064 異例ずくめの期末試験
クロエです。
属性魔法は発語できないけど、できるだけ頑張りますね!
3月11日は一年生の後期期末試験だ。
試験場は、前期と同じく東門を出て少し歩いたところにある、魔法院の演習場である。
パオロ先生
本日は、市庁から来賓が来ております。
フェデリーコ市長、エメリック総務長、アルデリック出納長、ラファエル保健長、フィルミン農業長、ジュリエット建設長です。
フェデリーコ市長からご挨拶を頂きます。
「魔法院生徒のみなさん、市長のフェデリーコと申します。
先ほど来賓と紹介を受けましたが、単なる見学者だと思ってください。
そうですね………「魔法使用状況の現地説明」授業があるでしょう?
それと同じように考えて下さい。
要は、我々も教育現場を見たいのですよ」
にっこり笑って、すみでおとなしくしているからと挨拶を終えた。
エリス (パパ!なんで来てるのよ!)
アンヌ (父ちゃんいなかった! セーフッ!)
市長の軽い挨拶を聞いて気が抜けた生徒の中、
……ただ一人、ベルナールだけが青ざめていた。
パオロ先生
「いつもは各コース同時に開催しますが、今回は試験を大幅に変えたことと、見学者への説明があることのため、マナ基礎値の測定後は、同時開催は見送り、順番に試験を行います」
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最初は、マナ基礎値測定(200点満点)だ。
各コース別に、マナ基礎量の測定を行う。
各担任の指示に従い粛々と測定される。
パオロが市長達の席で説明する。
「今年の一年生は、前期期末試験のマナ基礎値が例年の20点に対して平均27点を出しました。
後期基準点50点に対して67点取得できれば(35%アップ)、前期と同等の伸びということになります。
測定は、前期のマナ基礎値が低い生徒から順番に行います」
すると、風コースで高い点が出た。
「アーサー、風、男、86点!」
「「「おお」」」 来賓から声が上がる。
「しかし風ではな………」 そんな声もある。
そこへ水コースから
「テオ、水、男、141点!」
「なんだと!」 ラファエル(保健長)が叫ぶ!
「すごいぞ!この子一人でどれだけ治癒院が助かることか!」
アルデリック(出納長) 「前期の値が低い順番ではないのか?」
パオロは手元の数値を見ながら汗をかく
「確かに、確かに。
お待ちください………あの生徒は前期水コースで最低値でした………
一体どうしたんだ?」
パオロにはその理由は分からない。
どのコースも60後半から90近くの数値が読み上げられていく………
「ああ、ああ、これはすぐ治癒魔法を学ばせないと」 ラファエル
フィルミン(農業長) 「土の子もすごい。これならファーティライズを発語できるぞ」
水の4番目はベルナールだった。
「ベルナール、水、男、65点」
エメリック(総務長)は頭に血が上りそうになる。
(ベルナール!)
ぎりっ 歯ぎしりをした。
「クロード、土、男、136点!」
「ルーカス、風、男、140点!」
「クロエ、風、女、200点!」
「エリス、水、女、180点!」
「アンヌ、火、女、200点!」
「クララ、水、女、200点!」
「マリィ、風、女、170点!」
最後の七名だけ、別格の数字が並んだ。
ジュリエット(建設長)「あの子が土の剣を出した子ね。すごいわ」
市長 「200点が3名出ましたが、これはそれ以上かもしれないと言うことですか?」
パオロ 「はぁ。これ以上は測定方法が確立されていないのです」
各部の長は、それぞれどうやって一年生を自部門へ引き入れるか、胸中で算盤を弾き始めていた。
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次は属性魔法の発語試験(150点満点)だ。
パオロ
「前期試験で、基本発語の習得は充分達成されました。
そこで、今回は構築魔法3種類の発語で評価いたします」
「構築系魔法をゆっくり発語して、一分間に5発語できれば25点の基準点に達したと判断します。
つまり発語一回で5点です。
高度な構築系となるにつれ発語一回の得点を加算していきます」
発語試験が始まった。
まずは火魔法から。
それぞれ、ファイアー・ライン、ファイアー・エリア、ファイアー・キューブを構築していく。
火コースの生徒たちが、80点台、90点台を出していく中、高得点が出た!
「アルフォンス、ファイアー・ライン35点、ファイアー・エリア42点、ファイアー・キューブ35点、合計112点!」
「ルイ-ズ、ファイアー・ライン40点、ファイアー・エリア42点、ファイアー・キューブ42点、合計124点!」
みんながどよめく中、アンヌの番となった。
『火よ、………勇気ある火を現し給え、ファイアー・シリンダー』
「短縮詠唱だ!」
「いきなりシリンダーだぞ!」
アンヌは、ファイアー・シリンダーを皮切りに、ファイアー・トライアングラー、最後にはファイアー・ペンタゴナル・プリズム【PENTAGONAL PRISM】を発語した
みんな呆然としている。
パウロ
「い、今のは加算点3点、3点、4点の魔法です………
発語回数で乗すると………232点です………」
もちろん試験の配点は上限が150点である。
土コースの最高得点はクロードだ。
「クロード、ソイル・エリア48点、ソイル・キューブ49点、ソイル・ボール49点、合計146点!」
またもどよめきが起きる。
風コース
「クロエは属性魔法が発語できないため0点!」
「何だ?属性魔法が使えない生徒がなんでここにいる?」
「なんでも、聴講生らしい」
「粒ぞろいの一年生にも、劣等生は混じるものだな」
「ルーカス、ウィンド・エリア48点、ウィンド・キューブ56点、ウィンド・ボール56点、合計160点!」
「マリィ、ウィンド・エリア48点、ウィンド・キューブ56点、ウィンド・ボール56点、同じく合計160点!」
「満点以上が二人も出たぞ!」
会場は熱狂に包まれていく。
最後は水コースである。
ベルナールは青い顔で呆然としていたが、真っ先に呼ばれた。
ミレーヌ先生 「ベルナール君、ベルナール君、君の番ですよ!」
ベルナールは我に返ると、 「はい、ではまずウォーターからいきます」
「ベルナール君、ウォーターは基本魔法よ。構築魔法のウォーター・ラインから始めなさい」
!
青白かったベルナールの顔が今度は恥ずかしさで赤黒くなる。
「し、失礼しました!」
ぎりりっ エメリックの歯ぎしりも一層強くなった。
「ベルナール、ウォーター・ライン20点、ウォーター・エリア24点、ウォーター・キューブ21点、合計65点!」
次の水コース女子からは、最低でも100点近くの得点であったが………
「エリス、ウォーター・エリア48点、ウォーター・キューブ56点、ウォーター・ボール56点、合計160点」
「また、満点以上が出たぞ!」
そしてクララである。
『水よ、………ウォーター・シリンダー』
「詠唱破棄だ!!」
「なんということだ!!」
「天才だぞ!!」
「すごい!!」
クララは、周囲の雑音は全く意に介さない様子で淡々と発語し続ける。
………
………
「えー、今のクララの得点は………ウォーター・シリンダー96点、ウォーター・トライアングラー96点、ウォーター・ペンタゴナル・プリズム108点、合計300点です」
先生も生徒も大歓声である。
ミレーヌ
「クララは土コースにも在籍しています。シャンタル先生、続きをお願いします」
クララが土魔法の発語を行う。
シャンタル
「クララ………ソイル・シリンダー96点、ソイル・トライアングラー96点、ソイル・ペンタゴナル・プリズム108点、………」
ごくっ
「つ、土魔法も………合計………さっ、300点です!!」
「「「う」」」
「「「ぅっ、うわわーーーーーー」」」
歓声は、しばらく鳴り止まなかった。
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次は自由課題(50点満点)である。
パオロ
「後期では、カリキュラムの構築魔法以外にも、生徒が自主的に様々な魔法に取り組みました。
その様子を見て、今回は試験的に自由課題を試験に取り入れた次第です」
「なぜその課題に取り組んだかを生徒に説明してもらい、その自主性や着想力を10点として評価します。
また、実際に発語された魔法自体の効果を15点で評価します」
「四属性の担任がそれぞれ評価しますが、
その結果は3月14日の職員会議で決定することになっております。
今日は評価を気にせず、自由課題そのものを見学ください」
生徒の発表が始まった。
多くの生徒は構築魔法として、ライン、エリア、キューブを発表したため、続くボールとシリンダーに予習として挑戦したという発表だった。
そして、キューブと難易度が同程度のボールを成功させる生徒は多数いたが、シリンダーとなると構築が難しいようだった。
ジュリエット
「従来は、二年前期のカリキュラムがエリアだったはずです。
一年でこの時期にキューブやボールを発語できれば、すごいことですよ」
皆一様に頷く。
そうした中
クロード
『土よ、神シーシュポスにマナを捧げる、堅き石を現し給え、ストーン・ライン・モールド』
ジュリエット建設長 「これが!」
フィルミン農業長 「形質変化魔法で刃を成型したぞ!」
マリィとルーカス
『風よ、主神アルテミスに信仰を捧げる。万物をマナの命ずるまま風を現し・切り裂き給え、ウィンド・ライン・カッター』
ラファエル保健長 「なんということだ! なんということなんだ!!」
エリス
『水よ、神ボレアスにマナを捧げる、冷たき氷を現し給え、アイス・ライン・モールド』
「おお!」
ラファエル保健長は涙を流し始めた。
「………なんと美しい形質変化魔法なのだ………」
ここまでは、高度な魔法であるものの、大人たちにも、まだ理解の届く魔法であったのだが………
テオ
「呼吸素は通常見えないものですが、アイスの魔法を強力にかければ見えるようになるのではないかと思いました。
ところが呼吸素は液体にならず霧状になったのです。
僕は(ほんとはクロエは)この魔法を乾いた氷の霧という意味で、『ドライ・アイス・フォグ』と名付けました」
そして発語する。
『水よ、神ボレアスにマナを捧げる、冷たき氷の霧を現し給え、ドライ・アイス・フォグ【DRY ICE FOG】』
すると、冷たく、青白いスモークが、静かに足元から広がっていくのだった。
アンヌ
「火魔法は基本的に炎を構築する魔法ですが、炎の中には鍛冶や、雷のように火花が散ることがあります。その火花を再現できないかと(ほんとはクロエが)考えて工夫したものがこの魔法です」
そして発語
『火よ、主神アーレスにマナを捧げる、輝く火花を炎に加え給え、ファイアー・スパーク【FIRE SPARK】』
「見たことも聞いたこともないぞ!」
「信じられない!」
「真の天才だ!」
やがてクララの番となった。
「ご承知の通り、食品を保存するためには、ピュリファイをかけます。しかし、食肉を熟成するために低温で保存するためにはピュリファイでは不足です。かといってアイスをかけてしまえば、肉自体の保存はできても、変質しうまみがなくなってしまうでしょう。そのような考えからこのような魔法を(クロエちゃんと一緒に)考えました」
『水よ、神ボレアスにマナを捧げる、氷室を生み出し給え、リフリッジレイター・チルド』
氷の箱が突如現れた。
「これは氷室を魔法師のマナによって維持する魔法です。一度発語すれば、意図した時間追加の魔法をかけ続ける必要はありません。また、後半のチルドは、ロウ・ハイなどと同じく補助発語に当たりますが、チルドは食品が凍り始める直前の温度を維持する魔法となります。これによって食品は最適な温度管理で保存が可能となります」
ラファエル保健長 「なんて奥深く、かつ実用性を重んじた魔法なんだ………
これまでの派手な魔法もすごかったが、これは一線を画すぞ………」
最後にクロエの番となった。
「私は属性魔法が使えません。
でも、マナだけは豊富なので、マナを譲渡することで人のために役立ちたいと考えています。
そこで工夫した魔法がオリジナル・トランスファーです」
担任のバルに協力してもらった。
『マナを譲渡、トランスファー』
魔法院では、既に見慣れた魔法となっていた。
だが、それは初めて目にする大人たちの常識を覆すものだった。
「これは短縮詠唱か?」
「いやまて、属性宣言がなかったぞ?」
「属性宣言なし、信仰宣言なし、魔力宣言のみの発語………なのか?」
大人たちは何か得体の知れないものを見ているようだった。
――会場の熱気だけが、すっと冷えたのだ。
アンヌ 「氷室の魔法か~」
クララ 「ええ、クロエちゃんお肉の熟成にソフィさんと苦労してたじゃない?
それで、婚約披露式のあとにね、もう魔法を作ってしまおうということになったのよ」
アンヌ 「そうか~ これでクロエはもっと美味しい料理が作れるな!」
クララ 「ええ、クロエちゃんもとっても張り切ってたわよ?」
クロエに作って欲しい料理があれば感想に書いてください!
ちなみにアンヌのキスシーンはこちら!
https://youtu.be/V3SjtHurQoY




