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カッペが遂に大都市東京を走る?  作者: カビゴンと一緒


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年の瀬に在った事。

何なんだ?

「朝だよ、起きて、遅れるよ?」

 起こして呉れている様だな。

「起きないと悪戯するよ!」と何か嬉しそうだ。

 <何をする心算だ、先日の事が頭を過ったが>



「そうれ!」と言って冷水で濡れたタオルを顔に乗せられた。

 勿論一発で目が覚める、何て事して呉れやがる、しかも腹を抱えて笑ってやがる。

 怒って起き上がろうとしたのだが、その顔を見て一気にその気も失せた。

 昔見た幼い頃の笑顔其の物、もう心配要らない、そう確信出来た・・。



「判った、バッチリ目が覚めたから!」

 そう言い起き上がり、着替を済ませた。



「いってらっしゃ~い!」

 何時も通り見送って貰い自宅を出る、残念ながらこの風景も後二回で終わってしまう。

 明日と1月3日の二回、そう思うと淋しく感じてしまう。

 身内と会えたから?、だから余計にそう思うのだろうか?。


 本社へ着いたのだが、定時乗務以外無くてほぼ全員が詰所に居る。

 まあ平和な日と言うことで善いことだ。

 この機会に見送っていたハンドルカバーの作成をしてしまおう。


 材料は新聞の梱包用の極厚ビニールと好みの色の布地の梱包テープ以上。

 勿論市販のハンドルカバーは有りますが、利用しない理由は…。


「カッコ悪い!」

「大きすぎる!」

 等だが最大の理由は、

「万一の最に手が抜けない!」

 実際に転倒時に手が抜けず骨折した先輩が居たらしく、この自作の物は万一の時は引きちぎる事が出来るので作ったと言うことだ。


 構造は至ってシンプル、二つ折りしたビニールで挟むだけ、其れだけだと風でバタつく為補強を兼ねて、梱包テープを折り目から端迄上張して、裾迄二重張りし風によるバタつき対策す。


 グリップエンドプラス2㎝位でカット、私は先端からグリップエンド位までの合わせ目迄をテープ止めし、後は解放にしておりました、万一の際は横方向に手が抜ける様に加工。


 現在ではデザインに優れてどの車両にも合う物や、グリップヒータなど在るが当時は勿論そんな物が無いのと、先述の万一の際の安全確保が最優先、断熱性には劣るがほぼグリップエンドに合わせてカット出来る事が擦り抜けする上で良い点。


 只支える物が無いので高速時にはレバーを押して来るので、薬指と小指でレバーを内側から反対に押す様に為ってましたが・・、実用には十分でした。


 同じ様にオーバーパンツと雨合羽の裾もバタつき抑えるのに梱包テープで補強し、合羽の股の合わせ目は当時どんなに良い物買っても、染みて来るので内側から補強入れてました。


 その昔の先輩方の時代は風防付けてましたので、此の当時よりは良かったのでしょう。


 フェアリング付きの車両が全盛の頃なので風防の装着は皆無に近く、うちの先生以外は風防付けてませんでしたし、他社にも見かける事は無かったと思います。


 当事は冬の雨対策に一番気を使ってました。


 お呼びがかかりデスクの元に行く。

 指示は江東、江戸川、葛飾、足立各区役所廻り広報記事回収。


 元旦の新聞に載る物で上に上がる必要も無いルートなので<RZ>で間に合うのだが・・。

 此処の所出番が無いので<Γ>で出る事にした、これ以上ほっとくと後で駄々を捏ねられるし。



 スタートしたのは良いのだが、休みに入って暇な学生が多いのか?<PRESS>と判って居るのか?、ピッタリ付いて来る<SRX250F>が居る、イタリアンカラー、YSP仕様だな?。


 乗ってる子も随分小柄だし、PRESSの知り合いにフェアリング無しのレッドモデルは居るが、彼の身長は俺と同じ位で細身、面を見たいがフルスモークのジェットヘルで拝めない。


 時間も余る程有るし係わると面倒なので先に行けと合図するのだが、ケツに付いて離れない。


「参ったな?どうすれば諦めて呉れる?」

 急ぐどころか時間が余ってるんだよな、諦めて呉れないかと車の流れに合わせて走るのだが、同じペースで付いて来る何が目的だ?、煽って来る訳でも無いし…。


 面倒なので用も無いがコンビニの駐車場へ入ったが、続いて入って来る・・・?。

 <何の心算だ?パッシングもホーンも鳴らさない、煽りもしない、然もコンビニに入って来たし?>


 駐車スペースに停めたら、一区画内の中に並べて停めて来た、まるで一緒にツーリングでもしてるかの見たいに…。


 相手の出方見るしかないか、後ろに付かれて居たので確認出来なかったが躰と足のラインから如何も女性の様だ、メットは同じ<TJ2〇1V>で同じくフルスモーク、ご丁寧にバンダナまでして居る、何も言わずに跨った儘こっちを見ている。


 其の内に体が小刻みに震えだした、如何も笑いを堪えて居る様だ。

 暫くすると震えは止まったが、俯いたままでシールドが曇り始めていた・・。


 ウエストポーチから、ブルーの虎縞バンダナを取り出しシールドの中に差し入れた・・。

 そのバンダナは俺が今顔を覆ってる物と同じ柄・・、


 そしてシールドが上がった・・。



「お久し振り、お兄ちゃん・・・、また会えたね、あたし嬉しいよ・・。」

 まさか、こんな所で会うとは思いもしなかったし、バイクに乗って居るとさえ思わなかった。


「一人で生活出来て、胸を張って会える迄、会うのを我慢しようと思って居たの・・。」

 何度も、バンダナは左右の眼まなこの上を繰り返し移動し続けていた・・。


「今までどう過ごして居たんだ、昔の様に戻ってしまって居るんじゃ無いのか?」

「お兄ちゃんとの約束は、ちゃんと守ってる!」

 真っ直ぐに俺の眼を見て言った。


「お兄ちゃん以外には誰にも抱かれて無いよ、お陰で欲求不満なんだけどね!」

 漸く心に引っ掛かって居た物が消えた、良かった又元に戻って仕舞ったのでは無いのかと…。

 俺の行った事が無駄では無かった事が判っただけでも・・。


「未だお仕事の途中だよね?、じゃあ何処かで休んで行くって訳には行かないか・・。」

「何を言ってるんだお前は、其れじゃ昔と変わらないだろうが?」

「ううん違うよ、今もあたしはお兄ちゃんの彼女のままだよ、だからどうしても我慢出来なくなって抱いて欲しく為ったら、誰かじゃ無くてお兄ちゃんに抱いてもらいに行くから・・。」


 俺の眼を見て、その眼を逸らす事は無かった・・。


「でも良かった、本気で走られたら付いて行けないもん!お兄ちゃんが載った<Γ>には誰だって追い付く事は出来ないよ、自分で走れる様に為ってほんとに分った、伝説は本当だったよ!」

「残念だが、俺も未だ追い付けない人達が居るんだ、まだまだ追い付くのはずっと先だよ…。」

 そう言ったんだが首を振ってそしてこう付け加えて来た。


「あたし今もあのアパートに住んでるから何時でも来て良いよ♥、他の人は誰も入れないから、お兄ちゃんが誰かと結婚するまであたしはお兄ちゃんの彼女のままだから・・。寂しくて本当に我慢できなくなったらあたしが行くから、此の子に乗って・・。」

 俺がして居た様に<SRX>のタンクを撫でながら語って居た。



「必ず来て、あたしずっと待ってるから!」

 そう言って手を振り元来た道へ走り去っていった。

 <漸く、変わる事が出来たんだな良かった、其の侭で居続けるんだぞ頑張れよ柊・・。>


年末の在る一日の良い出来事だった・・。

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