお願い、ノアにトランスファーを発語してくれる?」
「いいよ~ ノアちゃんはいつ魔法選別の儀になるのかな~」
「次のとし」 あ~ネロやさちと一緒だね
「私の妹と一緒だね!なんの魔法を授かりたいの?」
「水がいい!」
そうか~
私のトランスファーを知ってるロラに目を向けると頷いた。
『ノアのマナが増えて水属性を授かりますように、トランスファー』 ノアを抱きしめた。
「ふわぁ~ 気持ちいいよぉ~」
私のお願いで農奴の二人にも会わせてもらった。
20代の男女だった。
二人とも――顔色が明らかに悪いな…………
事情を聞いたら元は都市出身らしい…………
ロラの家で特に冷遇されているわけではないとのことだった。
「生まれたときから一緒だし。農家は家畜も家族も農奴も一緒に暮らすからね」 とロラ。
「だけど、両親と農奴二人で4人分の税金を納めなきゃいけないし。農奴は労働でそれを穴埋めしなきゃいけないから、どうしても大変だよ」
クララ 「マナが少ないから健康や寿命の問題もあるのよ」
私は農奴二人にも、ご両親にも、こっそりトランスファーを発語した。
翌日、夕暮れまで東村でファーティライズを発語した私たちは、2台の馬車で北東村へ移動した。
村境で小休止となったとき。
私は2日滞在した東村に向かって、
『東村の村人に、農奴の人たちに、牛や馬や豚さんに、そしてすべての土に、エリア・トランスファー』
東村の空に――マナの虹が架かった。
マリィ「ロラは誰かゲットしたの?」
ロラ「まだ。土だとモーリス、アルバン、ガストンあたりなのかな」
「兄弟いるか聞いたの?」
「お茶会は火コース相手だったし。なんとなく恥ずかしくて、そういうの聞けてない」
「ロラは男兄弟いないから、恥ずかしいか~」
「うん」
ロラにも勇気を出して欲しい方は、リアクションを!
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