新しい年に・・。Ⅱ
悪い事でも間違った事でも無い。
「あたしお兄ちゃんと血が繋がってるのかな?、血さえ繋がって無ければ、彼女にだってお嫁さんにだって為って上げられるのに・・・、何でもして上げられるのに・・・。」
<こんな事言うって事は知ってるのか?、あの事を・・・>
「お前知ってるのか?、親父たちの事、何時解ったんだ?」
「学校の手続きするのに戸籍見た時だよ、お母さんに教えて貰ったの、びっくりしたけど・・」
別に悪い事でも間違った事でも無い。
戸籍上は兄妹でも結婚した実例が在る。
家柄が如何のとお袋との結婚に反対され勘当、新たな地での生活で就職には保証人が必要、親父はお袋方の祖父母に養子縁組し戸籍上は一旦兄妹になる。
その後手続きを踏んだ上で結婚、
手続き上も法規的も何も問題無い、
其れで有れば兄妹でも婚姻は可能だ…。
義理の兄妹ならば…。
「おかしいよね?、血が繋がってさえなければ、兄妹で結婚出来るって・・。」
<嫌、血が繋がって居るから駄目なんじゃないかそれは・・・。>
「聴いてお兄ちゃん、正直に言うと会う迄はあたしただの妹だったんだよ、彼女が居たらからかってやろうって、居なけりゃ情けないお兄ちゃんだ!ってからかってやろうと思って来たの。」
「普通妹ってそんな物だ、寧それでも仲が良い方じゃ無いのか?、よく聞くのは兄を兄とも思わないって聞いてるぞ?」
「でもお母さんに言われた事も忘れて無かった、空港で会った時に其れが一番最初に出て来た、背中にしがみ付いた時も消えなかった・・・、何故なんだろうって・・・。」
「お家に行ってお兄ちゃん良い意味で変わって無かった、バカな位お人好しのまま、其れでどんなに自分が辛い目に逢っても手を差し出さずに居られない、だから見てられなかった、我慢してた物が全部出て来たの、良い妹で居れば其れで良かったのに・・。」
<何で其処迄思い詰める?そんなに思うほどの事は無かっただろうに?>
「だからと言って其の感情を俺に向ける理由が分らないぞ?、前に言ったが兄妹の儘で問題無いだろう、其れが俺には理解が出来ない!」
「そうだよ!お兄ちゃんが早く安心して幸せに成れると思える人を見せてよ!、そうすればあたしは帰れるし、そして仲の良い兄妹に戻れる。不安が多すぎてとてもじゃ無いけど帰れない!」
「どうして其処まで思い詰めるんだ御前?」
「ヤダよ!毎日、毎日、魘されているのを放って置けって言うの?寝言で辛い事言うのはまだ解る!でも時々あの海の所を走って居る事を言ってるの!帰りたいんでしょうホントは?」
<あいつ等の事だけじゃ無いんだ、奥底に仕舞って居ても今も俺は海岸線を走って居るんだ。>
「愛してると迄は言えないけど、大好きだった人が違う人に為っちゃうのが耐えられないの、我が儘言っても、優しく笑って呉れるお兄ちゃんのままで居てよ、ヤダよ此のままじゃあたしの知らない人に為ってしまう、だからあたしをお家に送り届けてよ!」
かえすがえす掛けて上げる言葉が見つからない。
「今すぐと言うのは難しいが、考えた事が有ったよ、これに載ってあの海沿いとあの峠を走ったら全部無かった事に為るんじゃないかって、またあの頃に戻れるかも知れないと・・・。」
「だったら家に帰ろうよ!」
「でも考えると決まってあの光景が浮かぶんだ、お前が殺したんだぞって言われてる見たいに…」
「分かった、それならお兄ちゃんあたしとしてよ、産んで上げるよお兄ちゃんの赤ちゃん。きっと可愛いよ!、だってあの時俺の子なんだって、嬉しそうに言ったんだもん。」
一般的な家族の方々から見ると異様に感じて仕舞う筈。血縁を辿れるのは勘当された父方だけ、既に縁は切れて仕舞っているようなもの・・。
お袋は養女で血縁が不明、終戦直後に長崎から赤子で迎えられたとしか判らない。
子供の居ない祖父母に育てて貰い、肉親の様に祖父母を親として接してる。
家族の血縁者は両親と俺を含めた弟妹のみしか存在しない、其れを此の娘も知っている。
だからかも知れません妹が此処まで懐いて居るのは…。
「その気持ちだけ貰って置くよ、だからもう二度と其れは言わないで呉れ、お前は大事な妹なんだから…、結婚する相手が決まる迄綺麗なままで居てくれ。」
「やだ!、やだよ!、お兄ちゃん絶対帰って来ない!」
「約束するよ、直ぐには無理だが克服して来年はこれに載って帰る、そして島を二人で一周しよう。其れ迄俺が帰るのを待ってて呉れないか?」
「やだ、じゃあ初めてだけでも貰って呉れない?、その思い出を持って待ってるから・・。」
「駄目だね、俺は其れで悔しい思いをしたからな、哀しい思い出じゃ無かったら、もし最初から付き合って居られれば、何方も悲しい思いをせずに済んだと思う。お前を大事にして呉れる奴にその思いをさせたくない。」
返事は待ったが帰って来なかった・・。
キックしエンジンを掛けた、水温計は全く動かない、意外に時間が経って居た。
「エンジン暖めるから、少し待ってくれよ。」
程無くして針が振れ始めた。
「さあ暗く為る前に帰ろう、遅く為ると寒くなって来るからな。」
答えず、小さく頷いて居た。
「帰りに飯食って帰ろう、楽しみにしてただろう?」
「このままお家に帰って・・。」
此の言葉は何方の意味を持って居るのだろう?。
「俺の家だぞ?」
答えないし、
頷かない・・。
「まさか実家って言わないよな?」
此方にも答えないし、
頷かなかった。
日は落ちていて、残光で未だ空は光が有った・・・。
何時も以上にしっかりとしがみ付いて居た。
出来るだけゆっくりと走って居た、大通りを抜け登りに掛かって居た・・。
此方の排気音に交じり微かに違う音が混じり始めて居た!。
「こんな時に如何して来やがるんだ、蛆虫どもめ!」
未だ風雅も、近付いて来る連中も此方に気付いてない・・。
「普通に走って、やり過ごすか?」
此の先暫くは脇道も無い・・、正対するか?。
正月気分の抜けない奴らが見逃して呉れるかは疑問だが?。
音も大きく為ってきた、この感じでは三つ先のコーナーを抜けた辺りでかち合うな?。
「この音なんの音なの?お兄ちゃん怖いよ!」
<俺の妹を怖がらせたな、追って来たらタダで済むと思うなよ・・。>
もう既にスイッチは入って居る、唯、出来れば妹に怖い思いはさせたく無いが・・。
さあ三つ目を抜けた、居やがった二十台近くは居るだろう・・。
「怖かったら目を瞑って居ろ!」
そう大声で伝えていた。
目を瞑って居ろ!




