061 波紋は続くよ
クロエです。
大人って大変なんですね。
パオロ副校長、ガンバです!
このところ、魔法院では、院における教育方針についての問い合わせが増えている。
こういったことに対応する役は副校長のパオロである。
例えば―――
ラファエル保健長
「パオロ殿、
ご存じでしょうが、前回の流行病から既に3年が経過しております。
今年は大きな流行はありませんでしたが、来年はまた大流行となってもおかしくありません。
流行病は、その名の通り数年おきに大流行がやってくるのは避けられないことなのです」
「はあ」
パオロは汗を拭く。
「ところが治癒院の現状は、治癒師があまりにも足りておりません。
今年の補充はわずか一人。しかも魔法の発語レベルは十分とは言えません。
来年は最低でも3人、いや5人はうちに来てもらわなければ大変なことになりますが」
「確かに、確かに。
しかし、その流行病で、今の三年はわずか20人の在校生なのです。
今の二年も25人です。各方面からの希望や本人の適性からすれば、来年も1名がやっとかと」
ラファエルは危機感を募らせる。
「いや、それではどれだけ死亡者が出るか分からないではないですか!」
「そうは言っても、いないものはいないとしか」
「では、一年生はいかがか?
先日市の幹部会で、多くの水魔法の生徒が顕著な成果を上げていると聞きましたよ?」
「いやしかし、一年はまだ基礎教育の段階でして。
治癒院で必要な魔法は三年で学ぶカリキュラムですから………」
「そこはカリキュラムを前倒しすればいいではないですか。聞くところでは既に複合魔法の使い手もいるとのこと。であれば、最低限必要な、ヒール、キュア、クリーンを前期で学ばせ、三年生の実地教育を二年後期に組み込んで治癒院に来てもらえばよろしい」
「いいですか、人が死んでからでは遅いのです」
パオロはカリキュラムの見直しを約束せざるを得なかった。
また別の日
今日はジュリエット建設長である。
「パオロ先生ご無沙汰しております」
「おお、ジュリエット、よくきたね。若くして重い役職に就いてしまったが、うまくやっているかね?」
「それが………人手不足で大変なんです」
その話題か!
パオロは冷や汗が流れるのを感じた。
「水路の補修や、城壁の補修なんかで、他部からもっと早く直せって言われてまして………
流行病で、今年は一人も生徒さんが来てくれなかったんですよ。農奴も病で減ってしまったので、魔法師の不足を人力で補うこともできないんです」
「いや、分かってはいるが、今年の三年は20人しかいなかったしなぁ~」
「先日無理言って、現地見学に建設課の煉瓦造りを見てもらったじゃないですか」
「確かに、確かに」
「今年の一年に、随分興味を持ってもらったと思うんです」
パオロ、まさか?
「いや、今年の一年が卒業するのはまだ先だよね?」
「先日、一年生の婚約のお披露目会があったそうで、ストーン・ライン・モールドという複合魔法を発語した生徒がいたと聞きました」
「そうなのかね?」パオロにその情報は伝わっていないのだ。
「そんなに勉強が進んでいるなら、三年生の実地教育を二年に前倒しをして建設課に来てもらうわけにはいかないでしょうか?」
「いや、そんな簡単にはできないよ。下手したら現一年生の教育が現二年生の教育を追い越してしまうかもしれないし、実習受入の現場も混乱するだろう?」
「雨季までに水路補修が終わらないと困ります」
最後はジュリエットの泣き落としになってしまい、パオロとしても、考えておくと言わざるを得なかった。
また別の日。
農業長のフィルミンがやってきた。
「農業生産力が落ちているのはご存じですかな?」
パオロ
「はあ、まあ」
「どの農家でも、土魔法師も足りぬし、農奴もたりんのです」
「はあ」
「魔法院の生徒が少ないのは知っておるが、農家に優先的に回してもらわんと、市民が食べていけなくなりますぞ!」
「そこまでですか………」
パオロの首からは、またもや冷や汗が流れ出す。
「ジュリエット殿がこちらを訪問したと聞きましたが、まさか、この緊急時に土魔法師の生徒を建設課に優先的に回すなどと言う暴挙を約束したりしておらんでしょうな?」
じろりと睨んできた。
「確かに、確かに………しかし絶対数が不足しておりますからな」
「春の小麦へのマナ供給、秋の豆へのマナ供給時には農家への派遣を考えてもらいたい。
………食えぬ市民は、いずれ暴れますぞ」
パオロは現地実習の見直しを約束することになった。
市庁舎でのこと。
パオロは市長に面会を求めた。
「ご承知の通り、魔法院は教会の教育機関です。
基本的には教皇庁教育局の指導方針に従い、マナ基礎値と属性魔法の底上げに努めておりますが、最近市各部の長官から強い要求を受けて困っているのです」
「なるほど」
市長のフェデリーコは同意した。
「しかし、各部の要請も市の抱える状況に鑑みれば無理からぬところ」
「いや、あまりに越権行為があればこちらも教皇庁へ報告せざるを得なくなりますよ」
フェデリーコは名前からもうかがえるとおり、王都出身である。
パオロも王都出身なので、市長には苦情を言いやすいのだ。
「ふむ、まずは、そうですな………
憶測で話しても仕方がないでしょう。生徒の実力を各部の長官が確認するところから始めますか」
フェデリーコは静かに笑った。
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休日のエメリック家。
エメリック
「ベルナール、魔法院ではそろそろ婚約の話が出ているのじゃないか?
おまえに決めた相手がいるのであれば家に連れてきなさい」
ベルナールは意外な問いかけにびっくっと反応する。
「婚約? ですか?」
母サロン
「その様子では、全然考えていなかったのね……
魔法院で他学年から婚約者を探すとなると、ちょっと難しいのよ。
他学年との交流ってほとんどないでしょう?」
「……はい」
「だから、来年にひとつ下の学年から婚約者を探すとなると親同士で連絡取ることになりがちなの。
あなたにだって希望の娘さんはいるでしょう?」
「…………」
「官吏系の娘さんは、先日エリスさんとマリィさんが婚約されたと聞いたわ。
残るはクララさんしかいないけれど、あなたはどう思うの?」
びくっ
あの化け物と、一生?
思わずかぶりを振る。
「あら? クララさんは好みではないの?」
「…………あれは、どちらかというとライバルというか…………」
「あとは商家だと、ノエミかジャンヌさんね」
ベルナールは、その土コースの女子達の顔も名前も分からなかった。
「…………よく知りません」
「農家だと都市で暮らせるか、農家を継がなければいけないか聞かないといけないわよ?」
ベルナールは何も答えられなくなった。
エメリック
「市の幹部会でな。
アルデリック出納長が、水コースの成績は、どの生徒も魔力基礎値、魔法習得度共に良いと言っていたのだ。
たしか、おまえの前期末試験も、例年の平均を15%だったか上回っていたな?」
「…………はい」
「後期の授業も成績を維持できているのか?」
「……もちろんです」
喉が渇いた。
ベルナールはそう答えざるを得なかった。
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「優雅な家」のオリヴィア(クロードの母)さん。
今日はヴァロンティンヌ服飾店にやってきた。
クロードとマリィ、マリィのおかあさんのシャーリーさん、それに私も一緒だ。
店長は自分の名前を店の名前にしている。ヴァロンティンヌさんだ。
オリヴィア
「婚約披露会は大成功でしたわ。
これも、ヴァロンティンヌさんのおかげですわ」
店長 「いえいえ、それも「優雅な家」から高級な布地をたくさん提供していただけたからです。
こちらこそ良い宣伝になりました。お礼申し上げます」
「そうですか。それなら良かったわ」
「クロエさん、またドレスのデザイン画や型紙を提供してもらえるかしら?
市のご婦人方からは、ご息女の婚約に、ぜひあつらえたいという引き合いがいっぱい来てるのよ」
私 「はい。よろこんで」
オリヴィアさん
「クロエちゃん、私たちのドレスデザインは、仕立て料との兼ね合いで無料で提供したけれど、今後はデザインの代金をもらわなければならないわ」
店長 「もちろん、契約させていただきますわ。とっても優雅で、美しく、斬新なドレスですもの」
私にはひとつ心配があった。
「契約には保護者が必要なんですよね。私の保護者は神殿となっていて、代理人が助祭の方なんですけれど…………」
店長 「あら、その方には頼みづらいのかしら」
「といいますか、いろいろと私のお世話をしていただいている、ソフィさんという方にできればお願いしたいと思ってまして」
店長 「うーん、ソフィさんに保護者代理人になってもらうよう、神殿から委任状が必要かしら?」
オリヴィアさん 「そうね。クロエちゃん、ソフィさんに相談してごらんなさい」
「はい」
オリヴィアさん
「ところで今日伺ったのは、ドレスのお礼もさることながら、クロエちゃんが発明した「お化粧」についての相談なのよ」
「お化粧ですか?」
店長さんは知らないようだ。
オリヴィアさん
「お顔を美しく整える技術なのよ。
このお化粧をしてドレスを着ると、ドレスがとっても美しく映えるのよ。このお化粧をこちらで商品化できないかの相談なの。
お時間取れるなら、ここで実演してみせるわ」
私はマリィを相手にお化粧をしてみる。
実は下地、ファンデーション、コンシーラーといった基礎部分は私のマナで代用している。
『マリィのお肌よ、美しくなれ、お化粧の下地を作れ、ファンデーション!』
「ほお!」
「なんかムラがなくなったかも!」
私 「お化粧をする前に、こうやってお肌を整えるんです」
ここからお化粧道具を使います。
例えば口紅ですと、植物オイル、ヒマシ油、小麦胚芽オイル、植物バター、色材、香料などを用意して作ります」
『マリィの唇に会う、ピンクの口紅になれ、メイク・リップ!』
そして、マリィの唇に丁寧に塗っていく。
「私たちくらいの年齢だと、あまり濃くお化粧してしまうと、かえっておかしくなってしまうので、ごく薄くお化粧していきます」
…………
…………
…………
お化粧が終わると、婚約披露式のドレスを着てもらう。
マリィは全身の姿見の前に立った。
しばらく誰も声を上げない。
クロード 「綺麗だ…………
言葉も出ないよ、マリィ…………」
マリィ ぽっ
この!この!妬けるね!
シャーリーさん 「我が娘ながらなんて美しいのかしら…………」
店長 「すばらしい!
素晴らしいですよ、クロエさん!
これは、服飾革命です!
いや――美の革命ですよ!
世のご婦人はこぞってドレスとお化粧道具を買うでしょう!」
オリヴィアさん
「ほんとにね。
ただね、店長さん、問題もあって、今見たとおり、これはクロエちゃんのオリジナル魔法あってのものなの」
「クロエちゃんなしでお化粧道具をそろえられるようになるか、「メイクアップ・アーティスト」として、この魔法を使える人を増やしていくか、共同研究しない?」
「メイクアップ・アーティストですか?」
「そう!女性を美しくお化粧やドレスアップする専門家ね!」
!!
「ぜひ!」
なんかファッションビジネスが始まってるんですけど!
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お昼のキラキラ会
「…………ということがあったのよ!」
マリィが力説する。
クロード 「マリィの美しさに声も出なかったよ」
マリィ 「あら?普段は美しくないのかしら?」
「もちろん、普段も綺麗だし、とっても可愛いよ」
「あら? んふふふ」
わかります。言って欲しかっただけなんだよね!
エリス 「むう、マリィだけずるい」
アンヌ 「あのドレスまた着たのかぁ~」
アンヌまで色気づいてるんじゃないの!
私 「ドレスが傷まないよう、クリーンとピュリファイ以外にも魔法かけたいんだけど」
マリィ 「どんな魔法?」
「んーとね。たぶんだけど、クリーンは汚れを取る魔法でしょ?ピュリファイは虫などを寄せ付けない魔法だと思うんだけど、ああいう服は光に当たることで黄ばんだりくすんだりすると思うんだよね。だからそういう光の中の悪い成分-紫外線ていうんだけど、それから服を守る魔法をね、まだ考え中なんだけど、「UVケア」とか「陽光避け」というような魔法をかけておきたいんだよね」
エリス 「これもまた新しいトレンドになる」
クララ 「クロエちゃん大丈夫?やり過ぎじゃない?」
私 「ありがとうクララ。
でも、友達の晴れ姿のためにはね!
ここは全力を尽くしたいの」
みんな私の頭を撫でてくれた………
むう、いつもの妹扱いだね!
まあいいよ。ここは踏ん張りどころだから。
エリス「あのドレスを婚約の時に一回着るだけというのは、あまりにも惜しい」
クロエ「だからUVケア魔法も興味あるの?」
「そう。今の輝きがそのまま保存されるのなら結婚式もやりたい」
「ウェストとかも維持できればね~
あ、痛い痛い脇腹つねらないでー!」
エリスのキスシーンも見たいという方は、リアクション(ブックマーク・評価)をお願いします(・_・)(._.)
ちなみにアンヌのキスシーンはこちら!
https://youtu.be/V3SjtHurQoY




