060 波紋
クロエです!
婚約披露式頑張りました!
やっぱりね~ ケーキカットとか、キャンドルサービスとか、絶対欲しいじゃないですか!
自分で魔法が使えなくても、アイディアだけはあるからね!
モデルテ市の行政は、総務部、出納部、保健部、農業部、商業部、建設部、衛士部からなる。
それぞれの部の長に加え、市長が行政の中心である。
市長および各部の長は月の1日と16日に幹部会を定例開催している。
2月16日の幹部会後の雑談では、華やかな婚約披露会の話で持ちきりとなった。
アルデリック出納長(エリスの父親)
「ヴィクトール殿、先日はおめでとうございました。
うちの娘も向こうの両親に気に入られたようで何よりです」
普段、厳格かつ口数少ないアルデリックにしては随分ご機嫌だ。
ヴィクトール
「ありがとう、アルデリック殿。
エリスは大変美しく、また立派だったぞ!
しかもあの氷魔法。
以前訓練所で見たときも驚きだったが、今回の複合魔法は衝撃と言って良いな」
ヴィクトールも浮き立ったような態度である。
「何を言います。アンヌさんの美しさこそ際立っておりました。
しかも、ファイアー・スパークなる耳慣れぬ魔法の発語。
こちらこそ驚きです」
ヴィクトールはアンヌを褒められてデレデレである。
アルデリックの隣にいた保健長のラファエル
「それほどの水魔法の使い手ならば、ぜひ卒業後は治癒院に欲しい人材です。
なにしろ、3年前の流行病以来、人手が足りなくて困っているのです」
深刻な様子。
アルデリック
「娘のお相手は「風のみち」商会のご子息です。
治癒院での研鑽は難しいかもしれません」
ラファエル「難しそうですか………」とため息をつく。
建設長ジュリエット
「土魔法の生徒はいなかったのでしょうか?」
アルデリック
「おりましたよ。クロードという若者が。
ストーン・ライン・モールドという魔法で生菓子を切るナイフを作って見せました」
「まあ!
それはすごいですね!」
何か考え込んでいる。
アルデリック
「どの子供も素晴らしい魔法を発語しておりましたよ」
市長フェデリーコも話に加わる。
「アルデリック殿もヴィクトール殿も娘さんの婚約おめでとうございます。
ヴィクトール殿、今伺ったところですと、一年生であるにもかかわらず、みなさん高度な複合魔法まで駆使されているそうですね?」
「ああ、以前、衛士隊の訓練所での結果を報告したが、あれからも皆練習に励んだようだ。
俺の知らない魔法もあったぞ」
市長 「……そうですか……」
話は魔法品評会のようになってきた。
「娘は、先ほどの魔法の通り、水コースに所属していますが、
娘の話では、どの生徒も魔力基礎値、魔法習得度共になかなかの成績のようです」
そこへ割り込んできたものがいる。
「そうでしょうな。
私の息子も水コースの一年に所属しておりますが、研鑽を積んでいますよ」
総務長のエメリックだ。
「息子からは、婚約披露式の話は聞いていませんでしたが」
疑問に思ったようだ。
アルデリック 「ああ、それは招待客はほぼ女子生徒だけだったからですよ。
男子生徒は新郎と親しいものを数名呼んだだけとか」
「なるほど」
エメリックは息子に事情を確認してみることにした。
エメリック家でのこと
魔法院の生徒は寮生活であるため、平日は家にいない。
そこで妻に尋ねることになった。
妻サロン 「私も噂は聞いているわ。
何でも3組の婚約披露式というものを「ラ・ターブル・ドール」を借り切って開いたそうよ」
エメリック 「婚約は婚約者とその親だけでやるもんじゃないのか?
随分派手だし、「ラ・ターブル・ドール」を貸し切るとなれば金がかかるだろう?」
サロン 「それがね、「優雅な家」と「風のみち」の息子の婚約だったんですって。
それで大がかりになったんじゃないかしら」
「なるほど。アルデリック殿とヴィクトール殿の娘が相手という訳か」
「アルデリックさんの娘さんはエリスさんね。そのお相手は「風のみち」の息子さんよ。
でも、「優雅な家」の息子さんのお相手は、商業部のフロランさんの娘さん、マリィさんと聞いたわ」
「ん?そうか。
三組と言っていたからな。
すると、ヴィクトール殿の娘は誰なんだ?」
「農家としか分からないわ」
そこから自分たちの息子に話題が移る。
「しかし、もう2月だろう?
同学年で相手を探すのならば、もうそろそろベルナールも相手を決めなければならないぞ」
「そうね。
ベルナールの代は男女38人しかいないから、急いだ方がいいわね」
「ベルナールは昔からマナが大きかったし、うちの一人息子だ。
相手に事欠かないんじゃないのか」
「のんびりしてたらダメよ。官吏系の娘は、あと孤児のクララさんしかいないわ。
他には商家の娘が二人でしょ。
あとは衛士家ではアンヌさんが売れてしまったからもういない…………
……残りは、農家だけのはずよ」
「そうか。流行病のせいで選択肢があまりないのだな。
……良い相手がいなければ、来年の娘から探すべきか」
「来年も再来年も子供が少ないでしょ?
他学年だと親同士で連絡を取らないと、婚約するのは難しいわよ?」
二人は次の休日にベルナールと話をすることに決めるのだった。
________________________________________
婚約披露式翌週の魔法院では、披露式の件で話題が持ちきりとなっていた。
特に式にあてられた女子達の動きが活発になったのだ。
まず、商家のノエミとジャンヌが、同じ土コースのエミールにアタックし始めたという。
エミールは人となりも良いし、なにより衛士家なので結婚後も都市生活が続けられる点がメリットだそうだ。
また、火コースのルイーズとアーサーも良い感じらしい。
アーサーは以前から実家の手伝いにされてしまう将来を避けたいと思っていたけれど、私が衛士隊で風魔法師が不足していることを話したので、そこからルイーズと距離を縮めることになった。
ルイーズもアーサーも農家出身だけれど、火魔法風魔法では農家で肩身が狭い。その点二人で衛士隊をめざせばどうかということらしい。
水魔法の女子達は、魔法の特性から都市での職業が希望だ。そうすると、火コースの男子が視野に入ってくる。
一方土魔法の女子達も、農家を継がない子は、建設課が大きな志望先となった。
そこら辺で動きがあるらしい。
農家を継ぐ必要がある子は、その辺不利となっている。
「ということなのよ!」
はい。
マリィさんによるお昼休みのレポートでした………
お昼休みはもともとの女子5人に婚約者3人を加えて、8人で集まっている。
いわゆる「キラキラ会」だ。
クロード 「さすがマリィだね。すごい情報収集能力だよ」
マリィ 「うふふ。ありがとう、クロード♡」
アンヌ 「ルイーズはアーサーか~」
ルーカス 「アーサーは性格は明るいし、風コースとお茶会でクロエさんの恩恵も得ている。良い選択肢だと思うよ」
私 「ちょっと、おっちょこちょいだけどね!」
エリス 「先日のジュリエットさんのインパクトが大きかった。
あれで土コースの子の就職希望が都市に向いた」
マリィ 「水コースは火と土の男子の品定めが活発よ~」
男子――ちょっと積極性足りないんじゃないの!
________________________________________
水コース一年生には、ベルナールという若者がいる。
彼は、市の要職である総務長エメリックの一人息子である。
彼には2歳年上の兄がいたのだが、不幸にも流行病で亡くなってしまった。
子供は、基本毎日瞑想や祈祷を行う必要がある。
魔法選別の儀での属性発現のためだ。
子供は、神殿に行き、朝の祈祷に参加することが基本だ。そこで瞑想を行うのだ。
読み書き計算のような勉強は、魔法院入学までは自宅学習となるので、家計に余裕があれば家庭教師を雇い、瞑想も自宅で行うことも可能である。
ベルナールは、自宅学習・自宅瞑想が主体だった。
そこでのマナ発現状況は、同世代と比べて十分な大きさだった。
家庭教師も、魔法院で優秀な成績を得るだろう……そう太鼓判を押していた。
魔法選別の儀。
孤児院の3人はクロエの事情により延期となったが、市の他の子供達は1月初頭に受けることになった。
数十人の子供が一人一人属性を発現していく。
指先に小さな炎、水滴、砂粒、そよ風が発現される。
マナ不足や発現が怪しい子供も何らかの属性魔法発現として認定されていく。
そもそも、魔法発現が危ぶまれる子供は、親が農奴と認定されることを恐れ、連れてこないこともある。
魔法師が不足しているのだ。
少しでも多くの子供を魔法師に育てたい。
様々な大人の思惑が交錯する中、
「おお!
水流が流れ出たぞ!」
「なんて――力強い発現なんだ!」
神殿騎士の言葉が響く。
そう、ベルナールのマナは飛び抜けたものだったはずなのだ。
……それが、いつ頃からか変わってしまった。
授業開始の4月頃は確かに他の生徒よりも発語のレベルは高かったはずだ。
もっとも、クララという化け物はいたが、その次が自分だったと思う。
クララのことを思うと震えが走る。
あの魔法発現の規模、構築のスピード。
しかもいくら発語しても息切れひとつしないし、表情ひとつ変わらない。
それにあの見透かすような目。
化け物め!
ところが、じきにエリスの実力が大幅にベルナールを上回っていく。
やがてクラスの女子の実力は自分と同じくらいになってしまった。
その結果が期末試験だ。
ベルナールの成績は64点。
過去平均得点を14点も上回っている。
悪くない。
……悪くないはずなのに、順位は20位。
ごく平凡な順位だ。
ぎりっ
歯を食いしばる。
やはり、あのクロエという聴講生が原因としか思えない。
聴講生などという制度は聞いたこともない。
それに……あいつは、選んでいる。
自分の成績が伸びないのもあいつが差別をしているからだ。
彼は、婚約披露宴の話題にクラスが沸き立つ中………
――一人、これまでのことを思い返していた……
マリィ「お化粧は………とっても良いものよ!」
エリス「でも、あれはクロエのマナ付与が前提。誰でもできるわけじゃない」
クロエ「あれはね~ 人にじゃなくて物にマナを付与したらいいんじゃないかって発想なの」
「だから汎用性がないのよ」
エリス「クロエ、諦めたらそこで終わり」
マリィ「そうよ!アンヌのキスシーンがまた見たくないの?」
アンヌ「わーーー! やめろーーーー!」
アンヌのむふふはこちら!
https://youtu.be/V3SjtHurQoY




