三年待ってた
あたしの制服姿見て欲しいな・・・
家を出るまでの残り時間は一時間と少し、
流石に起きて準備始めないといけな時間。
でも気にした侭で走りたくは無かった。
「そろそろ準備しないと遅れちゃうよね?」
「そうだな其の前に話が有る、此処に座れ!」
「あたし忙しいの、直ぐにご飯持って来るから待ってて」
「何でこんな事をしたんだ、兄妹なんだぞ俺達」
聞かずに居られなかった。
「だって…、ならお兄ちゃん聴いてくれる…」
「判った」
「これがあたしの気持ちなの…」
「卒業式には帰って来るのかな?、
あたしの制服姿見て欲しいな!、
お祭りと花火一緒に行きたい!、
クリスマスは無理なの?、
初詣は何処の神社へ行こう!、
あそこの桜見に行きたいな!」
呟く様に独り言が零れ始める。
「海に遊びに連れてってくれるかな?、
神社の銀杏綺麗だって聞いたよ?、
クリスマスはまた無理なの?、
今年は初詣行きたいな?、
今年はお花見行けるかな?」
呟きは止まらず続いてる。
「また海にも行けないの?、
また花火に行けないの?、
またお祭りいけないの?、
またクリスマス来たよ?、
またお正月も会えないの?、
また桜が咲くのに帰って来ないの?」
紡ぐ言葉に胸が締め付けられる…。
「お兄ちゃん、あたし良い子で三年待ってたんだよ、褒めて貰える様に家のお手伝いして、褒めて貰える様にお勉強頑張って、お母さんにいっぱいお料理教えて貰って、ずっと、ずっと帰ってくれるの待ってたんだよ、ずっと会いたかったのに…」
大粒の落ちて来る別の物で濡れ始めて居た。
「だから四年目の今年はあたしが行く事に決めたの、そしてようやく会えたはずなのに、会えたのに…」
「まだ言いたい事が有るんだな?、沢山有るのか?」
頷いた。
「分った、帰って来てからゆっくり聞くから、美味い物作って待ってられるか?」
「うん!頑張っておいしい物作って置くから、早く帰って来てね!」
漸く笑って呉れた。
「いってらっしゃーい♥」
此のツンデレな娘に負けず、大きい声で送り出される。
<今日はもう一人の相棒と帰ってこようかな>と考えながら本社へ向かって居た。
帰って話を聞けば全てが判るんだ。気にしなくて良い仕事に集中して、無事故で帰り着く。
そう思いスロットルを開けていた、ただ本社に付いたら別の意味で大変な事に為ったのだが…。
「来た来た、森田嘘付いたんじゃねーよな?」
到着後の開口一発目で櫻庭先輩に絡まれた。
「何の事ですか?、何か俺言いましたか?」
全く身に覚えが無い、みんなもこっち見てるし。
「本当に妹なんだよな?嘘こいて彼女乗せてたんじゃねーよな?」
そう言う事か了解した。
「はい、間違い無いですよ!正真正銘の妹です!」
「そうか、あまりに似てなくて、彼女かな?と思ったぞ?」
どんな子だと騒ぎに成った。
「仕事終わったら寄り道するなよ!」
と皆に釘を刺されたが…。
「森田君上がって。」
要請が掛かり、概略を聴きその地へ向かう。
内容は…
「バイク単独事故負傷者二名、男性二十代重症、同乗者女性意識不明重体十代と見られる、運転者の証言より、同乗者とはお互いに面識無し、場所は14号稲毛駅より五百メートル付近交差点。」
と告げられる。
凄く嫌な気分に成った、お互いに面識無しなのか・・。
「さあ出るか、行って見なければ判らんか?」
京葉を走り14号へ降り、そのまま稲毛迄。
「何度走ったかな?、このルート。」
何時も後ろに誰かを乗せていた、
何時も訳ありの娘達だったよな。
何時に為ったら俺は此処を気持ち良く走れるんだろうか?…。
ピックアップポイントは直ぐ先、ひとつ安心な事はコイツが駄々を捏ね無いことか…。
<安心?、何故今更そう思うもう赤の他人の筈だろうに…。>
凄惨な現場、アスファルトは一面黒く変色している、信号の支柱に衝突か・・・。
フロントを大破し車両は原型を留めて居らず、色からメーカーが予測出来る位か?
漏れたクーラント、
エンジンオイル、
燃料のガソリン…。
そして其れらと混じり合う機械的な物と違う異質な物…。
普通なら絶対に混じり合う事が無い物のが混じり、黒い染みと為って居る。
吸着剤が巻かれてはいるが、漏れ出たガスの匂いが立ち込める。
80メートル程だろうか、点々と黒い染みが続いて居た。
多分後部座席から投げ出され、叩き付けられ乍ながら其処迄行って仕舞ったのか…。
怖かっただろうに、
多分150は出て居たのだろう、
その速度で眼前に迫るアスファルト…。
其の娘はどんな気持ちで見ていたのだろうか…。
追加情報アリ、同乗者搬送先病院ニテ死亡カクニン、以上。
其処迄の纏められた、記事とパトローネを受け取った、後は本社を目指すのみ。
「二輪の無謀暴走事故、同乗未成年女性死亡!」
明日の朝刊の見出しはこう書かれる事だろう。
記事の書き出しは、
<無謀暴走による単独事故、同乗者の未成年女性と運転手は面識が無く、どう言った経緯で同乗したのかは不明、現在当該警察署にて身元含めて詳細調査中・・・>
もう赤の他人に為って仕舞ってはいるが、
二度と馬鹿な事はするんじゃないぞ。
これ以上自身を傷付けても、
何も生まないし、
何も生れても来ないのだから・・・。
そう思いつつ、首都高渋滞最後尾から何時もの様にハイビームにし、スロットルを戻さずに渋滞する車の列に飛び込んで行く…。
柊もう馬鹿な事は二度と繰り返すなよ、
未だやり直す時間は充分有るんだから…。
二度と繰り返すなよ




